気だるげ王子の微笑みが見たくて

うかかなむらる

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39.すれ違う

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 怜くんの胸の中で、八神くんはこう呟いた。
「……花粉症。……薬の副作用で眠いだけ。」
「乃希、花粉症とか言ってた?」
「……今年急に発症したんだよ……。」
八神くんは不意に怜くんを突き離した。
「もうくっつくな!」
「なんで。」
「なんでってそんな、っくしゅっ。あああもう目痒い……!離れろ!」
「僕のせいじゃないけど。」
「知ってるよそんなの。」
眠気でイライラ気味の八神くん。あんな姿は初めて見た。いつも笑顔でみんなを引っ張っていくイメージだから。
「眠いなら、保健室で寝れば。」
「は?ダメだろ、そんなの。」
「ダメじゃないでしょ。副作用なら仕方ないじゃん。」
「授業サボってんのと一緒じゃん。」
「乃希は1回くらいサボっても大丈夫だよ。」
「偉そうなこと言うなよ!」
「何怒ってんの?」
「……っ!」
八神くんに突き飛ばされ、怜くんは後ろの机にぶつかった。
「俺のこと、知ったような顔するな……!」
「え、だって」
怜くんは八神くんの腕を掴む。クラスのみんなも何事かとふたりを見ている。
「触んな!男同士で気持ち悪いだろうが!」
「き、気持ち悪いって……。もうマジ、保健室行こうよ。」
「行かねーよ。」
「行けってば。」
「……行かねぇ。」
「行けって言ってんだろ。……イライラしてるお前見て不快なんだよ!」
「あーそーかよ!じゃあ行ってやるよ!」
八神くんは腕を振り払って教室を出て行った。
「待て乃希!」
教室を出た怜くんは、数秒して戻ってきた。自分の席に腰下ろし、頭を抱える。私はそっと近づいて、背中を撫でた。
「……何キレてんの……。」
それは、八神くんに対して?それとも、自分に対して?
 結局、八神くんは昼休みまでずっと、保健室で寝ていたらしい。この日はふたりは目も合わせずに、一度も言葉を交わすことは無かった。

 八神くんと怜くんがギクシャクし始めて数日。今日は休日です。外は曇り。今日も茉琴といのりちゃんは、私の家に集まっています。
「……はぁ。」
「どうしたよ、いのり。」
「どうしたもこうしたもさぁ……。」
「いのりちゃんはさ、どう思う?八神くんたちのこと。」
「ふたりの喧嘩だし、なんとも言えないけど……。」
「あたしはこのふたり、そろそろ喧嘩するかもなぁって思ってた。」
「えっ、なんで?」
「うーん、なんか。会話が不自然だったから。ふたりとも彼女できたじゃん?だから、ある程度の距離を取ろうとしてるんだろうなぁって。でも距離取るの無理だと思うな~、あのふたりは。幼馴染なんでしょ?」
「うん。」
「付き合ってたし。」
「ね。……はい!?」
「えっ、さやちゃん今なんて言った!?」
「付き合ってたらしいしって。」
茉琴といのりちゃんが目を見開いた。
「まっ、まじ?」
「まこちゃんの好きなやつ。」
「好きだけど、修羅場だね!?」
「そうでしょ。」
「な、なんで付き合ってたの?」
「うーん、流れ?いのりちゃんは知らなかったんだ。」
「知らないよ~!?」
「八神くんは隠したいのかもねぇ。」
「うーん。」
私たちはしばらく黙ってしまった。
「……でもさぁ、だいきくんがさわだくんとばっかり仲良しなのは、正直いい気持ちはしないよねぇ。」
「それはね、私も。」
「そうだろうねぇ。」
「……だいきくん、わたしのこと好きかなぁ。」
「えっ、好きでしょ。」
「怜くんも微妙だよね。どっちが大事なのって思う時あるし。」
「えぇ……どうなるんだか。」
「ほんと~。明日はだいきくん誕生日なのに。」
「あっ、そうなの?」
「うん。さわだくんとギクシャクしたまま誕生日なんて、嫌だろうなぁ……わたしたちの、せいなのかな。」
「な、何言ってんの!?」
茉琴は慌てて否定したけど、私もそんな気はした。佐和田怜に恋をしたのはなんか、違ったのかなって思ってしまう。正直、八神くんと怜くんの仲の良さは異常だし、私が勝てるとは思えない。これからも付き合っていられる気がしない。飽きられるんじゃないか。嫌われるんじゃないか。そんなことを、思ってしまう。
「……はぁ。」
「た、ため息つかないでよぉ~。あ、ねぇ、お腹空かない?」
茉琴は、ブルーな私たちを元気づけようと話を変えた。
「空いた~。」
「何か食べに行こうよ!」
「例えば?」
「うーん……ハンバーグとか?」
「あう、食べたい……。」
「行こう~!」
それから私たちは男子のことなんか忘れて(いや、忘れたフリで、が正しいかな)、3人の時間を楽しんだ。


To be continued…
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