新訳・親友を裏切った男が絶望するまで

はにわ

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欲望のダンジョン

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自らの生み出したアルティメット・ファイアバレットにより、肉体は消し飛び、命を失ったはずであるのに、何故何が起こっているのかを把握することができるのだろう。疑問に思ったが、その答えはすぐにわかることになった。


「俺の体が透けているぅぅぅぅぅ!?」


霊体というやつだろう。俺の体は見た目が半分透け、あらゆる物体を通り抜けている。それでいて体は地面の上に立っている。不思議なもんだね。


「というかここはどこなんだ?」


俺は屋外にいたはずなのだが、いつの間にか洞窟の内部にいることに気付く。
来たことも見たこともない場所だ。


『良う来たわ』


突然大きな声が洞窟に轟いた。
ぎょっとして声のした方を振り向くと、そこには巨大な魚がいた。すごく・・・大きいです。


「お前が・・・話しかけたのか?」


『そうや』


俺が問うと返事をする。どうやらこの巨大な魚が俺に話しかけているのは間違いないようだ。
西の国の方らしき言葉遣いだ。何か微妙に違う気がするのだが。


『わいはこの国でイッチ番古くからいる神格化された存在や。この国でイッチ番偉くて強い存在やで』


偉い魚のようだ。けど何だろう・・・言葉遣い、西方の国のそれと似てるが何か違う気がしてイライラする。知らんけど。


「ここはどこなんだ?」


とりあえず超常的なことが立て続けに起きているのだ。俺はもう細かいことを気にしないで順応することにした。


『ここは欲望のダンジョンや。欲望が人並み以上に強かったお前は死んでからここに呼ばれたんやな』


「死んだ・・・そうか死んだのか」


完全に爆発四散したんだから当然だが、こうして意思がある以上何か超常的なことが起きて生きているのだと思っていた。現実を突きつけられてようやく俺は死んだことを受け入れられた気がする。


「って、欲望が人並み以上に強かったって何だよ!」


そこだけは受け入れられなかった。


『いや欲望に忠実やんけ。親友裏切って恋人寝取ろうなんてきっしょ。ひくわ』


俺は何も言えなかった。アリスに唆されたとはいえ、冷静に考えればひどいことをしたのだ。言われなくても俺だってドン引きだ。冷静じゃなかった。それにしてもこの魚ムカつくな。


『お前はようやった。あの一際欲望に強く執念深いアリスはワイですら手を持て余す厄介者やったんや。霊体をここに呼んだんはワイからの褒美やで。あのままあの世に行ったらお前は悪いことしとるから地獄行きや』


「お前イッチ番偉くて強いんじゃなかったのかよ!なんで野放しにしてたんだよ!」


俺の疑問を魚は聞こえないふりをしていた。
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