88 / 292
第1章
最終話 ~気持ちの伝え方・俺は藤崎朱里を世界で一番愛している~ 前編
しおりを挟む
最終話 前編
「なかなかのイケメンじゃないか。桐崎悠斗」
俺は鏡に向かってそう呟いた。
朝四時半。俺は死んだような目で洗面台の前に立っていた。
一分たりとも、寝ることなんて出来なかった。
彼女が居るのにほかの女に現(うつつ)を抜かして、いい身分だな。
俺が歯を磨いていると、この時間に起きてくるのか、雫が声をかけてきた。
「……おにぃ、早いならひとこと言ってよぉ」
恨めしそうなその声に俺は笑う。
「ごめんごめん……」
振り向いた俺の顔を見た雫が、ギョッとしたような表情をする。
「おにぃ……何その顔……何があったの?」
眠気が吹っ飛んだような顔で、雫が聞いてきた。
俺は、雫に全ての事情を話した。
黒瀬さんのこと。昨日のこと。呼び出されたこと。
全部、全部、全部……
そして、
「そういう訳だからさ。ごめんな、雫……俺、振られるかも知らな……」
「このくそバカやろうがあああああああああぁぁぁ!!!!!!!」
バチーン!!
本気で放たれた雫のビンタが、俺の顔を叩いた。
「……っ!!??」
「ばか!!ばかばか!!なんでそんな事言うの!!」
「雫……」
雫は、泣いていた。
「自分の気持ちも伝えないで!!勝手に別れるとか決めつけて!!そんなのただの逃げだよ!!なにやってんだよあんたは!!全然かっこよくない!!あんたなんかおにぃって呼んであげない!!だれよあんた!!知らない人だよ!!」
「雫……」
「私の知ってるおにぃは!!優しくて!!かっこよくて!!誰よりも誠実で!!自分の気持ちに正直で!!そして何よりも!!」
本気で好きになった人に!!どこまでも頑張れる人だろ!!
「……っ!!」
「あんたは何を頑張った!!??まだ何も頑張ってない!!何も伝えてない!!それなのに!!勝手に朱里ちゃんの気持ちを決めつけて!!勝手に逃げてる!!そんな弱虫!!おにぃじゃない!!」
「逃げるな!!自分の気持ちをしっかり相手に伝えてこい!!
今一番辛いのはだれ!!??
朱里ちゃんだよ!!
だって、あんたの気持ちがわからないから!!
信じられてないから!!
その不安な気持ちを取り除いてあげられるのは!!」
あんたしか居ないでしょ!!
「……!!!!」
「それなのに!!こんなところで!!ウジウジウジウジ!!なにしてんのよ!!この馬鹿野郎!!」
雫はそこまで言うと、肩で息をしていた。
「ごめん……雫」
「……あなたは誰ですか?知らない人ですか?勝手に他人の家にあがりこんで、人を名前で呼ばないでください」
雫にこんなことを言われるまで、俺は何をしていたんだ……
「俺は桐崎悠斗。君のお兄さんで、藤崎朱里さんを世界で一番愛している……一人の大馬鹿野郎だよ」
雫は俺のその言葉を聞いて、笑う。
「少しはまともな顔になったじゃん」
「あぁ、ありがとう。雫」
「あ、お兄さんを自称する人。勝手に名前で呼ばないでください」
「……え?」
キョトンとする俺に、雫が告げる。
「私の兄には、藤崎朱里さんっていうとても素敵な女性が彼女で居るんです。その人と一緒にこの家に来るまで、あなたを私の兄とは認めません」
「……はは、そうか」
「ええ、ですから」
ちゃんと仲直りして、家に連れて来てくれたら、お兄さんって認めてあげる。
雫はそう言った。
「そうか」
「そうだよ。自称お兄さん」
時計を見る。五時少し前。今から行けば六時には向こうにつける。
鏡を見る。俺の頬には真っ赤な紅葉が咲いていた。
その姿を鏡で見た俺は呟く。
「なかなかのイケメンじゃないか。桐崎悠斗」
雫に入れられた気合いが、身体を満たしている。
そうだ。俺はまだ何も、彼女に伝えてない。
俺の気持ちを、謝罪と愛を、何も伝えてない。
それなのに、何を勝手にわかって気でいて、諦めているんだ、桐崎悠斗!!
お前は、高嶺の花過ぎる藤崎朱里と釣り合うために、半年以上努力してきたんだろ!!
だったらその想いを!!この一日に!!全て込めろ!!
俺はカバンを掴み、玄関へも向かう。
その後ろを雫がついてくる。
そして、革靴を履いて、扉を開ける。
外は快晴。良い天気だ。
「いってきます」
そう言って外に出る。
閉まった扉の向こうから、
頑張ってね、おにぃ
と聞こえてきた気がした。
あぁ、頑張るよ。
努力する。
好きな人のためにどこまでも頑張れる。
それが、俺!!
桐崎悠斗の唯一!!俺が!!俺自身が!!
認めてる長所なんだから!!
「なかなかのイケメンじゃないか。桐崎悠斗」
俺は鏡に向かってそう呟いた。
朝四時半。俺は死んだような目で洗面台の前に立っていた。
一分たりとも、寝ることなんて出来なかった。
彼女が居るのにほかの女に現(うつつ)を抜かして、いい身分だな。
俺が歯を磨いていると、この時間に起きてくるのか、雫が声をかけてきた。
「……おにぃ、早いならひとこと言ってよぉ」
恨めしそうなその声に俺は笑う。
「ごめんごめん……」
振り向いた俺の顔を見た雫が、ギョッとしたような表情をする。
「おにぃ……何その顔……何があったの?」
眠気が吹っ飛んだような顔で、雫が聞いてきた。
俺は、雫に全ての事情を話した。
黒瀬さんのこと。昨日のこと。呼び出されたこと。
全部、全部、全部……
そして、
「そういう訳だからさ。ごめんな、雫……俺、振られるかも知らな……」
「このくそバカやろうがあああああああああぁぁぁ!!!!!!!」
バチーン!!
本気で放たれた雫のビンタが、俺の顔を叩いた。
「……っ!!??」
「ばか!!ばかばか!!なんでそんな事言うの!!」
「雫……」
雫は、泣いていた。
「自分の気持ちも伝えないで!!勝手に別れるとか決めつけて!!そんなのただの逃げだよ!!なにやってんだよあんたは!!全然かっこよくない!!あんたなんかおにぃって呼んであげない!!だれよあんた!!知らない人だよ!!」
「雫……」
「私の知ってるおにぃは!!優しくて!!かっこよくて!!誰よりも誠実で!!自分の気持ちに正直で!!そして何よりも!!」
本気で好きになった人に!!どこまでも頑張れる人だろ!!
「……っ!!」
「あんたは何を頑張った!!??まだ何も頑張ってない!!何も伝えてない!!それなのに!!勝手に朱里ちゃんの気持ちを決めつけて!!勝手に逃げてる!!そんな弱虫!!おにぃじゃない!!」
「逃げるな!!自分の気持ちをしっかり相手に伝えてこい!!
今一番辛いのはだれ!!??
朱里ちゃんだよ!!
だって、あんたの気持ちがわからないから!!
信じられてないから!!
その不安な気持ちを取り除いてあげられるのは!!」
あんたしか居ないでしょ!!
「……!!!!」
「それなのに!!こんなところで!!ウジウジウジウジ!!なにしてんのよ!!この馬鹿野郎!!」
雫はそこまで言うと、肩で息をしていた。
「ごめん……雫」
「……あなたは誰ですか?知らない人ですか?勝手に他人の家にあがりこんで、人を名前で呼ばないでください」
雫にこんなことを言われるまで、俺は何をしていたんだ……
「俺は桐崎悠斗。君のお兄さんで、藤崎朱里さんを世界で一番愛している……一人の大馬鹿野郎だよ」
雫は俺のその言葉を聞いて、笑う。
「少しはまともな顔になったじゃん」
「あぁ、ありがとう。雫」
「あ、お兄さんを自称する人。勝手に名前で呼ばないでください」
「……え?」
キョトンとする俺に、雫が告げる。
「私の兄には、藤崎朱里さんっていうとても素敵な女性が彼女で居るんです。その人と一緒にこの家に来るまで、あなたを私の兄とは認めません」
「……はは、そうか」
「ええ、ですから」
ちゃんと仲直りして、家に連れて来てくれたら、お兄さんって認めてあげる。
雫はそう言った。
「そうか」
「そうだよ。自称お兄さん」
時計を見る。五時少し前。今から行けば六時には向こうにつける。
鏡を見る。俺の頬には真っ赤な紅葉が咲いていた。
その姿を鏡で見た俺は呟く。
「なかなかのイケメンじゃないか。桐崎悠斗」
雫に入れられた気合いが、身体を満たしている。
そうだ。俺はまだ何も、彼女に伝えてない。
俺の気持ちを、謝罪と愛を、何も伝えてない。
それなのに、何を勝手にわかって気でいて、諦めているんだ、桐崎悠斗!!
お前は、高嶺の花過ぎる藤崎朱里と釣り合うために、半年以上努力してきたんだろ!!
だったらその想いを!!この一日に!!全て込めろ!!
俺はカバンを掴み、玄関へも向かう。
その後ろを雫がついてくる。
そして、革靴を履いて、扉を開ける。
外は快晴。良い天気だ。
「いってきます」
そう言って外に出る。
閉まった扉の向こうから、
頑張ってね、おにぃ
と聞こえてきた気がした。
あぁ、頑張るよ。
努力する。
好きな人のためにどこまでも頑張れる。
それが、俺!!
桐崎悠斗の唯一!!俺が!!俺自身が!!
認めてる長所なんだから!!
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
再婚相手の連れ子は、僕が恋したレンタル彼女。――完璧な義妹は、深夜の自室で「練習」を強いてくる
まさき
恋愛
「初めまして、お兄さん。これからよろしくお願いしますね」
父の再婚によって現れた義理の妹・水瀬 凛(みなせ りん)。
清楚なワンピースを纏い、非の打ち所がない笑顔で挨拶をする彼女を見て、僕は息が止まるかと思った。
なぜなら彼女は、僕が貯金を叩いて一度だけレンタルし、その圧倒的なプロ意識と可憐さに――本気で恋をしてしまった人気No.1レンタル彼女だったから。
学校では誰もが憧れる高嶺の花。
家では親も感心するほど「理想の妹」を演じる彼女。
しかし、二人きりになった深夜のキッチンで、彼女は冷たい瞳で僕を射抜く。
「……私の仕事のこと、親に言ったらタダじゃおかないから」
秘密を共有したことで始まった、一つ屋根の下の奇妙な生活。
彼女は「さらなるスキルアップ」を名目に、僕の部屋を訪れるようになる。
「ねえ、もっと本気で抱きしめて。……そんなんじゃ、次のデートの練習にならないでしょ?」
これは、仕事(レンタル)か、演技(家族)か、それとも――。
完璧すぎる義妹に翻弄され、理性が溶けていく10日間の物語。
『著者より』
もしこの話が合えば、マイページに他の作品も置いてあります。
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/658724858
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる