瀬戸口家のペットは人外生物のすーちゃん

うかかなむらる

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44 エンルフ

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 血まみれの右手を止血しながら、龍斗は叶矢と泉歌に状況を説明していた。
「……ニュースを見てたんだよ。なんか……なんだっけ。」
「エンルフ。」
出血で頭が回らないのか、いつもよりゆったり話す龍斗に、父が助け舟を出す。
「あ、そう、それ。エンルフっていう、え、えば……なんだっけ?」
「エヴァーラスティン?」
「うん、それ。に住んでる生物が人間界でも繁殖しています、みたいなニュースがやっててさ。」
「龍斗。ごめん、ちょっと話すのをやめてくれ。傷を洗うぞ。」
「あ、うん。ちょっと待ってね。」
龍斗が、傷口を顔をしかめながら洗っているのを、兄妹は複雑な気持ちで見ていた。なんとなく分かる。おそらく、自分たちの家族が……。
「ごめん、お待たせ。」
「話し続けて良いけど、俺はお前の傷に消毒をして、それから保健室から絆創膏的なものを貰ってくるからな。」
島田先生はそう言って、龍斗の傷に消毒液をかけた。
「あ、うん。……っ、た!下手か!」
「消毒に下手も上手いもないだろ!」
「ゔわ、痛っ!」
「……はい、終わり。母さんの所に行ってくる。」
「いてらー。」
島田先生が出て行き、龍斗は改めて兄妹の方を向いた。
「あ、座れよ。その辺に俺の血がべちゃべちゃしてるけど。気にし……おぇ……。」
「龍斗、血とか苦手だよな。」
叶矢が机の上に散らばる大量の血を拭き取りながらそう言った。兄妹は、龍斗の前に座る。
「……すまねぇ。えー、どこまで喋ったっけ?」
「ニュースをやってたってところ。」
「あぁ、そうそう。で、エン……ん?」
「え、エンルフ、ですか?」
「あ、それ。エンルフの画像が出てきて、そしたら……目が、変わって……。」
生物的本能にられたスコルピーが、龍斗の右手に噛みつき、吸血した。
「……痛くてさ、俺、なんかそのくらいから記憶無い。」
島田先生が戻ってきた。
「……スコルピーくんには、麻酔を打った。理科室にちょうどあって良かったよ。一応、人外用のやつでさ。」
島田先生は、龍斗の隣に再び腰を下ろし、傷口を手際よく保護した。
「さんきゅー。」
「ん。……一応、まだ虫かごの中に入れていた方が良いと思う。」
「……エンルフに反応したんですか、すー。」
「おそらく、そうかな。」
「……あの、エンルフは、その……肉食動物、ですか?」
泉歌が口を開いた。
「そうだよ。」
島田先生の言葉に兄妹はハッとした。
「エヴァーラスティンの生物、エンルフ。すーの過去に、何か強く関係しているんだろうね……。」
叶矢は、虫篭の中でいつもみたいに寝ているスコルピーの顔を見ながら、そう呟いた。
「……叶矢、そのジュース、貰っていいか。」


To be continued…
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