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第4話 クラスって、何?
【1】
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ミナトと出会ってから既に半日程経過した。アスヴェル達は遺跡から近い“ベイリア”という町に辿り着き、改めてこの大陸についての詳しい説明を受ける――はずだったのだが。
「あああぁああぁあああああ」
ホールに響く呻き声。ここはベイリアにある酒場の一つ。食堂も兼ねているこの場所を、ミナト達は拠点としているらしい。
「あぁぁぁあああああぁああああ」
不気味な音。他の客が、何事かと視線を向けてきている。逆に、目を合わせないようにしている者もいるが。
「ああああぁあぁあぁああああ」
呻きはなおも続く。同席しているミナトは、物凄く居心地悪そうだ。ハルは笑顔だが――なんだか他人のフリをしているようにも見える。
……ここまで説明すれば分かる通り、呻き声の主はアスヴェルである。何故呻いているのかと言えば――
「あああああああああ、美味いぃぃぃぃ、美味いよぉぉおおおおお」
――提供された料理に感激していたからだ。
「おいオマエいい加減にしろよ!? 周りから変な目で見られるだろ!?」
「いやしかしコレ本気で美味しいぞ!? 何だこれ――何だこれ!!」
いい加減本気でキレ気味になっているミナトに、アスヴェルは涙を溜めて(感激の涙である)答えた。
実際、酒場の料理は絶品なのだ。勇者という立場上、宮廷料理も食べたことのある彼だが、
(比べ物にならん!!)
あっさりとソレを一蹴した。
(このサラダのシャキシャキ感はなんだ!? こんな新鮮味を残して保管が可能なんか!? さらに、かかっているソースが野菜の味をさらに引き立てている!
それにスープのコク深さといったら! どんな方法を使えばこんな味が出る!?
肉の柔らかさ、ジューシーさも素晴らしい! これを味わった後では、これまでの人生で食べた肉料理は靴の底みたいなものだ!!)
本来であれば声に出して絶賛したいところなのだが、残念ながら現在アスヴェルの口は食事のために使用中だ。彼の手も休むことなく口へと料理を運んでいる。
「はあぁぁぁぁぁぁぁ――――美味い!!!」
一通り食事が終わり。
最終的に出たのは、何度も繰り返したその一言のみであった。しかし万感の想いを込めた言葉でもある。
「わはは! そんだけ感激してくれりゃ、作った甲斐があるってぇもんだ!」
「お、おお、ミスタ・サイゴウ!」
この料理を作ってくれた“シェフ”の登場に、アスヴェルは慌てて席を立つ。座ったまま出迎えるなどという無礼を働くわけにはいかない。
「いやー、言い食いっぷりじゃねぇか! 嬢ちゃんから話聞いた時は、もっとお高くとまってる奴かと思ったぜ!」
「はははは、この料理を前にしては、プライドの高い貴族であろうとも頭を下げるしかないだろう」
「嬉しい事言ってくれるねぇ!」
シェフが笑いながら、バンバンとこちらの背を叩いてくる。
このサイゴウという男、浅黒い肌にスキンヘッド、顎には髭を蓄え、その上筋骨隆々という容姿。山賊の頭領といっても通じるような見た目なのだが、この酒場“ウェストホーム”の店長兼料理人なのである。しかも彼の料理はアスヴェルがこれまでの人生で食べたどんな料理よりも美味だった。
(ハルといい彼といい、人は見かけに依らないというのは本当だな。今日だけで2つもその実例を見てしまった)
今後の人生、人を外見で差別するような真似はすまいと心に誓うアスヴェルである。
一方、そんな彼を傍らで見ていたミナトは軽く肩を竦めると、
「でも言っちゃなんだけど。この美味さはおやっさんの腕というより、化学調味料の勝利だよなぁ」
「おいおい嬢ちゃん。文句あんなら食べなくてもいいんだぞ?」
サイゴウはそんな彼女を軽く一睨み。ミナトは手を苦笑しながらパタパタと振って、
「ジョーダンだよ、ジョーダン。オレ、おやっさんの料理好きだぜ?
……“外”のは味気なくてさ。食った気がしないんだよな」
「またお前はそういう危ない発言を。どこで聞かれてるか分かったもんじゃないんだぞ?
それにほら、アレはアレで完璧に栄養が調整された、完全食じゃねぇかー」
「おやっさん、後半棒読みになってる」
仲良く談笑する店長と少女。聞いたところによるとこの2人、結構な古馴染みらしい。ミナトの父親とは友人同志なのだとか。
(近所の面倒見の良いおじさん、といったところか)
超一流の料理人な上に気さくな好人物とは、実にできた男だ。
――ミナトへ色目を使う素振りも全くないし(重要)。
と、一息ついたところで。
「そういえばミナト、君に聞きたいことがあるんだが」
「っ!? な、なんだ……?」
話しかけた途端、少女は顔を引きつらせてアスヴェルと距離をとった。
「何故急に後ずさる?」
「自分の胸に聞いてみろ」
「ふむ?」
思い返すも、心当たりはない。そもそも自分はまだミナトと会って半日程度しか経っていないのだ。彼女との思い出作りはこれからである。
「うん、頑張って一生に残る記憶を築き上げていこう」
「一生残るトラウマを刻まれそうだ……」
どうした訳か暗い顔をするミナト。
それはさておき。
「君の持っている武器について尋ねたかったんだ。それは、銃なのか?」
「お? なんだ、そっちのことか」
理由は分からないが、少女は安心した表情になる。腰のベルトから例の短筒を取り出すと、
「おう、間違いなくコレは銃だぜ。ラグセレス大陸にも銃ってあんの?」
「あるにはあるが、そんな小型では無いな。もっと銃身は長いし、あんなに弾を連射できない。命中精度も悪い」
そもそも生産できる工房も限られており、非常に希少な存在だ。それを専用に扱う者となれば、さらに少ない。
「ふーん――じゃ、良くてマスケット銃ってとこか。<銃士>の新武器は望み薄そうだなぁ」
「銃士?」
残念そうに肩を竦めるミナトに対し、聞きなれない単語を聞き返す。
「ああ、<銃士>ってのはオレの職業だよ。こういう銃が扱えるようになんの」
言って、彼女はくるくると短筒――もとい、銃をくるくると器用に回した。
「あああぁああぁあああああ」
ホールに響く呻き声。ここはベイリアにある酒場の一つ。食堂も兼ねているこの場所を、ミナト達は拠点としているらしい。
「あぁぁぁあああああぁああああ」
不気味な音。他の客が、何事かと視線を向けてきている。逆に、目を合わせないようにしている者もいるが。
「ああああぁあぁあぁああああ」
呻きはなおも続く。同席しているミナトは、物凄く居心地悪そうだ。ハルは笑顔だが――なんだか他人のフリをしているようにも見える。
……ここまで説明すれば分かる通り、呻き声の主はアスヴェルである。何故呻いているのかと言えば――
「あああああああああ、美味いぃぃぃぃ、美味いよぉぉおおおおお」
――提供された料理に感激していたからだ。
「おいオマエいい加減にしろよ!? 周りから変な目で見られるだろ!?」
「いやしかしコレ本気で美味しいぞ!? 何だこれ――何だこれ!!」
いい加減本気でキレ気味になっているミナトに、アスヴェルは涙を溜めて(感激の涙である)答えた。
実際、酒場の料理は絶品なのだ。勇者という立場上、宮廷料理も食べたことのある彼だが、
(比べ物にならん!!)
あっさりとソレを一蹴した。
(このサラダのシャキシャキ感はなんだ!? こんな新鮮味を残して保管が可能なんか!? さらに、かかっているソースが野菜の味をさらに引き立てている!
それにスープのコク深さといったら! どんな方法を使えばこんな味が出る!?
肉の柔らかさ、ジューシーさも素晴らしい! これを味わった後では、これまでの人生で食べた肉料理は靴の底みたいなものだ!!)
本来であれば声に出して絶賛したいところなのだが、残念ながら現在アスヴェルの口は食事のために使用中だ。彼の手も休むことなく口へと料理を運んでいる。
「はあぁぁぁぁぁぁぁ――――美味い!!!」
一通り食事が終わり。
最終的に出たのは、何度も繰り返したその一言のみであった。しかし万感の想いを込めた言葉でもある。
「わはは! そんだけ感激してくれりゃ、作った甲斐があるってぇもんだ!」
「お、おお、ミスタ・サイゴウ!」
この料理を作ってくれた“シェフ”の登場に、アスヴェルは慌てて席を立つ。座ったまま出迎えるなどという無礼を働くわけにはいかない。
「いやー、言い食いっぷりじゃねぇか! 嬢ちゃんから話聞いた時は、もっとお高くとまってる奴かと思ったぜ!」
「はははは、この料理を前にしては、プライドの高い貴族であろうとも頭を下げるしかないだろう」
「嬉しい事言ってくれるねぇ!」
シェフが笑いながら、バンバンとこちらの背を叩いてくる。
このサイゴウという男、浅黒い肌にスキンヘッド、顎には髭を蓄え、その上筋骨隆々という容姿。山賊の頭領といっても通じるような見た目なのだが、この酒場“ウェストホーム”の店長兼料理人なのである。しかも彼の料理はアスヴェルがこれまでの人生で食べたどんな料理よりも美味だった。
(ハルといい彼といい、人は見かけに依らないというのは本当だな。今日だけで2つもその実例を見てしまった)
今後の人生、人を外見で差別するような真似はすまいと心に誓うアスヴェルである。
一方、そんな彼を傍らで見ていたミナトは軽く肩を竦めると、
「でも言っちゃなんだけど。この美味さはおやっさんの腕というより、化学調味料の勝利だよなぁ」
「おいおい嬢ちゃん。文句あんなら食べなくてもいいんだぞ?」
サイゴウはそんな彼女を軽く一睨み。ミナトは手を苦笑しながらパタパタと振って、
「ジョーダンだよ、ジョーダン。オレ、おやっさんの料理好きだぜ?
……“外”のは味気なくてさ。食った気がしないんだよな」
「またお前はそういう危ない発言を。どこで聞かれてるか分かったもんじゃないんだぞ?
それにほら、アレはアレで完璧に栄養が調整された、完全食じゃねぇかー」
「おやっさん、後半棒読みになってる」
仲良く談笑する店長と少女。聞いたところによるとこの2人、結構な古馴染みらしい。ミナトの父親とは友人同志なのだとか。
(近所の面倒見の良いおじさん、といったところか)
超一流の料理人な上に気さくな好人物とは、実にできた男だ。
――ミナトへ色目を使う素振りも全くないし(重要)。
と、一息ついたところで。
「そういえばミナト、君に聞きたいことがあるんだが」
「っ!? な、なんだ……?」
話しかけた途端、少女は顔を引きつらせてアスヴェルと距離をとった。
「何故急に後ずさる?」
「自分の胸に聞いてみろ」
「ふむ?」
思い返すも、心当たりはない。そもそも自分はまだミナトと会って半日程度しか経っていないのだ。彼女との思い出作りはこれからである。
「うん、頑張って一生に残る記憶を築き上げていこう」
「一生残るトラウマを刻まれそうだ……」
どうした訳か暗い顔をするミナト。
それはさておき。
「君の持っている武器について尋ねたかったんだ。それは、銃なのか?」
「お? なんだ、そっちのことか」
理由は分からないが、少女は安心した表情になる。腰のベルトから例の短筒を取り出すと、
「おう、間違いなくコレは銃だぜ。ラグセレス大陸にも銃ってあんの?」
「あるにはあるが、そんな小型では無いな。もっと銃身は長いし、あんなに弾を連射できない。命中精度も悪い」
そもそも生産できる工房も限られており、非常に希少な存在だ。それを専用に扱う者となれば、さらに少ない。
「ふーん――じゃ、良くてマスケット銃ってとこか。<銃士>の新武器は望み薄そうだなぁ」
「銃士?」
残念そうに肩を竦めるミナトに対し、聞きなれない単語を聞き返す。
「ああ、<銃士>ってのはオレの職業だよ。こういう銃が扱えるようになんの」
言って、彼女はくるくると短筒――もとい、銃をくるくると器用に回した。
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