精霊様と魔法使い~強奪チートで妖精キングダム~

くろげブタ

文字の大きさ
29 / 43

28.レベルアップ

しおりを挟む
 すでに時刻は深夜。

 今から村まで戻るには難しい時刻。
 今晩は山中で夜を過ごすことにする。

「アーウー……アタシが見張ってアゲルワヨ」

 ミーシャはアンデッド。
 睡眠を必要としないのだから、夜の番に最適。

「おいらも夜更かし得意だぞー」

 ……こいつはただの駄目な奴だ。
 早寝早起きが健康の秘訣だというのに。
 早死にしてもしらないぞ?

 とにかく2人に見張りを任せて、俺たちは眠りについた。

 程なくして、夜が明ける。

 辺りに散らばるのは、獣の山。アンデッドの山。

「ぐーぐー……」

 そして、予想通り途中で寝落ちしたであろう妖精さん。
 まあ、元から当てにはしていない。

「ミーシャちゃん大丈夫? 怪我してない?」

「アーウー。カイチョウよ。アンデッドも悪くないワね」

 ミーシャはいうなればフレッシュゾンビ。
 新鮮なうちにゾンビになったのが幸いしたのだろう。
 病的なまでに青白い顔色。
 胸に開いた大穴を除けば 外見はさほど人間と変わらない。

────────────────────────────────────
名前:アンデッドミーシャ+妖精さん

LV:20  ↑5
体力:400 ↑100
魔力:550 ↑50

スキル:
 ひっかき:F NEW
 かみつき:F NEW
 肉食:  F NEW
────────────────────────────────────

 お?
 おおお?
 レベルだと!?

 昨日は気づかなかったが、ミーシャの能力にレベルが存在した。
 しかもレベルアップしている。

 昨晩。夜中の間。
 モンスターと戦ったことでレベルが上がったのだろうが……

 問題は、俺には存在しないレベルが、ミーシャには存在する。
 そのことだ。

 ──となれば、答えは簡単。

 異世界の人間には、レベルが存在する。
 地球人である俺には、レベルは存在しない。

 そういうことか。

 俺はあらためて精霊アイでアリサを確認する。

────────────────────────────────────
名前:アリサ将軍
LV:5
体力:75
魔力:85
────────────────────────────────────

 案の定、アリサにもレベルが存在。
 村の外に連れ出してから、何度か止めをさせていたからだろう。
 レベルの上昇に伴い、体力、魔力が上昇していた。

 レベルが見えるようになったのは、精霊アイの熟練度が上がったためか。
 情報を制する者が戦を制する。
 軍師の俺にとって、この上ない成長といえよう。
 後は所有するスキルを確認できれば文句なしなのだが、それは今後の成長を待つとしよう。

 しかし……ミーシャのやつ。
 スキルを習得したのは良いが、いずれも品のないスキルばかり。
 加えて肉食だと?

 よくよく見れば、地面に転がる死体。
 いずれも、ほうぼう肉をかじられ骨がむき出し。
 人間に似てはいても、その習性はゾンビなのだ。
 ミーシャが快調なのも納得。お腹いっぱいというわけだ。

 まあ、俺が手綱を握っておけば良いだけだが……
 ミーシャ。うかつに人里に入れるのはマズイことになった。

「おーい。無事かー。生きてるかー」

 遠く藪をかき分け、こちらに迫る声がする。
 逃げ延びた冒険者と共に、捜索隊が到着したのだろう。

「ミーシャ。すまないが、君は隠れていてくれるか?」

「ええ!? そんな……どうして? マサキさん」

「アーウー……ワカッタわ」

 熟練冒険者パーティは全滅した。
 その中で、もっとも力の劣るミーシャだけが生き残る。

 どう考えても不自然である。
 普通に考えればありえない。

 疑われるのは確実。
 そうなれば、ミーシャがアンデッドになったことなど、即座に判明する。
 一見。人間に見えるといっても、よくよく見れば人間でないのは明白だ。

「ミーシャ。家族はいるのか?」

 俺の質問に、ミーシャは答えずらそうにそっぽを向いた。

「ミーシャちゃん。孤児なの。だから孤児院のみんなが、院長先生が心配するよ」

「アーウー……必要ない。家族なんていないわヨ……」

 何かと複雑な事情があるようだ。
 が、ミーシャには悪いが、家族がいないというのは俺にとって都合が良い。

 家族と引き離す罪悪感を感じる必要もない。
 何より、連れ去ったとしても。
 行方不明になったとしても、騒ぐものがいないということだ。

「ここか! うっ……これは」
「……ひでえ血だまり」
「お前は……マキナが担当する冒険者か。他の者は?」

 救援に訪れた冒険者パーティ。
 その中にはギルドマスターまでもが含まれていた。

 ミーシャの担当。
 自分の担当する冒険者の安否を気遣って来たのだろう。

「俺が来た時には全滅していた。相手は……これだ」

 俺は地面に転がるスーパーオークマンの死体を指さした。
 ミーシャにかじられ骨が露出しているが、巨体の大半はまだ残っている。

「!? こいつはスーパーオークマン」
「まじか。てことは……」
「魔族の尖兵。その隊長が村の近くに来るってことは、いよいよか」

 何がいよいよなのか?

「魔族の襲撃や」
「ここ数か月、動きがなかったので油断していたようだ」
「死にはしたが、魔族侵攻の兆候を発見できたのだから大手柄や」
「ああ。王都へ急を知らせよう」

 魔族の襲撃を逃れ、辿り着いたトータス村。
 だが、この村にも魔族がやって来るという。

 まあ、ここは魔族と接する前線の村。
 遅かれ早かれ、こうなるのは必然か。

「しかし、熟練冒険者パーティが全滅するほどの相手」
「スーパーオークマンを倒すとは」
「もしかして、おっさん強いのか?」

 今さらすぎる疑問。

「腕に自信はある。アリサ将軍の助けもあった」

 そして何より。

「冒険者たちのおかげだ。俺が相対したその時。すでにスーパーオークマンは瀕死だった」

 無傷の状態で相対したなら、勝利は難しかっただろう。

「……そうか。彼らは?」

「燃やした。アンデッドになられては困る。問題あったか?」

「いや……それで正解だ」
「しかし、アリサ将軍って誰だよ? まさかその少女のこと?」
「……少女といえば、ミーシャちゃん」
「可愛そうに……まさかスーパーオークマンが現れるとは」

 まだ幼いミーシャの死を悼んで、冒険者たちが頭を垂れる。

 ガサリ。

 ミーシャが身を潜める藪が揺れていた。

 死して辛いのは、存在がなくなること。
 誰からも忘れ去られること。

 だから、葬儀を行うのだろう。
 だから、お参りするのだろう。
 忘れられるのが辛いことを、知っているから。

「なんだ? モンスターか?」

 だから、嬉しいのだろう。
 自分の存在を覚えていてくれる人がいて。

「……いや。ただの風だ」

 茂みでうずくまるミーシャ。
 その身体が小刻みに揺れていた。
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~

草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。 レアらしくて、成長が異常に早いよ。 せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。 出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

処理中です...