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第2章 後編

第七話 ~北島永久の逆襲・体育祭では彼女の本気を味わいました~ ⑤

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 第七話 ~北島永久の逆襲・体育祭では彼女の本気を味わいました~ ⑤





 体育祭の準備と確認を終え、グラウンドには次第に生徒たちが増えてきた。

 そして、開会の時間になると学年とクラスごとに別れて整列をした。

 俺たちは、生徒会役員側に並んでいた。

「ふふふ。なかなか圧巻な眺めですね」

 生徒たちの前に居る俺と永久さんと桐崎さん。

 見事に並んだ生徒たちを見ながら、永久さんが俺に耳打ちをしてきた。

「そうだね。でも、桐崎先輩からの眺めが一番圧巻だろうね」

 てか、桐崎先輩の隣に寄り添うようにして立っている黒瀬先輩には誰もツッコミを入れていなかった。

「そうですね。ですが、来年は霧都くんがあの場所に立つことになりますからね。頑張ってくださいね」

 そうだな。順当に行けば、来年の生徒会長は俺になると思う。
 となれば、あの場に立つのは俺なんだよな。

 とりあえず、桐崎先輩の言葉を聴きながら、参考にするかな。

 なんて思った俺だけど、この先輩の発言がなんの参考にもならないことなんて、ちょっと考えればわかるって。

 なんで気が付かなかったんだろうか……


『皆さんおはようございます!!本日は天候にも恵まれ、絶好の運動日和となりました!!』

『この海皇高校体育祭は、今年で節目の五十回を迎えることになりました。昨今の環境では、体育祭の開催が危ぶまれることもありましたが、こうして伝統をしっかりと受け継ぐことが出来たのは、偏(ひとえ)に皆さんの努力のお陰です!!ありがとうございます』

 ……まともな始まりだな。
 ……あの先輩らしくないな。

 なんて思っていたが、この先輩がまともなスピーチなんかするはずが無かった。

『さて、二年生と三年生の生徒たちには記憶に新しいかと思いますが、前年の生徒会長の蒼井空さんがこの場で言った言葉があります。『今日は保健委員だけは暇にさせてあげてください』と。昨年の保健委員の仕事は一件だけでした。これは過去最小です』

『ですが!!この一件は、この俺が盲腸でぶっ倒れたせいでした!!これは保健委員だけでなく、救急車まで呼ぶという事態になってしまいました!!大変申し訳ございません!!』

 この発言で、二年生と三年生は笑っていた。
 一年生は苦笑いを浮かべていた。

『皆さん!!今年は保健委員の仕事を0件を目標に、安全に配慮をしながらも全力で、怪我のないように体育祭を行っていきましょう!!』

 先輩はそう締めくくると、壇上を降りてこちらにやって来た。

「お疲れ様でした。来年のためのなんの参考にもならない挨拶をありがとうございます」

 俺が呆れたような目で先輩を見ながらそう言う。

「ははは。まぁお前は俺と違って真面目な人間だからな。キチンとした挨拶をすればいいと思うぞ」
「そうですね、ウケを狙っても滑るだけなので辞めておきますよ」


 そして、そんな会話をした後に、俺は放送席へと足を運んだ。





「今日一日よろしくお願いします、三郷先輩」
「こちらこそよろしくね、桜井くん」

 俺がそう言って放送席の三郷先輩に挨拶をすると、彼女も俺に返事を返してくれた。

「あまり緊張はしないで、いつもの感じで喋ってくれれば良いからね」
「わかりました。何かあったら三郷先輩がフォローしてくれるって思ってますから」

「あはは!!そうだね、先輩として後輩のミスはカバーするような器を見せてあげないとね!!」

 そんなやり取りをして、三郷先輩がマイクで話を始めた。




『皆さんおはようございます!!こちらは放送席になります!!体育祭を盛り上げるために、実況を務めることになりました、放送部の部長を務めております三郷です!!今日一日よろしくお願いします!!』

 三郷先輩の言葉にグラウンドからは歓声と拍手が巻き起こった。

  この先輩は人気があるからなぁ……

『そして!!この私の相方として弁を振るってくれるのは、ハーレム王の後継者!!……おっと失礼しました。次期生徒会長の桜井霧都くんです!!桜井くん、挨拶をどうぞ!!』

 ……はぁ。ハーレム王の後継者なんて言う不名誉な二つ名は欲しくないなぁ……

『ツッコミを入れると時間が足りなくなりそうなので、スルーします。……皆さんおはようございます!!生徒会の庶務をしています、桜井霧都です!!至らない点が多く、沢山迷惑をかけるかと思いますが、どうか暖かい目で見守っていただけると嬉しいです!!ですが、全力で頑張りますので応援のほどよろしくお願いします!!』

 年上の女性を中心に拍手と声援が貰えた。
『桜井くんを応援する会』というものがあるようだ……

 あ、ありがたいんだけど……永久さんからの視線が痛い……


 こうして第五十回の海皇高校体育祭が始まりを告げた。

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