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82.最強・勇者アタック
しおりを挟む100/11/3(木)06:30 ファーの街 郊外
ファーの街を襲撃するオーガ獣。
俺は、ボスであるオーガキングを急襲。
大ダメージを与えることに成功した。
問題はここからだ。
オーガキングは指揮スキルを使って、自身の取り巻きを呼び寄せる。
ボスを守ろうと。街を襲うオーガ獣の全てが、俺を狙い集まっていた。
その数5000匹。
対する俺も、援護に駆けつけたクランメンバーと合流する。
その数30人。
お互いの戦力比は1対250。
おまけに周囲を十重二十重に取り囲まれたとなれば、この死地を脱するのは不可能──
もっとも、それは常識的に考えるならば、だ。
「勇者様。頑張って」
「御使い様。いえ、勇者様!」
「勇者! 勇者! 勇者!」
何故なら俺は勇者。
勇者に常識が当てはまらないのは世の理にして、世界の真実。
俺が勇者パワーを解放することができれば、勝負は決する。
「勇者アタック!」
ドカッ
LV35の俺の蛮族力は、オーガ獣を一撃で仕留める威力がある。
押し寄せるオーガ獣の頭が、スイカのように破裂。
当たりに血しぶきを巻き上げた。
だが、違う。
俺が繰り出すべきは、勇者アタック。
5000匹のうち1~2匹を潰したところで意味はない。
オーガ獣100匹を1撃で吹き飛ばす勇者の闘技。
力強さとダイナミックさ。
優雅さと華麗さが同居したエモーショナルな攻撃。
「それが勇者アタックだ!」
ドカッ
顎を目がけて打ち上げる骨が、オーガ獣2匹をまとめて空に舞い飛ばす。
折れた歯が宙を飛び、唾液と吐血が俺の身体を染め上げる。
だが、これも違う。
いくら馬鹿力で殴ろうが、ただの暴力。
文明開化が足りていない。
しかし、冷静に考えればそれも当然の話。
本来、勇者スキルを失った今の俺は、ただの蛮族。
勇者アタックを放てなくて当然だ。
それでも。
今も、俺を勇者と慕う少女たちがいてくれる。
だから。誰が何と言おうが。
世間が何と言おうが、少女たちが俺を勇者と呼んでくれるなら──俺は勇者。
だから!
「勇者アタック!」
俺は勇者の一撃を振るう。
ドカッ
横薙ぎに振るった骨が、迫るオーガ獣を3匹まとめて吹き飛ばす。
漏れ出す光とともに粉々のひき肉となって、地面にバラまかれるオーガ獣。
だが、まだ違う。
まだ迷いがあるのか?
もっと力を。魔力を。
俺を信じる少女たちを信じろ。
「勇者様がんばってください」
「ユウシャ様ー」
……聞こえる。
俺を応援する声が。
勇者を称える少女たちの声が。
俺のクランメンバーだけじゃない。
「勇者様がんばってー」
「勇者様ふれーふれー」
「ユウシャさん。お願いします」
遠く離れた街から。
多くの冒険者たち、多くの衛兵たち、多くの民衆たちの声が。
城壁の上には、いつの間にか多くの少女が立ち並び、声援を送っていた。
「どうか……どうか私たちを。ファーの街をお守りください。御使い様」
さらには助けを求める声までも。
ユウシャ。勇者。御使い。
呼び方は様々あるが、その全てが俺への声援。
そうだ……みんなが期待しているのは勇者スキルなどという、得体の知れない力じゃない。
俺なんだ。
今。少女を守るのは勇者ではない。
俺が少女を守るのだ。
……ようやく理解した。
奪われた勇者スキル。
失った力に、過ぎ去った過去に固執しても意味はない。
いくら血を流そうが命を賭けようが──俺は勇者ではない。
それは明確な事実。
いくら骨を振るおうが力を振り絞ろうが──俺は勇者アタックを放てない。
それは絶対の真実。
それなら──それで構わない。
勇者スキルがないというのなら。
勇者を超える力を手にいれれば良いだけだ。
俺が勇者じゃないというのなら。
勇者を超える存在になれば良いだけだ。
今、俺が目指すべきは勇者ではない。
少女を守る最後の希望。勇者を超える最強の存在。最強勇者。
今、俺が放つべきは勇者アタックではない。
明日に進む力。未来を切り開く最強の闘技。最強勇者アタック。
もはや迷いはない。
「勇者殿ー頼みますぞー!」
「ユウシャー! がんばれー!」
「応援すっぞー!」
野太い老人の声が辺りに響くが、うるさい。集中の邪魔だ。
迷いが生まれたらどうする? 殺すぞ。
怒りのあまり城壁を振り返る俺の目に、サマヨちゃんの姿が映っていた。
街を守り切ったのだろう。
サマヨちゃんもまた城壁上から俺を見つめ、応援していた。
ふっ。恋人の前で無様なところは見せられない。
ならば、行くぞ!
今。俺の耳に。心に響きわたるこの声援を。
今。俺の腕に。身体に湧き上がるこの力を。
全ての想いを解放する。
ドシュー
途端、身体から溢れだす金色の光。
なんだか懐かしい。それでいて新鮮な気がするこの光。
「ユウシャさんっ! ファイトだよぉ!」
一際大きな声はカモナーか。
姿が見えないと思ったら街にいたのか?
あいつもスマホ持ちのため狙われないか心配だったが、無事で何より。
少女の声援に後押しされるよう、溢れる光を収束。
右手に持つ骨に全て押し込める。
「最強……」
力を感じる。未知の力を。最強の力を。
迫り来るオーガ獣の壁。その奥で指示を出すオーガキング。
奴のいる場所は、1000匹の肉の壁に遮られた安全圏。
だが──それも終わりだ。
今。最強勇者、門出の時。
「最強・勇者アタック!!!」
振り下ろした骨はオーガ獣を吹き飛ばして地面を打ちつける。
ブッピガガーン
瞬間。辺り一面に金の光が爆発した。
金色に染まる視界。金色に染まるオーガ獣の群れ。
光に飲まれたオーガ獣の身体は分解され、塵へと変わりゆく。
その間、わずか10秒。
ただの一振りで1000匹のオーガ獣が消滅していた。
最強・勇者アタックの後には、ただ平原が広がるのみ。
「なんだと……なんだと! ありえない!」
城壁からその光景を見た神の御使い、元親衛隊長が声を上げる。
ありえないも何も、今目の前で起きた結果が全て。
勇者ではない俺。
その事実を受け入れたからこそ、今の俺がある。
耐えがたい事実であっても、事実を事実として受け入れねば先には進めない。
しかし、あの野郎。あんな所にいたのか……ま、野郎の相手は後だ。
取り巻きを吹き飛ばされ、1人ポツンと草原に佇むオーガキング。
伊達にキングを名乗ってはいない。
最強・勇者アタックの余波にあっても、まだ息があるとはな。
武器を収めた俺は、その傍らへと歩み寄る。
先ほどの一撃で確信した事がある。
最強勇者の前に敵はいない。
残るオーガ獣4000匹を仕留めるにも、3分とかからないだろう。
これはもはや勝負でもなければ、戦争でもない。
俺が武器を振るえば、それはすなわち虐殺となる。
幸い、慈愛の心を持つ最強勇者は無用な血を好まない。
降参するというのなら、見逃すのもやぶさかではない。
「オーガキング。勝負はこれまでだ」
俺の言葉と同時に両手を上に掲げ、何やら大声で騒ぎ始めるオーガキング。
「オ、オ、オガー! オガー!」
ふむ……
最強勇者となった俺であっても、オーガ獣の言葉までは分からない。
なら。
「殺戮・勇者アタック!」
一刀両断。
拳で語る。あるのみだ。
「オギャー!」
悲鳴を上げ息絶えるオーガキング。
一撃で死んだのでは語り合う暇もないが、やむをえない結末。
最強勇者といっても、いまだ完璧には程遠い。
この勝利に奢ることなく、今後も謙虚に生きるとしよう。
「雑魚どもが……国に帰るんだな。ママのおっぱいでも飲んで出直して来い!」
一喝と同時にオーガ獣の群れは、俺の周りから。
街の近くから、蜘蛛の子を散らすように逃げ出していた。
その姿を尻目に、俺はゆっくりファーの街へと歩き出す。
「勇者! 勇者! 勇者!」
勇者とは、民衆が、美少女が認めて初めて本当の勇者となる。
タローシュ。
奴は美少女に認められて勇者になったのではない。
奴の持つ勇者スキルは、スマホから習得しただけの物。
いわばインスタント勇者。まがい物の勇者でしかない。
最強勇者の前ではゴミも同然の存在。
インスタントには出せない本物の味というものを、奴に教えてやる。
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