57 / 92
結界は割れるもの ~ウラエヌス目線~
しおりを挟む
ディオに幻覚魔術をかけて操ったのは恐らくレイツォ。
ワシは驚愕したが、ディオはそれとは比較にならないほどショックを受けているようだった。当然だ。死んだと思った親友の手によって自分が冤罪をかけられたのだから。そしてそれによって処刑されようとしているのだから。
「一体どうしてレイツォがそんなことをしたのか・・・確かめようにもこの状況では・・・」
呆然としていると、ドカドカと複数の足音が慌ただしくワシらのいる牢獄へ近づいてきた。
見るとルーチェ国騎士団の魔術師団の者達であった。
「ウラエヌス!邪魔だから貴様は隣の牢へ移れ!」
「は?(憤怒)」
突然やってきて邪魔者扱いされ、ワシは半ギレのパフォーマンスを見せたが、無理矢理隣の牢へ移されてディオと離れ離れにされてしまった。一体何をするつもりなんじゃ。
「「「・・・・・ぶつぶつぶつ」」」
魔術師達は延々と詠唱を続けている。数時間ぶっ通しでやり続けている。
ははぁ、何やら大規模な魔術を発動しようとしとるな?ワシの専門外の魔術であるようだが、それでもワシにも分かるくらいあまりにもアラの多い術式に、思わず苦笑いしてしまう。
ルーチェの魔術師団のレベルは本当に知れているなとワシは思った。リーン国の一介の冒険者でももう少し効率的な術式を組むことができるだろう。
この国は医学薬学どころか魔術のレベルも底辺だと聞いたことがあるが、どうやらそれは事実だったようだ。
何も優れているところがないこのルーチェ国・・・魔王どころかそのうち他国にもあっさり滅ぼされてしまいそうだ。
「「「ぶつぶつぶつ・・・」」」
それでも数人が長時間かけて練り上げる術式はアラが多くお粗末ながらも強力であることだけはわかった。魔術が完成したときにはどれだけの力を持つ術式が出来ているのか知らないが、恐らくワシ一人では解除できないほどの強い何かが出来上がっているだろう。
どうせワシもディオもただ処刑を待つ身である。のんびりとワシは隣の牢から見物することにした。
「・・・なっ・・・」
翌日、長い長い時間をかけてようやく出来たであろう魔術を見てワシは驚きの声を上げた。
ディオの牢が結界魔術によって封印されていたのだ。これでディオは何があっても向こうから出ることは出来ない。だが、ワシが驚いたのはそこではなかった。
「ふふ、封印魔術に詳しくない貴方でもわかるでしょう?この結界のすさまじさは」
徹夜明けでテンションがハイになっているであろう魔術師のリーダー格の男が、ワシに成果物の自慢をしたいのか話しかけてきた。なるほど、魔術師団が組織ぐるみで開発した新型の結界だというわけか。何故かは知らんがディオをワシ以上に厳重に閉じ込めておきたいらしい。
「・・・はぁ」
思わずため息をつくワシに、魔術師は得意げに笑みを浮かべた。
「どうしました?あまりの出来に声も出ませんか?」
ドヤ顔をして言ってのける魔術師に対し、ワシはつい思っていることを述べてしまった。
「図体がでかいだけでなんて無駄が多くて精度が荒い結界じゃ。ポイントを絞って丁寧に術式を組まないから、ガタイがいいだけで張りぼてみたいなものじゃぞ?これから複雑な術式で中和しなくとも、力任せの魔力をそのままぶつけるだけでパリーンと砕け散る。お前あれか?結界の類はダメージを受けて限界を迎えると割れるというイメージを抱いている世代か?」
魔術師はワシの言葉を聞いて最初は「ポカーン」としていたが、やがて顔を真っ赤に染めると烈火の如く怒りだした。
「貴様!老いぼれの分際で私達の傑作を貶すか!!痛めつけてやる!!」
「いやだって時間かけてこの有様じゃろ?ギャグとしか・・・」
「うるせぇ!」
魔術師達は愚かにも討論でワシをねじ伏せることはなく、力による制圧という選択をした。こいつら本当に国が抱える魔術師なんか・・・本当にこの国の未来は暗い。魔王を倒すどころか満足に魔族の討伐も進まなかった理由がわかるわい。
「お前が!泣くまで!殴るのを!やめない!」
ドコッ バキッ
「や、やめてくれ~ そ、そこだけは・・・アッーー!」
ワシは魔術師達にボコボコにされた。
そして結界の中にいるディオと隣り合わせのまま、ワシは処刑の日を迎えることになった。
ワシは驚愕したが、ディオはそれとは比較にならないほどショックを受けているようだった。当然だ。死んだと思った親友の手によって自分が冤罪をかけられたのだから。そしてそれによって処刑されようとしているのだから。
「一体どうしてレイツォがそんなことをしたのか・・・確かめようにもこの状況では・・・」
呆然としていると、ドカドカと複数の足音が慌ただしくワシらのいる牢獄へ近づいてきた。
見るとルーチェ国騎士団の魔術師団の者達であった。
「ウラエヌス!邪魔だから貴様は隣の牢へ移れ!」
「は?(憤怒)」
突然やってきて邪魔者扱いされ、ワシは半ギレのパフォーマンスを見せたが、無理矢理隣の牢へ移されてディオと離れ離れにされてしまった。一体何をするつもりなんじゃ。
「「「・・・・・ぶつぶつぶつ」」」
魔術師達は延々と詠唱を続けている。数時間ぶっ通しでやり続けている。
ははぁ、何やら大規模な魔術を発動しようとしとるな?ワシの専門外の魔術であるようだが、それでもワシにも分かるくらいあまりにもアラの多い術式に、思わず苦笑いしてしまう。
ルーチェの魔術師団のレベルは本当に知れているなとワシは思った。リーン国の一介の冒険者でももう少し効率的な術式を組むことができるだろう。
この国は医学薬学どころか魔術のレベルも底辺だと聞いたことがあるが、どうやらそれは事実だったようだ。
何も優れているところがないこのルーチェ国・・・魔王どころかそのうち他国にもあっさり滅ぼされてしまいそうだ。
「「「ぶつぶつぶつ・・・」」」
それでも数人が長時間かけて練り上げる術式はアラが多くお粗末ながらも強力であることだけはわかった。魔術が完成したときにはどれだけの力を持つ術式が出来ているのか知らないが、恐らくワシ一人では解除できないほどの強い何かが出来上がっているだろう。
どうせワシもディオもただ処刑を待つ身である。のんびりとワシは隣の牢から見物することにした。
「・・・なっ・・・」
翌日、長い長い時間をかけてようやく出来たであろう魔術を見てワシは驚きの声を上げた。
ディオの牢が結界魔術によって封印されていたのだ。これでディオは何があっても向こうから出ることは出来ない。だが、ワシが驚いたのはそこではなかった。
「ふふ、封印魔術に詳しくない貴方でもわかるでしょう?この結界のすさまじさは」
徹夜明けでテンションがハイになっているであろう魔術師のリーダー格の男が、ワシに成果物の自慢をしたいのか話しかけてきた。なるほど、魔術師団が組織ぐるみで開発した新型の結界だというわけか。何故かは知らんがディオをワシ以上に厳重に閉じ込めておきたいらしい。
「・・・はぁ」
思わずため息をつくワシに、魔術師は得意げに笑みを浮かべた。
「どうしました?あまりの出来に声も出ませんか?」
ドヤ顔をして言ってのける魔術師に対し、ワシはつい思っていることを述べてしまった。
「図体がでかいだけでなんて無駄が多くて精度が荒い結界じゃ。ポイントを絞って丁寧に術式を組まないから、ガタイがいいだけで張りぼてみたいなものじゃぞ?これから複雑な術式で中和しなくとも、力任せの魔力をそのままぶつけるだけでパリーンと砕け散る。お前あれか?結界の類はダメージを受けて限界を迎えると割れるというイメージを抱いている世代か?」
魔術師はワシの言葉を聞いて最初は「ポカーン」としていたが、やがて顔を真っ赤に染めると烈火の如く怒りだした。
「貴様!老いぼれの分際で私達の傑作を貶すか!!痛めつけてやる!!」
「いやだって時間かけてこの有様じゃろ?ギャグとしか・・・」
「うるせぇ!」
魔術師達は愚かにも討論でワシをねじ伏せることはなく、力による制圧という選択をした。こいつら本当に国が抱える魔術師なんか・・・本当にこの国の未来は暗い。魔王を倒すどころか満足に魔族の討伐も進まなかった理由がわかるわい。
「お前が!泣くまで!殴るのを!やめない!」
ドコッ バキッ
「や、やめてくれ~ そ、そこだけは・・・アッーー!」
ワシは魔術師達にボコボコにされた。
そして結界の中にいるディオと隣り合わせのまま、ワシは処刑の日を迎えることになった。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる