戦隊ヒロイン16

うかかなむらる

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Marron's Day

第122話

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 微かに震えるマロンの身体。
「だ、大丈夫?寒い?」
「違うの。き、緊張が限界を迎えちゃって……う、後ろからぎゅってされるの、恥ずかしいよ……。」
う、わ……マロンって、こんなに可愛い人だったんだ。抑えられなくなりそうな欲求を抑制する。
「まーちん。」
「……!?ら、らーちん?」
「俺はらっくんで良いけど。」
「やーだ。……綺麗。」
自分の首に飾られる石を光にかざす。
「っふ。……なんだか、胸が苦しいわ。」
「えっ。」
「恋って苦しいのかな……?好きすぎて苦しい。」
そう言って、俺の方をちらっと見た。俺はマロンの頭を撫でた。
「シャンパン飲も。」
「うん。おつまみ作る。」
マロンは台所に入った。もうすっかり俺の家にも慣れてくれたらしい。それから俺たちは、遅くまで飲んだり食べたりしながら語り合った。

 朝10時。隣を見ると、マロンが眠っていた。無防備な寝顔。この子は、俺の"彼女"という存在。勢い余って、というわけではなく、ずっと前からこの日に告白しようとは思っていたけれど、本当の本当にOKされると思っていなかった。あ、内山田から連絡来てる。内山田っていうのは、俺が妖精界で政治家をやっていた時に秘書をしてくれていた人。今は、使わなくなったマロンのアトリエを借りて、自らが政治家をしている。
 10時30分。マロンが起きてきた。
「おはよ~。」
「おはよ。」
ぼけーっと座るマロンに紅茶を淹れる。マロンがそれを飲んでいるとき、インターホンが鳴った。
「はいはーい。」
メガネで鋭い眼光の真面目そうな青年。
「お、内山田?」
「はい。ご無沙汰しております。」
「人間の姿だとそんななのか~!まぁ、入れ入れ。」
内山田は一礼して入ってきた。
「えっ、だ、誰。」
「菊池さん。お久しぶりです。」
「あー!!内山田くん!?」
「はい。」
内山田は正座し、真っ黒のカバンから大きな茶封筒を出した。
「こちら、菊池さんへ。」
「わ、私?」
「はい。あなたのアトリエへ届いた物です。」
マロンはピリピリと開け、中からたくさんの封筒を取り出す。
『マロン様へ』
『菊池さんへ』
『菊池亜栗ありつ様』
『きぃちゃんへ』
「……お手紙?」
「はい。ファンの方々からかと。では、私はこれで。」
「はいよー。ありがとうな、わざわざ。」
「いえ。阿部さんが元気そうでなによりです。」
「俺は元気だぜ。」
内山田はさっさと帰って行った。今のマロンの住所を知らない者たちが、アトリエに手紙を贈ってしまったらしい。マロンは目に涙をたくさんためてひとつひとつ、封筒を開けている。
『マロンさん、お誕生日おめでとうございます。新しいお仕事はどうですか?マロンさんの作品に、いつも勇気をもらっています。またいつか、新しい作品が見られることを、ちょっぴり願っています。』
そんな内容の、手紙たち。中には、あくまかいちょーをはじめとする、新割者会の妖精からの手紙もあった。
「マロンの誕生日を祝いたいって人は、俺以外にもたくさん居るみたいだな。」
電源が切れていたマロンの携帯にも、仲間たちからのお祝いメッセージがたくさん届いていた。
「嬉しい……私なんかに、こんなにたくさん……。」
手紙とネックレスを抱きしめる。マロンは、マロンが思っている以上にすごい妖精なんだろう。となれば、ここが妖精界だったらこれって週刊誌案件なんじゃ?なんて、思ってみたりした。政治家と画家の熱愛報道、的な。たくさんのファンや友達からの愛を受け取ったマロンは、丁寧にひとつひとつ読み、お返事を書き始めた。
「全員に書くのか。」
「うん……!」
やっぱりすごい。
 改めて、誕生日おめでとう、マロン。


○本日の出演キャラ
・阿部ライチ
・菊池マロン
・内山田
・ファンの方々
・新割者会の皆さん



Happy Birthday!
To be continued…
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