89 / 292
第1章
最終話 ~気持ちの伝え方・俺は藤崎朱里を世界で一番愛している~ 中編
しおりを挟む
最終話 中編
雫に気合いを入れられた俺は、電車では無く、愛車のポチであの公園に向かっていた。
理由はひとつだけ。まぁ、でもそれは全てが上手くいったら。
早朝の風が雫にはたかれ、熱を持った頬を撫でていく。
あれは効いた、とても痛かった。心に響いた一撃だった。
「また、ちゃんと。雫におにぃと呼ばれるためにも、朱里さんを救うためにも、そして何より、俺自身のために、男をみせろよ、桐崎悠斗!!」
車通りの少ない道路を走り、俺は約束の公園へと愛車を走らせた。
時刻は五時五十分
約束の時間の十分前に、俺は公園に到着した。
ベンチには、既に朱里さんが座っていた。
俺は公園の入口に愛車を止めてヘルメットを脱ぎ、鍵をかけて、彼女の座るベンチへと歩く。
「……おはよう、朱里さん。待たせてごめん」
俺のその言葉に、朱里さんが顔を上げる。
「ううん。そんなに待ってな……ふふ、どうしたの?その顔」
朱里さんは、俺の頬を見て、小さく笑う。
理由はどうあれ、こうして笑顔を見せてくれるなら、この紅葉にも感謝だ。
「雫に気合いを入れてもらった。とても痛かったよ」
「そっか」
俺は朱里さんの隣に腰を下ろす。
「あのね、悠斗くん。私から話してもいい?」
俺に向かってそう言う朱里さん。
「わかった」
俺はそう言って頷いた。
朱里さんは小さく、ありがとう。と言うと、こっちを見た。
「ねぇ、悠斗くん。私が朝練をしてる時、黒瀬さんと毎朝読書してたのは、約束とかしてたの?」
「してないよ。初日はたまたまだったと思う。俺が読んでるライトノベルに、黒瀬さんが興味を持ってたから、純粋な布教の心で進めてた。その後は、黒瀬さんが狙って来てたとは思うけど。約束をしてたとか、そういうのはないよ」
「……そうか。なら仕方ないね」
じゃあさ。と続ける。
「昨日の夜。黒瀬さんと一緒に帰ってたよね。あれは何で?」
「黒瀬さんは俺が働いている店を知っててね。だいたい二十時頃に夕飯を買いに来るんだ。でも昨日は俺があがる直前に来てね。暗いし、危ないから送ることにした。これは俺のミスなんだけど、本当は黒瀬さんを送る話を朱里さんにするはずだったんだ。でも。その日仕事で少しミスをしてね。それをカバーしてたらメッセージを忘れてしまったんだ」
本当にごめん。
も俺は頭を下げた。
「ううん。いいよ。多分そうだと思ってたから」
朱里さんはそう言うと、寂しそうに笑った。
そして、
「悠斗くんは……優しいね」
と言った。
「私は……優しい悠斗くんが好き。それをさ……私のわがままで無くしちゃうのはさ、違うって思ったんだ……」
「朱里さん……」
朱里さんは俺の目を見て笑う。
「だからさ、悠斗くんはそのままで居て?私が……それを……我慢……」
そこまで言ったところで、朱里さんの頬を、涙が一筋、落ちた。
「あ、あれ……やだ、どうして……こんな、こんなはずじゃないのに……」
朱里さんは涙を拭うが、止まらない……
「やだ、やだよ……私、わがままな女じゃないよ?許してあげる女の子だよ……?だから、嫌いにならないで……っ!!そう……言いたかった……だけなのに!!」
これじゃあ悠斗くんに嫌われちゃう……っ!!
俺は、一体何をしていたんだ……
こんなにも彼女を傷つけておきながら、なぜ今までのうのうと生きてこれた……
何故。彼女が朝練に向かった時に、教室に行った?
共に過ごすつもりなら、体育館に応援に行ったって良かったじゃないか。
昨日の送る方法だって、金に糸目をつけなければタクシーを呼んでも良かった。
なにを、なにをしてるんだ、桐崎悠斗!!
伝えなければならない。
彼女に。この、誰よりも優しくて、思いやりがあって、俺を好きでいてくれる、藤崎朱里さんに。
何が振られるかもしれないだ!!
こんなにも愛されているのに!!
俺の気持ちを全て、全て、全て、何も余すことなく伝えなければならない。
……どうすればいい。
言葉では足りない……
ごめん。なんて言葉では足りない。
好きだ。なんて言葉では示しきれない。
……そして、俺は決心した。
殴られるかもしれない。
嫌われるかもしれない。
もしかしたら、これが原因で……別れを告げられるかも知らない。
他人から見たら最低の行為かも知らない。
でも、今の俺が出来る、気持ちを伝える手段は、これしか無かった。
「『朱里』」
俺は彼女の名前を呼ぶ。
「……え?悠斗くん……」
俺は、彼女の身体を抱きしめる。
その身体はとても小さく、そして冷たかった。
その身体を抱きしめながら言う。
「俺は、桐崎悠斗は、藤崎朱里を世界で一番愛している……」
そう言って、俺は、彼女の唇に、自分の唇を重ね合わせた。
雫に気合いを入れられた俺は、電車では無く、愛車のポチであの公園に向かっていた。
理由はひとつだけ。まぁ、でもそれは全てが上手くいったら。
早朝の風が雫にはたかれ、熱を持った頬を撫でていく。
あれは効いた、とても痛かった。心に響いた一撃だった。
「また、ちゃんと。雫におにぃと呼ばれるためにも、朱里さんを救うためにも、そして何より、俺自身のために、男をみせろよ、桐崎悠斗!!」
車通りの少ない道路を走り、俺は約束の公園へと愛車を走らせた。
時刻は五時五十分
約束の時間の十分前に、俺は公園に到着した。
ベンチには、既に朱里さんが座っていた。
俺は公園の入口に愛車を止めてヘルメットを脱ぎ、鍵をかけて、彼女の座るベンチへと歩く。
「……おはよう、朱里さん。待たせてごめん」
俺のその言葉に、朱里さんが顔を上げる。
「ううん。そんなに待ってな……ふふ、どうしたの?その顔」
朱里さんは、俺の頬を見て、小さく笑う。
理由はどうあれ、こうして笑顔を見せてくれるなら、この紅葉にも感謝だ。
「雫に気合いを入れてもらった。とても痛かったよ」
「そっか」
俺は朱里さんの隣に腰を下ろす。
「あのね、悠斗くん。私から話してもいい?」
俺に向かってそう言う朱里さん。
「わかった」
俺はそう言って頷いた。
朱里さんは小さく、ありがとう。と言うと、こっちを見た。
「ねぇ、悠斗くん。私が朝練をしてる時、黒瀬さんと毎朝読書してたのは、約束とかしてたの?」
「してないよ。初日はたまたまだったと思う。俺が読んでるライトノベルに、黒瀬さんが興味を持ってたから、純粋な布教の心で進めてた。その後は、黒瀬さんが狙って来てたとは思うけど。約束をしてたとか、そういうのはないよ」
「……そうか。なら仕方ないね」
じゃあさ。と続ける。
「昨日の夜。黒瀬さんと一緒に帰ってたよね。あれは何で?」
「黒瀬さんは俺が働いている店を知っててね。だいたい二十時頃に夕飯を買いに来るんだ。でも昨日は俺があがる直前に来てね。暗いし、危ないから送ることにした。これは俺のミスなんだけど、本当は黒瀬さんを送る話を朱里さんにするはずだったんだ。でも。その日仕事で少しミスをしてね。それをカバーしてたらメッセージを忘れてしまったんだ」
本当にごめん。
も俺は頭を下げた。
「ううん。いいよ。多分そうだと思ってたから」
朱里さんはそう言うと、寂しそうに笑った。
そして、
「悠斗くんは……優しいね」
と言った。
「私は……優しい悠斗くんが好き。それをさ……私のわがままで無くしちゃうのはさ、違うって思ったんだ……」
「朱里さん……」
朱里さんは俺の目を見て笑う。
「だからさ、悠斗くんはそのままで居て?私が……それを……我慢……」
そこまで言ったところで、朱里さんの頬を、涙が一筋、落ちた。
「あ、あれ……やだ、どうして……こんな、こんなはずじゃないのに……」
朱里さんは涙を拭うが、止まらない……
「やだ、やだよ……私、わがままな女じゃないよ?許してあげる女の子だよ……?だから、嫌いにならないで……っ!!そう……言いたかった……だけなのに!!」
これじゃあ悠斗くんに嫌われちゃう……っ!!
俺は、一体何をしていたんだ……
こんなにも彼女を傷つけておきながら、なぜ今までのうのうと生きてこれた……
何故。彼女が朝練に向かった時に、教室に行った?
共に過ごすつもりなら、体育館に応援に行ったって良かったじゃないか。
昨日の送る方法だって、金に糸目をつけなければタクシーを呼んでも良かった。
なにを、なにをしてるんだ、桐崎悠斗!!
伝えなければならない。
彼女に。この、誰よりも優しくて、思いやりがあって、俺を好きでいてくれる、藤崎朱里さんに。
何が振られるかもしれないだ!!
こんなにも愛されているのに!!
俺の気持ちを全て、全て、全て、何も余すことなく伝えなければならない。
……どうすればいい。
言葉では足りない……
ごめん。なんて言葉では足りない。
好きだ。なんて言葉では示しきれない。
……そして、俺は決心した。
殴られるかもしれない。
嫌われるかもしれない。
もしかしたら、これが原因で……別れを告げられるかも知らない。
他人から見たら最低の行為かも知らない。
でも、今の俺が出来る、気持ちを伝える手段は、これしか無かった。
「『朱里』」
俺は彼女の名前を呼ぶ。
「……え?悠斗くん……」
俺は、彼女の身体を抱きしめる。
その身体はとても小さく、そして冷たかった。
その身体を抱きしめながら言う。
「俺は、桐崎悠斗は、藤崎朱里を世界で一番愛している……」
そう言って、俺は、彼女の唇に、自分の唇を重ね合わせた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
俺をフッた女子に拉致されて、逃げ場のない同棲生活が始まりました
ちくわ食べます
恋愛
大学のサークル飲み会。
意を決して想いを告げた相手は、学内でも有名な人気女子・一ノ瀬さくら。
しかし返ってきたのは――
「今はちょっと……」という、曖昧な言葉だった。
完全にフラれたと思い込んで落ち込む俺。
その3日後――なぜか自分のアパートに入れなくなっていた。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる