14 / 34
第2話 いざ、帝都へ
⑤ 友達が友達でなくなる日(挿絵有り)
しおりを挟むルカ・アシュフィールドと初めて会ったのは、帝立士官学校へ入学した日だった。
自分の入る寮の部屋で、早々に鉢合わせしたのである。
『お前がエイル・ウィンシュタットか?
僕はルカ。
ルカ・アシュフィールドだ。
ルームメイトとしてこれから2年間、よろしくな』
そんな風に挨拶されたと思う。
だがその時、私はそれどころではなかった。
何せ、男子寮にとびっきりの金髪美少女が姿を現したのだ。
しかも自分のことを、私のルームメイトなどと称して。
今だから言ってしまうが、当時は学校側の“賄賂”を疑った位だ。
その時点で私は侯爵を継ぐことがほぼ確定していたし、若くして宰相となったクライブ伯爵とも深い交流があった。
便宜を図られる要素は揃っていたのだ。
『あー、一応言っといてやるけど、僕は男だから』
その説明を受けて、衝撃が走った。
こんな綺麗な男が世の中には居るのか、と。
ルカの歳を考えても、異常と言うしかない。
しかし私がそれを指摘しても、
『えー……お前みたいなのがそんなこと言うの?』
何故か不思議そうな顔をしていたが。
それから、私とルカの共同生活が始まった。
『なーエイルー、ここ教えてー?』
座学が得意でなかった彼は、よくよく勉強を聞きに来たものだ。
私はといえば、現代社会で勉強をしてきたアドバンテージを十分に生かすことで、優等生として通っていた。
日本に住んでいた時は実感しなかったが、中世レベルの文化圏からすれば現代知識は相当高度な代物なのだ。
とまあ、それはともかく。
勉強を教えるのに問題は無かったのだが、その際のねだり方に問題があった。
『なーなー、いいだろー?
教えてよ、エイルー』
よりにもよってルカは、私にしな垂れかかってきたのだ。
忙しくて渋った時は、間違いなくそれをしてくる。
『なーなーなーなー』
それでも私が渋ると、私の身体に手を回してしがみ付いてまで来た。
男の癖にやたらしなやかな肢体が、ぎゅっと私に押し付けられる。
正直、堪らなかった。
実を言うと、これを堪能するために態と断る素振りを見せたことすらあったりする。
ルカに悩まされたのは、これだけではない。
『はー、今日も疲れたよ。
飯食って休もうか、エイル』
学校が終わり、寮に戻ると大体の生徒は私服になる。
それ自体は大したことでないのだが、ルカの格好はかなりアレだった。
例えば、ある日はタンクトップにホットパンツ姿。
『うん? この服装が気になる?
へへ、どうだい、僕の魅力を引き立てるだろ。
見てみろよ、このスラッとした脚を!』
そう言って、積極的に私へ見せつけてくる。
むちっと肉がついた、健康的な素足を。
どうにか平静を保ったが、内心ドキドキしっ放しだった。
他の日には可愛らしい女性物のワンピースだったり、綺麗なドレスだったり、際どい水着を着ていたこともあった。
さながらファッションショーだ。
これを見に、寮中の男子生徒が部屋に集まったりもした。
極め付けが、これだ。
『よし、今日は一緒に寝よう!』
夜、私のベッドに上がり込んできた。
『偶にはいいじゃないか。
こうやって一緒に寝ながら語明かすと言うのも』
全然よろしくない。
寝間着姿のルカからは、どうしてか良い匂いがした。
なんとか拒もうとしても、
『いいじゃないか、男同士なんだし!』
そう言って、無理やり布団の中へ滑り込んでくる。
その後のことは余り覚えていない。
とにかく、自分の理性を維持するのに必死だった。
ここに至り、どうして私が彼と同部屋になったのか嫌が応にも理解する。
そりゃ、下手な男子をこんな奴と一緒に生活させられまい。
遠くないうちに“問題”が発生することが目に見えている。
しかも、ルカは名門アシュフィールド公爵家の息子なのだ。
“何か”があれば、学校の存続問題にまで発展しかねない。
それで白羽の矢が立ったのが、私なのだろう。
まったく、ルームメイトが私でなければルカはどうなっていたことやら。
『……あれ? どうしたんだエイル、そんな思い詰めた顔して』
きっと、彼にとってトラウマ級な出来事が起きていたに違いない。
『ど、どうして部屋に鍵閉めた?』
私には感謝して貰いたいものだ。
『なぁ、無言で寄ってくるなよ、怖いぞ』
『……エイル?』
『待って、ちょっと待って』
『僕達、友達だよ、な?』
『ねぇ、ちょっと――』
『――と、友達だろぉおおおっ!!!?』
……まあ、未遂に終わったのだが。
「あの時は本当にどうなるかと思ったよ」
「君が毎回変な誘惑をするから悪いんだ」
回想は終わり、場面は王城の寝室へ。
ちょうど今は、ベッドの上でその話をして盛り上がっている最中だ。
「ああ、全て僕が悪い。
僕が、余りにも美しいから――!」
自分に酔った発言をするルカ。
綺麗であることは否定しないが。
「自覚があるなら、こんな格好しないで欲しいものだ」
「はっはっは、美しい者がより美しく着飾るのは義務といっていい。
とはいえ、並大抵の衣装では僕を引き立てることなどできないけどね」
なんという天狗発言。
「確かに、結構なドレスだな。
よく見ればかなり良い生地を使っている」
「お、分かるかい?
最高級のシルクさ」
「ほう」
ドレスを触ってみると、なるほど手触りがまるで違う。
癖になりそうな感触だ。
せっかくなのでそのままスカートを捲りあげ、中身を確認する。
「ふむ、下着まで女物か」
レースのショーツだ。
シンプルなデザインながら、丁寧な造りを伺わせる。
「……いいんだけどさ。
あっさりスカートを捲ったね、お前は」
「男同士だから問題ないんだろう?」
「むぅ」
かつて言われたことをそのまま返すと、ルカは答えに窮したようだ。
これ幸いと、他の部分もペタペタ触り出す。
太もも。
贅肉が無く引き締まっている。
だというのにこの柔らかさは何だ。
極上の筋肉は柔らかい、とどこかで聞いたことがあるが、それか。
腰。
細い。
女性が見たら嫉妬に狂いそうな程、くびれている。
細さだけなら、或いはセシリアより上かもしれない。
お尻。
良い形、良い丸みだ。
弾力も申し分ない。
顔を埋めてしまいたい欲求に駆られる程である。
「あのー、エイル?」
「なんだ?」
「いや“なんだ?”じゃなくて。
流石にやりすぎじゃないか?
ちょっとこそばゆいんだけど」
「そうか」
しかし手は止めない――止められない。
最高級のシルクなんて問題にならない。
ルカの肉感こそ、正しく癖になる感触だ。
「おーい、聞いてるかエイルー?」
「……なぁ、ルカ。
“未遂”で終わったあの日、私が最後に何て言ったか覚えているか?」
「へ? うーん、なんだったかな?」
覚えていないようだ。
ならば教えてやろう。
「“次はないぞ”、と言ったんだよ」
「――ひっ!?」
途端、ベッドから立ち上がるルカ。
後を追う私。
「ま、待てエイル!
話せば――話せば分かる!!」
「問答無用!!」
背後から彼に抱き着いた。
男とは思えない、その華奢な肢体に。
間髪入れず、胸元に、スカートに、手を滑り込ませる。
「うわうわ、うわ!!
ちょっ! くすぐったい!! くすぐったいって――――んぅっ!?」
色の帯びた声を上げる。
ほう、どうやらココがよろしいようで。
「え、エイル、待って。
ぼ、僕達、友達同士のはず、だろ。
こんなこと――」
「そうだな、友達だな。
……だが、友達とこういうことをしてはいけないルールでもあるのか?」
いや、ルール以前の問題だとは思う。
思うのだが、今日は止まるつもりはない。
あの頃の私とは違う。
前は『初体験はセシリアと』という信念が情欲を上回った。
しかしセシリアとの初体験を既に終え、男として一つ上に昇った私に、最早隙は無いのだ。
男となんて初めてだけれど、何とかなるだろう。
私は、私の助兵衛心を信じる!
「いやいや、そんなもの信じられても!!
ストップ!! 手、止めて!! こ、これ以上は怒っちゃうぞ!?」
なおも講義するルカ。
仕方のない奴だ。
「おいルカ、“鏡”を見てみろ」
「え?」
都合の良いことに、私とルカの前には姿見が置いてある。
そこにある鏡には2人の姿が映し出されており――
「――“アレ”が、嫌がっている顔か?」
「あ、う――」
鏡の中のルカは顔を赤く染め――どこかまんざらでも無い表情をしている。
まるで、これから起きるであろうことへ期待しているかのように。
彼が心底拒んでいるわけではない、その証拠だ。
「で、でも、僕達は男同士で――――あんっ♡」
またも艶っぽい反応。
自分の状態を認識したせいか、身体より“素直”になってきているようだ。
「――ルカ」
ダメ押しとばかりに、私は呟く。
彼の耳元で。
ねっとりとした声を意識しながら。
「どうしてもと言うなら、もっとしっかり拒否すればいいだろう?
私は体術の実技で一度も君に勝てたことが無いんだ。
その気になれば、簡単に私を投げ飛ばせるはずじゃないのか?」
「……あ」
語った通り、ルカは私より強い。
体術に限らず戦闘に関連した実技において、私は彼に勝つどころかまともに勝負すらできなかった。
なのに、ルカは何もしてこない。
「どうする?
決めるのは、君だ。
調子に乗った私を制裁するか」
「……あ、う」
「――それとも、このまま続けるか」
「…………」
――しばしの沈黙の後。
ルカは、私にその身を委ねる道を選んだ。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~
ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。
食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。
最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。
それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。
※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。
カクヨムで先行投稿中!
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』
チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。
気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。
「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」
「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」
最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク!
本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった!
「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」
そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく!
神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ!
◆ガチャ転生×最強×スローライフ!
無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!
クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双
四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。
「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。
教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。
友達もなく、未来への希望もない。
そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。
突如として芽生えた“成長システム”。
努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。
筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。
昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。
「なんであいつが……?」
「昨日まで笑いものだったはずだろ!」
周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。
陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。
だが、これはただのサクセスストーリーではない。
嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。
陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。
「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」
かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。
最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。
物語は、まだ始まったばかりだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
