153 / 157
あったかくて優しいその香りに包まれて、僕は君に恋をしている。
第132話
しおりを挟む
友達のままで居たい。友達を超えたい。嫌われたくない。好かれたい。その境界線で、僕はずっともがき苦しんでいたんだ。
桜が散る。今日から2年生だ。僕と翼は、高校生になっても相変わらず2人で登下校している。部活は違うんだけど、終わる時間はだいたい同じだし、僕が遅くても翼は待っていてくれる。そして今は、始業式が終わって下校中。
「クラス違ったね。」
僕は、ふとそう言った。
「ほんとだよ。コースは一緒だから、50%の確率で一緒のはずなんだけどね。」
「だねぇ。」
「……一緒が良かったなぁ。」
そう言って、翼は石ころを蹴った。
「クラス違ったら、クラスマッチとかで戦えるじゃん。」
「……同じチームの方がいいし。」
すっげぇふてくされてる……。
「そんなに不機嫌にならないでよ~。」
僕が翼の腕をつんつんすると、翼はちょっとだけ微笑んだ。
「でも翼、小林くんとか安達くんとは一緒じゃん。」
「賢大と一緒じゃないならそんなに嬉しくないし。」
「一途が過ぎる……じゃあ、今日はうちに泊まる?」
「えっ、いいの!?」
目を輝かす翼。単純が過ぎる。
「翼っちのママとパパが良いって言うならね。」
「待ってね、訊く!」
翼は、カバンから携帯を取り出して電話を掛けた。高校生になってから、翼の僕への愛はますます膨れ上がっていっている気がする。小学生の頃はバランスが釣り合っていたんだと思うんだけど、中学校でちょっと翼が多くなって、高校生の翼は僕をあまりにも好きすぎる。甘やかす僕が悪いのかもしれないけどね、こうやって。
「良いって!」
「良かったね。」
「じゃあ、荷物取ってくる!」
「行ってら~。」
走り去る翼の背中を見送って、僕は先に田中家に帰った。姉ちゃんは今日から大学生。家に1人でいることが多くなるんだなぁ……とか考えながら。
数分後、インターホンが鳴って翼が来た。
「おかえり!」
「え、あ、た、ただいま!」
いや、おかえりはおかしいね……そりゃ困惑するわ。
「今日、姉ちゃん帰り遅いらしいけど、ラーメンとか食べ行く?」
「僕が作ろうか?」
「えっ、作るの!?」
「あ、や、やっぱりやめます。」
「どういうこっちゃ。」
「……ラーメンで良いです。」
「はい、そうしましょ。」
その後、二人で宿題をして、なんやかんやして遊んで、ラーメン食べに行って、寝た。
「……僕のベッドで寝たいと。」
「うん。」
「……じゃあ僕は降りるね。」
「いやなんで。賢大が寝るから寝ようとしてるんじゃん。賢大が下で寝るなら僕だって下で寝るよ。」
「……そ、そうか。」
何これ。どうしたらいいのこれ。
「……じゃ、じゃあ僕はベッドで寝るよ。」
「うん。僕も寝る。」
……そ、そうでしょうねぇ。ベッドが狭い、すごく。
「……明日から違う時間割りかぁ。」
「そっか、そうなるね。」
「……こうなったらいっそのこと、賢大のストーカーにでもなろうかな。」
「なんで怖いわ。」
翼が言うと冗談に聞こえないんだよね……。
「おやすみ。」
「うん……おやすみ。」
声変わりした僕たちの声が、部屋にくぐもった。
高2になって、初めての土曜授業が終わった。土曜日は基本、部活動は無いけど翼は一瞬だけミーティングがあるらしい。文化部もミーティングって言うんだ。言うか、そりゃ。そんなわけで、僕は門の前で翼を待っている。帰る前に、僕が翼を待ってるのって新鮮だなぁ。そういえば朝、ちょっと熱っぽいとか言ってたけど大丈夫かな。ここ数日、風邪っぽかったし。前みたいに休み時間に会えないから分かんないなぁ。……不便。
しばらくして、翼が靴を履き替えているのが見えた。……大丈夫かな。
「ごめん。思ったより時間かかった。」
翼は、虚ろな瞳でそう言った。
「ううん、大丈夫。……熱が上がったんじゃない?」
「うーん、多分そう。でも、大丈夫。」
にへっと笑う翼の表情が年齢の割に子どもっぽくて、僕の不安がさらに募った。翼は、体調が悪いと精神が幼児化する特異体質なんだ。本人曰く、防衛本能らしい。あ、みんな知ってるか。翼は、歩き出した僕の腕をつかんだ。
「本当に大丈夫?」
「……だいじょうぶ。」
大丈夫じゃないな……。とりあえず、僕の家までは連れて行こう。
田中家、すなわち僕んちの前。
「帰れる?」
「……うん。」
頷いた翼の体が、僕の方に大きく傾いた。僕は、慌てて受け止める。
「だ、大丈夫?……帰れないね。」
翼は、僕の体を抱きしめた。
「……休もうね。熱、測ろう?」
僕は翼をソファまで引っ張って来ると、座らせて体温計を探しに行った。田中家は風邪を引かない。よって、体温計は何処かに埋まっている。どこだ……あ!あった!!
「はい。熱を測って。」
翼は僕から体温計を受け取った。数秒後、ピピピという音が微かに聞こえた。
「何度?」
「……ん。」
翼は体温計を僕に渡した。
「……38.4℃。熱だよ。僕のベッドでちょっと休む?それとも、帰って自分のベッドで寝る?」
「……けんたと寝る。」
うん、それはちょっと違うぞ??小さい子の言う事はよく分からん!
「寝室に行くよ、ほら。」
僕は翼の手を掴んで、僕の部屋に向かった。翼を寝かしつける。
「お母さんたちには連絡しとくね。」
「……うん。ありがと。」
そう言って微笑むと、翼は目を閉じた。あれ……今ちょっとかわいいと思ったよね、僕。だ、ダメだよ、そんな翼みたいな事を考えたら。とりあえず、高畑家に連絡を入れよう、うん。
○本日の出演キャラ
・田中 賢大(16)
・高畑 翼(16)
To be continued…
桜が散る。今日から2年生だ。僕と翼は、高校生になっても相変わらず2人で登下校している。部活は違うんだけど、終わる時間はだいたい同じだし、僕が遅くても翼は待っていてくれる。そして今は、始業式が終わって下校中。
「クラス違ったね。」
僕は、ふとそう言った。
「ほんとだよ。コースは一緒だから、50%の確率で一緒のはずなんだけどね。」
「だねぇ。」
「……一緒が良かったなぁ。」
そう言って、翼は石ころを蹴った。
「クラス違ったら、クラスマッチとかで戦えるじゃん。」
「……同じチームの方がいいし。」
すっげぇふてくされてる……。
「そんなに不機嫌にならないでよ~。」
僕が翼の腕をつんつんすると、翼はちょっとだけ微笑んだ。
「でも翼、小林くんとか安達くんとは一緒じゃん。」
「賢大と一緒じゃないならそんなに嬉しくないし。」
「一途が過ぎる……じゃあ、今日はうちに泊まる?」
「えっ、いいの!?」
目を輝かす翼。単純が過ぎる。
「翼っちのママとパパが良いって言うならね。」
「待ってね、訊く!」
翼は、カバンから携帯を取り出して電話を掛けた。高校生になってから、翼の僕への愛はますます膨れ上がっていっている気がする。小学生の頃はバランスが釣り合っていたんだと思うんだけど、中学校でちょっと翼が多くなって、高校生の翼は僕をあまりにも好きすぎる。甘やかす僕が悪いのかもしれないけどね、こうやって。
「良いって!」
「良かったね。」
「じゃあ、荷物取ってくる!」
「行ってら~。」
走り去る翼の背中を見送って、僕は先に田中家に帰った。姉ちゃんは今日から大学生。家に1人でいることが多くなるんだなぁ……とか考えながら。
数分後、インターホンが鳴って翼が来た。
「おかえり!」
「え、あ、た、ただいま!」
いや、おかえりはおかしいね……そりゃ困惑するわ。
「今日、姉ちゃん帰り遅いらしいけど、ラーメンとか食べ行く?」
「僕が作ろうか?」
「えっ、作るの!?」
「あ、や、やっぱりやめます。」
「どういうこっちゃ。」
「……ラーメンで良いです。」
「はい、そうしましょ。」
その後、二人で宿題をして、なんやかんやして遊んで、ラーメン食べに行って、寝た。
「……僕のベッドで寝たいと。」
「うん。」
「……じゃあ僕は降りるね。」
「いやなんで。賢大が寝るから寝ようとしてるんじゃん。賢大が下で寝るなら僕だって下で寝るよ。」
「……そ、そうか。」
何これ。どうしたらいいのこれ。
「……じゃ、じゃあ僕はベッドで寝るよ。」
「うん。僕も寝る。」
……そ、そうでしょうねぇ。ベッドが狭い、すごく。
「……明日から違う時間割りかぁ。」
「そっか、そうなるね。」
「……こうなったらいっそのこと、賢大のストーカーにでもなろうかな。」
「なんで怖いわ。」
翼が言うと冗談に聞こえないんだよね……。
「おやすみ。」
「うん……おやすみ。」
声変わりした僕たちの声が、部屋にくぐもった。
高2になって、初めての土曜授業が終わった。土曜日は基本、部活動は無いけど翼は一瞬だけミーティングがあるらしい。文化部もミーティングって言うんだ。言うか、そりゃ。そんなわけで、僕は門の前で翼を待っている。帰る前に、僕が翼を待ってるのって新鮮だなぁ。そういえば朝、ちょっと熱っぽいとか言ってたけど大丈夫かな。ここ数日、風邪っぽかったし。前みたいに休み時間に会えないから分かんないなぁ。……不便。
しばらくして、翼が靴を履き替えているのが見えた。……大丈夫かな。
「ごめん。思ったより時間かかった。」
翼は、虚ろな瞳でそう言った。
「ううん、大丈夫。……熱が上がったんじゃない?」
「うーん、多分そう。でも、大丈夫。」
にへっと笑う翼の表情が年齢の割に子どもっぽくて、僕の不安がさらに募った。翼は、体調が悪いと精神が幼児化する特異体質なんだ。本人曰く、防衛本能らしい。あ、みんな知ってるか。翼は、歩き出した僕の腕をつかんだ。
「本当に大丈夫?」
「……だいじょうぶ。」
大丈夫じゃないな……。とりあえず、僕の家までは連れて行こう。
田中家、すなわち僕んちの前。
「帰れる?」
「……うん。」
頷いた翼の体が、僕の方に大きく傾いた。僕は、慌てて受け止める。
「だ、大丈夫?……帰れないね。」
翼は、僕の体を抱きしめた。
「……休もうね。熱、測ろう?」
僕は翼をソファまで引っ張って来ると、座らせて体温計を探しに行った。田中家は風邪を引かない。よって、体温計は何処かに埋まっている。どこだ……あ!あった!!
「はい。熱を測って。」
翼は僕から体温計を受け取った。数秒後、ピピピという音が微かに聞こえた。
「何度?」
「……ん。」
翼は体温計を僕に渡した。
「……38.4℃。熱だよ。僕のベッドでちょっと休む?それとも、帰って自分のベッドで寝る?」
「……けんたと寝る。」
うん、それはちょっと違うぞ??小さい子の言う事はよく分からん!
「寝室に行くよ、ほら。」
僕は翼の手を掴んで、僕の部屋に向かった。翼を寝かしつける。
「お母さんたちには連絡しとくね。」
「……うん。ありがと。」
そう言って微笑むと、翼は目を閉じた。あれ……今ちょっとかわいいと思ったよね、僕。だ、ダメだよ、そんな翼みたいな事を考えたら。とりあえず、高畑家に連絡を入れよう、うん。
○本日の出演キャラ
・田中 賢大(16)
・高畑 翼(16)
To be continued…
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
ペットになった
ノーウェザー
ファンタジー
ペットになってしまった『クロ』。
言葉も常識も通用しない世界。
それでも、特に不便は感じない。
あの場所に戻るくらいなら、別にどんな場所でも良かったから。
「クロ」
笑いながらオレの名前を呼ぶこの人がいる限り、オレは・・・ーーーー・・・。
※視点コロコロ
※更新ノロノロ
美味しいコーヒーの愉しみ方 Acidity and Bitterness
碧井夢夏
ライト文芸
<第五回ライト文芸大賞 最終選考・奨励賞>
住宅街とオフィスビルが共存するとある下町にある定食屋「まなべ」。
看板娘の利津(りつ)は毎日忙しくお店を手伝っている。
最近隣にできたコーヒーショップ「The Coffee Stand Natsu」。
どうやら、店長は有名なクリエイティブ・ディレクターで、脱サラして始めたお店らしく……?
神の舌を持つ定食屋の娘×クリエイティブ界の神と呼ばれた男 2人の出会いはやがて下町を変えていく――?
定食屋とコーヒーショップ、時々美容室、を中心に繰り広げられる出会いと挫折の物語。
過激表現はありませんが、重めの過去が出ることがあります。
ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜
KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞
ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。
諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。
そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。
捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。
腕には、守るべきメイドの少女。
眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。
―――それは、ただの不運な落下のはずだった。
崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。
その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。
死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。
だが、その力の代償は、あまりにも大きい。
彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”――
つまり平和で自堕落な生活そのものだった。
これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、
守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、
いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。
―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。
金の羊亭へようこそ! 〝元〟聖女様の宿屋経営物語
紗々置 遼嘉
ファンタジー
アルシャインは真面目な聖女だった。
しかし、神聖力が枯渇して〝偽聖女〟と罵られて国を追い出された。
郊外に館を貰ったアルシャインは、護衛騎士を付けられた。
そして、そこが酒場兼宿屋だと分かると、復活させようと決意した。
そこには戦争孤児もいて、アルシャインはその子達を養うと決める。
アルシャインの食事処兼、宿屋経営の夢がどんどん形になっていく。
そして、孤児達の成長と日常、たまに恋愛がある物語である。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
偽夫婦お家騒動始末記
紫紺
歴史・時代
【第10回歴史時代大賞、奨励賞受賞しました!】
故郷を捨て、江戸で寺子屋の先生を生業として暮らす篠宮隼(しのみやはやて)は、ある夜、茶屋から足抜けしてきた陰間と出会う。
紫音(しおん)という若い男との奇妙な共同生活が始まるのだが。
隼には胸に秘めた決意があり、紫音との生活はそれを遂げるための策の一つだ。だが、紫音の方にも実は裏があって……。
江戸を舞台に様々な陰謀が駆け巡る。敢えて裏街道を走る隼に、念願を叶える日はくるのだろうか。
そして、拾った陰間、紫音の正体は。
活劇と謎解き、そして恋心の長編エンタメ時代小説です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる