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12.割と心配した

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 翌日。風邪はすっかりよくなった。
「おはよー。」
「あ!瑞木さん!風邪は?」
真っ先に吹っ飛んでくる八神くん。
「もう治ったよ。荷物持って来てくれてありがとうね。」
「う、うんうん!それは良かった!」
八神くん、犬みたい……後ろで振ってる尻尾が見える。
「あ~、さやちゃん、おはよ~!」
「おはよ~。」
「紗華、大丈夫なの?まだ休んでた方が良いんじゃないの?」
「も~、茉琴は心配しすぎ。たかが熱じゃん。すぐ治るよ。」
茉琴は私をぎゅんっと抱きしめた。痛いわ。
「ま、まだ熱い!」
「熱くない熱くない。茉琴がくっつくから熱い。」
いのりちゃんがすごい笑ってる。あ!佐和田くん来た!私は茉琴を引っ剥がして佐和田くんに駆け寄った。
「おはよう!」
「おはよう。熱、下がったんだ。」
「うん!あの、昨日さ、ほ……保健室まで連れてってくれて、ありがとう。」
「どういたしまして。」
恥ずかしくて目が見れない。佐和田くんは、私のおでこを触った。
「……!」
「あ、ごめん。いや、昨日すごく熱かったから、割と心配した。」
「え、あ、う、あ、ありがとう。」
佐和田くんは、私の肩をぽんぽんってして、自分の席に座った。……ひ、ひぃ……心臓が、心臓が壊れそうです。ここのクラス、無自覚しかいない!無自覚イケメンしかいないぞ!"割と心配した"って……今すぐ叫びたぁあい!

 さて、そんなこともありつつ。目まぐるしくまわる日々が足を止めることはなく、いつの間にかもう6月。なぜか、佐和田くんたちと私たちの5人は、移動教室とお昼ご飯を共にする仲になってしまった。いや……嬉しいですよ?すごくすごく。あと、遂に夏服も解禁しました。腕がもろに丸見えなわけで。私はどうかなりそうです。あ、ちなみに今はお昼ご飯の最中。
「暑……。」
「昼休みくらいエアコンつけて欲しいよなぁ。」
「設置してほしいってこと?」
「……だいきくん、それは無理だ。」
「お、そうか。いやしかし、このご時世に扇風機で暑さをしのごうっていう考えのこの学園が悪いぜ。」
「……それな。瑞木さんはやけに涼しげですけど。」
「今日のお昼ご飯、冷やし中華だから。」
「……美味しそう。」
佐和田くんは半眠りみたいな顔で私の冷やし中華を見つめた。仲良くなって、私はけっこう満足している。これ以上の関係になりたいとかは、正直考えられない。そりゃ、付き合いたいのかもしれないけど、よく分からない。そんなことより、こんな事を八神くんガチ勢が許してるよなぁって事が気になってる。まぁ、多分、私のせいよね。雪平さんが私に怯えてるから。ごめん、雪平さん。
「瑞木さんって、さやかだよね。」
「へっ、あ、うん。」
き、急すぎて変な声出た……。
「さやかねぇ……。」
「爽やかって感じだよな!」
「あ、そ、そう?なんで急に?」
「いや、親戚の赤ちゃんの名前が決まらないらしいから、さやかとかまこととかいのりとか、おすすめしとこうかなと思って。」
「赤ちゃんいいねぇ!」
「まこちゃん小さい子好きだもんねぇ。」
「そうなのか!」
基本的に茉琴、八神くん、いのりちゃんが賑やかで、私と佐和田くんは相づちを打つ担当。5人が安定して来ちゃったし、今さら付き合うってのも、なんだかなぁ……。


To be continued…
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