新訳・親友を裏切った男が絶望するまで

はにわ

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最後の戦い

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「どうしてよっ!どうしてうまくいかないのよっ!!」


アリスが魔王としての力を使い、魔族を使役して王都に襲撃をさせてから二時間ほど・・・
王都の方の騒がしさが無くなり、魔族が撤退を始めたのを見てアリスは癇癪を起した。
ちなみにその間、俺もディオもアリスに手を出すことなくただ見ていた。何となくそうしたほうがいいというか、ここで手を出すのは野暮かなという気持ちになったからだった。
結果として普段は落ち着き気取っているアリスの癇癪した姿を見ることが出来たので、まぁ待った甲斐も少しあったかな?


「お前が思っているほど、ルーチェの民は捨てたものではないということだろう」


ディオがそう言うと、アリスは歯ぎしりをしてキッと睨みつけてきた。
中々悍ましい顔をするようになった。どんどん魔王化が進んでいるのかもしれない。


「何よ・・・何で私が城にいるときにそれだけのやる気を見せてくれなかったの?どうしてこんなタイミングで目覚めるのよ・・・」


悔しそうなアリスの呟きが聞こえてくる。

アリスの魔王の力はまだ完全ではないらしく、操った魔族達も自分達に発生した被害のあまりの大きさに魔王の支配力から逃れ自我に目覚め、自らの命を守るために王都から撤退した。
見下し、見捨てたはずの元自国民に完全敗北した形になったのだ。その悔しさたるや察して余りあるものだろう。
しかも国民を覚醒させたのは、皮肉にもアリスが齎した危機感かもしれないのだ。


「何でもかんでも他人任せだからそういうことになるのだ」


ディオはビシィっとアリスに指を突きつけた。


「国が栄えぬ、国をひっくり返す、国を乗っ取る、国を亡ぼす、何もかもお前はやろうとしていることを他人任せ、もしくは他人のせいにする。自分自身で事を為そうとしない。責任を取ろうとしない。お前のような形だけの魔王など、権力者など、何も為せるはずがないのだ」


ディオの言葉にアリスはグギギと悔しがる。
確かに人を操ったり(俺のこともだが)基本的に他人任せなところがあるな。彼女のやっていることは人を使う、のではなく人に任せる、だ。基本的に無能と言えるだろう。


「そう・・・そうですか・・・なら、私の最後の力を使い、全てを滅ぼして見せますわ。せめて、このルーチェ・・・いや魔王山だけでも」


随分と目標が小さくなったが、アリスはそう言うと、何やら不気味なオーラを身に纏い始めた。
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