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第17話裏 男女2人、夜、密室――ナニも起きない筈がなく……

【1】まずは前準備

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「んっ……ふっ……あ、んっ……」

 部屋マイルームに響く、くぐもった甘い声と湿った音。

「あっ……んんっ……ちゅっ……くぅ、ん……」

 ここに居るのは2人の男女だ。
 男の名はアスヴェル。異世界からやってきた勇者であり、この物語の主人公。故あって現在は情報生命体とかいう存在になっているらしい。
 女は名はミナト。アスヴェルの想い人である。短めに整った亜麻色の髪が実に映える美しい少女だ。

 情報生命体である彼がいることからも分かる通り、この場所はVR型MMORPG“Divine Cradle”内の一室――より正確には、ミナトの所有する私室マイルームだ。そんな場所で彼等が何をしているかと言えば――

「んぅっ……れろれろ……ん、ちゅっ……はぅっ……」

 絶賛、接吻の真っ最中である。それも、唇同士を触れ合わせるような軽いものではなく、舌と舌を絡ませた濃厚なディープキッスだ。

(……なんという滑らかさ)

 アスヴェルが胸中で零す。ミナトの舌はとても繊細だった。唇も実に瑞々しく、触れる度にプルプルと小さく震える。口と口が交わる毎に、その極上と言ってもいい感触が齎され、このまま一生続けたいという欲求すら産まれてしまう。

(それに――身体も)

 絡まっているのは何も舌だけではない。キスをしている以上、当然アスヴェルとミナトは抱き合っている――どちらかと言えば、一方的に少女を抱きしめているという体勢だが。
 肩や腰に回した腕には、彼女の肢体の柔らかさが伝わってくる。ただ柔らかいだけではなく、肌はきめ細かくそのハリの良さも逸品だ。
 加えて、女性特有の甘い香りが鼻孔をくすぐる。控えめに言って、最高のシチュエーション。

「……ぷはっ」

 長い長い口づけを終え、ようやく2人は顔を離す。途端、ミナトはその愛らしい顔をしかめてこちらに食って掛かってきた。

「いきなり何すんだオマエは!?」

「何って――キスだが?」

 可愛らしい容貌に似合わぬ口調で問い詰められるも、涼しい顔で返す。

「そゆこと聞いてんじゃねぇよ!! 部屋入っていきなり人のファーストキス奪うとはどういう了見なのか聞いてるんだ!!」

「ああ、そのことか」

 確かにアスヴェルは、宿として案内された少女の自室へ入るなり彼女を抱き寄せ、キスに及んだ。しかしこれには深い理由があるのだ。

「君と口づけする機会は、これまでに2度あった」

「……ま、まあ、そういうこともあった気がするな」

「そしてその2度とも、何らかの妨げにより未遂に終わる」

「状況が悪かったというかなんというか……」

 本編の第14話と第15話あたり参照。

「“2度あることは3度ある”とは君達の国のことわざだ。そこで私は、今度こそ確実を期すため一切の前振り無しに君との接吻に及んだ――と、こういうことだ」

「どういうことだよ!?」

 ここまで説明したというのに、ミナトは怒りが収まらないようだった。

「だいたい、君だって抵抗しなかっただろう?」

「…………それは、まあ」

 途端にトーンダウンする少女。これまでならいざ知らず、今のアスヴェルは諸事情あってLvが1まで下がっている。彼女が本気で嫌がれば、力づくで自分を押しのけることは容易なのだ。

「さて、お互いの合意が取れたところで」

「え? 今ので了承したことになるのか? どんだけ都合よく受け取ってんだオマエ?」

「改めてキスをしようじゃないか」

「人の話聞いてる?」

「キスしたくないのか?」

「……………………したい」

 こちらから目をそらしながらも、頬が紅潮していた。ミナト、陥落の瞬間である。
 ――そもそもさっきの口づけからして、彼女の方から舌を差し出してきていたのだが。

「では――」

「んっ」

 再度、彼女を抱き寄せた。くすぐったそうな声を漏れる。
 やや釣り目がかった、ぱっちりとした瞳がすぐそこに迫った。顔立ちの整った美貌が眼前に広がる。その光景を覗くだけで、アスヴェルの心は掻き立てられる。

「――ん、ふ」

 口と口を交わす。

「あっ――は、ふっ――ん、んん――チュッ」

 唇を触れ合わせ、吐息を混ぜ、互いに吸い付く。伝わってくる温もりに、多大な幸福感を湧き上がってきた。

「ん、チュッ――レロっ――レロレロッ――ん、ふぅっ――」

 どちらともなく舌を絡ませる。唾液が蕩け合い、口内を舐め合う。

「ん、ん、ん、ん、ん――――んっ」

 今度は、先程よりかは短めに2人は離れた。上気した頬に瞳を潤ませ、ミナトがたどたどしく言葉をこぼす。

「……なんか、手慣れてるのがムカつく」

「そんなことを言われても」

 その辺り、経験の差・・・・でしかない。藪蛇にしかならないので口にするようなことはしないが。
 代わりに腕を少女の胸へと静かに移動させる。

「あっ」

 気づいてピクッと身震いする少女。
 柔らかく、それでいて身の詰まった双丘がそこにあった。その膨らみを下から支えるように揉み上げる。

「あ――んっ」

 小さな吐息が漏れた。戸惑ったような――しかし抵抗する様子は見せない――顔のミナトが、こちらを覗き込んでくる。

「その――アスヴェル? こっから先もやる、のか?」

「無論だ」

 力強く返答。ここまで来たというのにここで終わらせる訳がない。据え膳食わぬは男の恥。千載一遇の好機を逃しては勇者の名折れである。

「で、でも、あの、オレ達ってまだ・・恋人同士ってわけでもないし――」

「ミナト」

 この期に及んで躊躇う少女を、そっと抱きしめる。

「そう深く考える必要はない。ここは“ゲームの中”なんだから」

「……へ?」

「“Divine Cradle”という仮想現実に過ぎない。今この場で何が起ころうと、現実の君には何の影響もない――そうだろう?」

「それは、まぁ……そう、かな?」

「ならば、もっと気軽に構えるんだ。ちょっと気持ちいいことするだけさと、そう考えるんだ」

「んー……?」

 煮え切らないミナトをベッド(実に都合よく部屋の真ん中に設置されていた)へと押し倒す。

「やっ――あぅっ!?」

 そして抵抗する間も与えず、少女の上に覆い被さりながら、その首筋へ舌を這わした。

「んっ――やだっ――くすぐった――くぅっ」

 ピクンッ、ピクンッと敏感に反応するミナトの肢体。その肌にはほんのりと汗が滲み、塩味を感じる。

「あっ――ふっ――う、んっ――」

 ひとしきり舐めまわったところで一旦口を離し、少女の目をじっと見つめる。

「――ミナト。不安なんだろう?」

「……え」

 その綺麗な瞳に動揺が走った。
 無理もない話だ。この年端もいかない少女が命懸けの戦いに臨んだのは、つい昨日のことなのだ。そこから解放された直後、また命の危機に瀕することになるとは。彼女にかかる重圧は尋常なものではないだろう。心が弱ってしまうのも当然である。

(明らかに普段と様子が違っていたからな……)

 本人は気づいていないのかもしれないが。そもそも今の状態からして、普段のミナトであればこれ程に無防備な姿は晒さなかったに違いない。
 ……女の子が弱っている隙を突いて関係を結ぼうとしているようにも見えるかもしれないが、そんなことはない(断言)。アスヴェルの行動は、あくまで少女を慮った上でのものなのである。いや本当に。

「今一時、全てを忘れさせてやる」

「ま、待って、そんな――――んっ」

 ミナトの口をこちらの口で覆い、言葉を封じる。三度目の接吻。既に馴染みすら覚える少女の口内を、舌でたっぷりと蹂躙していく。

「ふっ――ん、あっ――はぁ、うぅっ――」

 キスを交わしながら、手は彼女の胸元へ。2つの膨らみに被さる布地を、そっと捲りあげていく。

「あっ、やめ――」

 か細い力で抵抗する素振りを見せるも、まるで問題にならない。程なくして、少女の胸に実った2つの果実が、大気に晒されることとなった。

「……綺麗だ」

 思わず、そう呟く。
 ミナトの乳房はそれ程に美しい曲線を描いていた。先端には鮮やかな桃色の突起。加えて、仰向けに寝ているというのに形が崩れない程のハリも有している。男が思い描く理想のおっぱいの一つと言って過言ではないだろう。
 居ても立ってもいられず、アスヴェルは乳首に吸い付いた。

「んぁっ――あぅっ!?」

 ビクッと彼女の肢体が震えた。それに構わず、コリコリと固まった突起を舌の上で優しく転がしだす。

「あっ――あっ――あっ――そ、こ、変な、感じ――あぅっ」

 ミナトの口から自然と声が漏れる。
 さらにもう片方の膨らみに手を伸ばし、鷲掴みにした。掌が乳房の暖かく柔らかな感触に包まれる。その上、指に吸い付くようなモチモチとした触感で――触り心地は最高だ。

「うっ――あっ――んっ――は、あっ――」

 吐息に艶が混じる。乙女の敏感な身体は、早くも快感に身を委ねだした。そんな彼女の様子に気を良くし、アスヴェルは胸を責め続ける。ハリのある柔肉を指でぐにぐにと揉みしだいた。

「やっ――あっ――いやっ――ああっ」

 息が荒くなっていく。少女の瞳には微かに涙がたまり、身をくねらせながら感じ入る。初々しい反応がさらにこちらの興奮を助長させた。調子に乗って、舌先で乳首を突いたり、軽く甘噛みしてみたり。

「んっあっあっ――はぅっ!」

 こちらが弄るたび、面白いように反応を返してくれる少女。彼女の高揚と比例するように胸の突起もだんだんと膨らみだし、最初よりも大分ぷっくりとなっていた。自分の手によってミナトが快楽の渦に飲み込まれていることを実感し、何とも言えぬ達成感が心を満たす。

「も、もうっダメっ――こんなっ――こんなの――――」

 男を知らなかった肢体も大分ほぐれてきたようだ――と考えていた、次の瞬間である!

「――こんなのオレじゃねぇええええっ!!!」

「ほげぇーっ!!?」

 全身をバネのようにしならせて、ミナトが跳ね上がった。その反動でアスヴェルはベッドの外へと吹き飛ばされる。

「なんだ今の! どうしてオレが女みたいなか細い声出さなきゃなんねぇんだ!?」

「女みたいなっていうか、君は女の子だからね?」

 転げ落ちたついでに床にぶつけた頭を摩りながら、一応のツッコミを入れる。が、彼女は気にする風も無く。

「くそっ! 空気に流されちまった! あんな恥ずかし気に身悶えすんのはオレのキャラじゃねぇ!」

「あれはあれで良かったと思うのだけども」

「うっさい! ちょっと黙ってろ!」

 一喝すると、おもむろに少女は服を脱ぎだした。それも恥じらいなど欠片もない、勢い任せの豪快な脱衣。アスヴェルが呆気に取られている内に、産まれたままの姿へと変貌を遂げる。

「おしっ! ヤるぞアスヴェル!!」

 ベッドの上に仁王立ちし、こちらを見下ろしてくる。しっかり実ったおっぱいも、ぴったりと閉じた股間の筋も、蠱惑な丸みを帯びたお尻も、何もかもが丸見えである。だが彼女はそれを隠す素振りすら見せない。逆にこれでもかという程に見せつけてきた。

「前向きに開き直ったか――だがその意気や良し!」

 この心意気に応えねば男が廃る。アスヴェルもまたヤる気を燃やし、少女と応対するように立ち上がった。

「では続きと行こうか」

「いや待て。その前にオマエも全部脱げ」

「うん?」

 聞き返すも、ミナトは据わった目つきでこちらを睨み。

「オレだけ裸なんて不公平だろうが。ほら、さっさと脱げ。今度はオレが気持ちよくしてやる」

「それは願ったりかなったりだが――君、そういうことしたことあるの?」

「ねぇけど、男なんて適当に“棒”擦ってやれば気持ちよくなるんだろ?」

「……なんだか不安にさせるその口ぶり」

 “擦っている”イメージもミナトは手で表現しているのだが、些か以上に乱暴な有様だった。いつもならばともかく、Lvが初期化し弱体した状態でアスヴェルの“アスヴェルくん”はミナトの野性に耐えきれるのだろうか?
 ……そんな風に逡巡していると。

「煮え切らねえヤツだな! なんならオレが脱がしてやろうか!?」

「あーーーー!?」

 ヤケクソ感マシマシのミナトが、こちらの服をひん剥いてきた。強硬な手段に出られると今のアスヴェルは弱い。だってLv1なんだもの。

「さんざんデカい口叩いてくれたんだ、これで粗チンだったら大笑いして――」

 ズボンをずり下げられたところで、少女の動きが止まった。

「…………」

「どうした?」

 ミナトはじっとアスヴェルの股間を凝視している。

「…………」

「急に黙るなよ、怖いぞ?」

 たっぷりと十秒以上固まったところで、

「お疲れ様でしたー」

「ちょっと待てぃ!」

 笑顔で頭を下げてからそそくさと部屋を出ていこうとする少女を、慌てて引き留める。

「いきなり帰ろうとしないで欲しい! どうしちゃったんだミナト!?」

 すると彼女は一転して怒りをあらわにしつつ、アスヴェルのイチモツを指さし。

「うるせぇ! ふざけんのも大概にしろ!! なんだよそのデカいチンコは!! 半分くらいに削ってから出直してこい!!」

「何無茶なこと言ってるの!?」

 いきなりとんでもないことを言われた。
 どう考えてもふざけた発言をしているのは向こうなのだが、彼女の勢いは止まらない。

「いいか、常識で考えろ! こんなもん物理的に入る訳ねぇだろ!?」

「生物学的に入るはずなんだよ!!」

 まあ、“アスヴェルくん”が人より大きい自覚はあるが、無理のあるサイズではない――筈。

「いいや無理だね! それ挿れたらオレは死ぬね!」

「できるんだって! 大丈夫だよいけるいける!!」

「無理だ! 破裂する!!」

「人体の神秘を信じるんだ!!」

「信じられるか! ちくしょう、こっちが仕立てに出てりゃあ変なとこまでファンタジーな造りになりやがって! ここが現実なんだってことをもっと認識しろ!!」

「いやゲームの中なんだから現実じゃないんだけど!?」



 喧々囂々とやりあった挙句。



「……ほんっとーに大丈夫なんだろうな?」

 ベッドへ仰向けになったミナトが、ジト目で見つめてくる。

「ああ、安心しろ。私を信じてくれ」

 言いながら、アスヴェルは少女に太ももを抱えた。
 二人は今、互いに全裸となり向かい合っていた。本来であればとてもロマンティックな雰囲気が漂うところなのだが――

「いいか、絶対痛くすんなよ。約束だぞ」

「ああ、任せておけ」

 ――彼等の会話から、そのような艶は微塵も感じられない。
 散々に言い合いし、最終的に“そこまで言うならヤってみろ。但し痛かったらコロス”という妥協点に至ったのである。

「滅多なことすんじゃねぇぞ。オマエの“アスヴェルくん”が大変な目に遭うからな」

「分かってる分かってる」

 濡れ場とは程遠い空気感だが、アスヴェルはへこたれない。
 なぜなら彼は気づいていたからだ。こんなこと言いつつ、ミナトの股間から愛液が垂れていることを。そもそも彼女の顔からして、期待感かそれとも恥じらいからか、分かりやすく紅潮していたりもする。まったく、身体は正直なものである。
 故にアスヴェルの股間はもう準備万端であり――

(――まあ、いざ事が始まってしまえば、すぐ態度もほぐれるだろう)

 そんな風に軽く考えてすらいた。後は、いかにミナトへ苦痛を与えずに挿入するか、ということだが。

(……こういうのは、いっそのこと一気にいった方がいいと聞く)

 昔聞きかじった知識である。信憑性に怪しい部分はあるが、それについてあれこれ考えている余裕は無い。
 何故なら、この場は想い人が裸になって寝そべっているという状況だからだ。蠱惑の肢体が露わになっているのだ。
 はっきり言って今にも飛び掛かりたいのである。むしゃぶりつきたいのである。延々とハメ倒したいのである。

「いくぞ!」

 そんなわけでアスヴェルはガバッとミナトに覆いかぶさり――


「ぎぃやああああああああああっ!!!?」


 ――色気もへったくれもない少女の絶叫が部屋に響いた。



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