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ルーベルトの学生
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「えっ、マルセイユ領に行くんですか?奇遇ですね。私もそうなんですよ」
オミトが目的地を告げると、ライラは偶然にも目的地が一緒だと言った。
再び馬車の乗り継ぎに失敗したりすることを少しばかり恐れていたオミトは、それを聞いてホッと胸を撫でおろした。ルーデル領を出たことがないオミトからすると、大まかに方角が分かっているだけのマルセイユ領に向かうのは不安があった。まぁ既に実際に一度道に迷っているわけであるが。
まぁそんなわけで二人はマルセイユ領まで二人で移動することになった。
乗り合い馬車に乗り、今は移動中である。
「ーーーというわけで私、今は学校の休み中なんで旅に出ているんですよ」
「長期休み?随分と中途半端な時期なのだね」
ライラの話を聞いて、どの学校でも長期休暇になる時期ではなかったことをオミトは疑問に思った。
「良くはわからないですけど、なんだか学校の都合で当面の授業が中止になったんです。ルーベルト魔法使い学校というところなんですけどね」
「ルーベルト・・・」
オミトはその名を聞いて表情にこそ出さないが、少しばかり苛立ちを感じていた。
ルーベルト魔法使い学校が元ショウの婚約者であるキアラ・ルーベルトの実家が運営する学校であることは彼も知っていた。忌むべきルーベルトの名ではあるが、目の前の少女はただのそこの学生だ。関係あるまいとオミトは平静を努める。
「連日職員会議していて何かあったっぽいんですけど、まぁ、突然湧いて出た長い休みなので折角だし少し旅を・・・と思いまして」
ルーベルトめ学校運営で何かあったか?まぁどうでもいいことだが、とオミトは更にライラの言葉に耳を傾ける。
「けど、まさかいきなりあんな危ない目に遭うなんて思いませんでした・・・学校の成績はまぁまぁで、攻撃魔術にもそれなりに自信があったんですけど・・・実戦となると難しいです」
旧街道で野盗に襲われたことを思い出したのか、ライラはしょんぼりとしている。まぁ普通は野盗に襲い掛かられて死にかければトラウマものである。オミトがいなければ大変なことになっていたかもしれない。
「魔法使いは接近戦に不利だから仕方がない。高位な魔法使いだって、酒場で絡んだチンピラの振り回した刃物で死んだことがある。近距離から突発的に襲い掛かられたらどうしようもない。これは相性の問題だ」
一般的な話をしてオミトはライラをフォローする。オミトはかつて侵略国の魔法使いを不意打ちからの接近戦で何十人と斬り殺してきたので実体験として知っている。だがそれを言うと微妙な空気になりそうなのでオミトはそこは伏せた。
「そうなんですけど・・・でも、あのキアラ・ルーベルト様は、何やらその辺の問題を克服したとかどうとかって噂が流れてるんですよ。詳細はまだ誰も知らないみたいなんですけど。もしそうならやっぱり凄いお方ですよね」
「ふむ・・・」
適当に相槌を打つオミト。
以前ならショウの婚約者であるキアラが何か話題になったのなら誇らしい気持ちになったが、キアラが裏切った今となっては忌まわしいという気持ちにしかならない。
しかし、キアラが魔法使いとして接近戦を制する手法を考えたというのは気にはなった。もしその手法が広まれば、世の戦は大きく転換させられるからである。ルーデル騎士団もまた大きく戦術の見直しを求められることになりそうだ。
だが、オミトの危惧していたそれは実現することはなかった。
オミトが目的地を告げると、ライラは偶然にも目的地が一緒だと言った。
再び馬車の乗り継ぎに失敗したりすることを少しばかり恐れていたオミトは、それを聞いてホッと胸を撫でおろした。ルーデル領を出たことがないオミトからすると、大まかに方角が分かっているだけのマルセイユ領に向かうのは不安があった。まぁ既に実際に一度道に迷っているわけであるが。
まぁそんなわけで二人はマルセイユ領まで二人で移動することになった。
乗り合い馬車に乗り、今は移動中である。
「ーーーというわけで私、今は学校の休み中なんで旅に出ているんですよ」
「長期休み?随分と中途半端な時期なのだね」
ライラの話を聞いて、どの学校でも長期休暇になる時期ではなかったことをオミトは疑問に思った。
「良くはわからないですけど、なんだか学校の都合で当面の授業が中止になったんです。ルーベルト魔法使い学校というところなんですけどね」
「ルーベルト・・・」
オミトはその名を聞いて表情にこそ出さないが、少しばかり苛立ちを感じていた。
ルーベルト魔法使い学校が元ショウの婚約者であるキアラ・ルーベルトの実家が運営する学校であることは彼も知っていた。忌むべきルーベルトの名ではあるが、目の前の少女はただのそこの学生だ。関係あるまいとオミトは平静を努める。
「連日職員会議していて何かあったっぽいんですけど、まぁ、突然湧いて出た長い休みなので折角だし少し旅を・・・と思いまして」
ルーベルトめ学校運営で何かあったか?まぁどうでもいいことだが、とオミトは更にライラの言葉に耳を傾ける。
「けど、まさかいきなりあんな危ない目に遭うなんて思いませんでした・・・学校の成績はまぁまぁで、攻撃魔術にもそれなりに自信があったんですけど・・・実戦となると難しいです」
旧街道で野盗に襲われたことを思い出したのか、ライラはしょんぼりとしている。まぁ普通は野盗に襲い掛かられて死にかければトラウマものである。オミトがいなければ大変なことになっていたかもしれない。
「魔法使いは接近戦に不利だから仕方がない。高位な魔法使いだって、酒場で絡んだチンピラの振り回した刃物で死んだことがある。近距離から突発的に襲い掛かられたらどうしようもない。これは相性の問題だ」
一般的な話をしてオミトはライラをフォローする。オミトはかつて侵略国の魔法使いを不意打ちからの接近戦で何十人と斬り殺してきたので実体験として知っている。だがそれを言うと微妙な空気になりそうなのでオミトはそこは伏せた。
「そうなんですけど・・・でも、あのキアラ・ルーベルト様は、何やらその辺の問題を克服したとかどうとかって噂が流れてるんですよ。詳細はまだ誰も知らないみたいなんですけど。もしそうならやっぱり凄いお方ですよね」
「ふむ・・・」
適当に相槌を打つオミト。
以前ならショウの婚約者であるキアラが何か話題になったのなら誇らしい気持ちになったが、キアラが裏切った今となっては忌まわしいという気持ちにしかならない。
しかし、キアラが魔法使いとして接近戦を制する手法を考えたというのは気にはなった。もしその手法が広まれば、世の戦は大きく転換させられるからである。ルーデル騎士団もまた大きく戦術の見直しを求められることになりそうだ。
だが、オミトの危惧していたそれは実現することはなかった。
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