スペース宇宙戦争R18

くろげブタ

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5/16.宇宙漂流

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 エイスは無事に宇宙軍第五機動艦隊へと帰還する。

 艦長室に呼び出されたエイスを待っていたのは、罰則ではなく副指令からの伝言であった。

 スペース携帯電話をはじめとした全ての戦闘データを提出すること。
 そして、スペース人間プロジェクトに関する全ての情報を秘匿すること。

 この要請をエイスは承諾。

 引き換えに遭難した救難艇の情報、捜索のための特別休暇を受け取った。

 そうして単身メディの捜索へと向かったエイス。
 だが、目撃したのは破壊された救難艇であった。
 識別番号は確かにメディが搭乗する救難艇。
 その艦内は無人で死体すら存在していない。

 先に誰かが救助したのだろうか?
 宇宙軍に救助記録はない──となれば地球軍だろう。

 特別休暇は終わる。もはや、これ以上できることはない。

 捜索から戻ったエイスは第五艦隊へ、通常任務へと復帰する。
 SM(スペース・人型・マシーン)を駆って地球軍を撃墜するいつもの任務だ。

 しかし、そんなエイスにも敗戦の足音が忍び寄ろうとしていた。


 劣勢の宇宙軍は、常に数的不利な戦いを余儀なくされていた。
 なかでも黄色くカラーリングしたSMを駆るエイスは地球軍から目の敵にされており、この日も十機の敵SM相手に激しい戦闘を繰り広げていた。

 しかも、追撃する地球軍のSMは全て最新のマスタングース型。
 両軍SMの性能差は拡大するばかりであり、他の量産SMでは太刀打ちできない相手。

 それでも、エイスが新たに搭乗するユキカゼ型もまた、宇宙軍の最新鋭試作機である。
 エイスはすでに三機のマスタングースを撃墜していた。

 にも関わらず戦況は不利なまま。全く有利となるそぶりすら見えない。
 すでに戦場に友軍SMの姿は見当たらず、無数の敵SMが友軍艦に群がる姿が見えるのみ。

 エイスは十機のマスタングースに追われながらも、友軍艦に張り付こうとする敵SMを牽制。
 その退路を確保する。

 後方に張り付いたマスタングース隊から断続的に放たれる銃撃。
 エイスは襲い来る銃撃を回避しながら反撃を続けるが、マスタングース隊はエイスの後方へ後方へと回り込み続け、容易に引き離すことができない。

 その間も次々と撃沈されていく友軍艦。

 スペース空母を主力とする第五機動艦隊がSMを失ったとあっては、反撃の余地はない。
 今や旗艦にまで敵SMが群れをなし襲い掛かっている。

 エイスは後方にマスタングース隊を引き連れたまま旗艦に群がる敵SMへと接近する。

 ドンッドンッドンッ。

 旗艦への攻撃に集中するあまり、近づくエイスに無防備とあってはひとたまりもない。

 一瞬にして二機のSMを落としたエイスは更に旗艦へと接近、その対宙砲火の弾幕へ自ら飛び込んでいった。

 対艦装備のないSMが危険を冒してまで対宙砲に接近する意味はない。
 エイスを追いすがるマスタングース隊は追撃を諦め左右へと旋回していく。

 マスタングース隊の追撃を振り切ったエイスは、旗艦の対宙砲火に留まったまま敵SMへの攻撃を続けていた。
 いつ友軍艦に撃たれるか分からない宙域での戦闘。
 とても正気とは思えない行動だけに効果は抜群である。
 対宙砲とエイス、両方から狙われた地球軍のSMはなすすべなく落とされていった。

 その様子に業を煮やしたのか、マスタングース隊はエイスの追撃を再開する。

 旗艦の対宙砲火が吹き荒れる宙域で、エイスとマスタングース隊、一機対十機の戦いが展開されていた。

 旗艦を背後に戦うエイス。
 その背後を取るには旗艦へ近づく、対宙砲火へ近づく必要がある。

 確かにマスタングース隊の腕は確かな物だ。
 それでも、対宙砲火が飛び交う宙域でのSM同士による戦闘は無理があった。
 エイスの背後をとろうと旗艦に近づいた敵機に対宙砲火が集中、火を噴きながら爆散していく。

 チャンスとばかりにエイスはその爆風へと飛び込む。

 爆風の中でSMを回転して軌道を変更。
 背後に食らいつく敵機、隊長マークの付いた敵SM目がけて加速する。

 爆風から突然目の前にあらわれたエイスのSM。
 あっという間に銃撃の間合いから近接戦の間合いへと。

 隊長機が向ける銃口をエイスは自機の銃身で跳ね上げ、左手のスペースサーベルを一閃する。

 確実に撃墜したはずの斬撃──だが

 ドガアンッッ

 轟音を立ててお互いのSMが衝突する。
 回避できないと悟った隊長機は機体を加速、エイス機に体当たりしたのだ。
 その衝撃でコクピットを直撃するはずの斬撃がわずかにずれていた。

 もつれあうように動きを止めるなか、それでもエイスは隊長機の上半身を半壊、動力切れへと追いやることに成功していた。

 これまで後方に張り付いていた隊長機のおかげで、今日のエイスはまともに戦えていなかった。
 その隊長機を落とした今となっては、残る敵機を撃退するのはエイスにとって手間はかかるが難易度の高い仕事ではない。

 だが、旗艦のブリッジはそう思わなかったのだろう。

 すでに他の友軍艦はなく、頼みのエイスですら目の前で十機もの敵SMに追い回されている。そして、ついには敵機と激突して動きを止めたのだ。

 もはやこれまでとばかりにスペース核爆弾を一斉に発射する。

 敵も味方も関係ない。
 半径一キロ周囲の全てを破壊する広範囲殲滅兵器。

 死なばもろとも。
 旗艦の目の前でスペース核爆弾が爆発する。
 その爆発は、旗艦自身をも巻き込みながら全てを吹き飛ばしていった。

 宙域を彩る爆光と共に宇宙軍第五機動艦隊は消滅。
 同宙域での戦闘は宇宙軍の敗北で終結する。


(現在地はL六宙域か。ずいぶん流されたな)

 広範囲を破壊しつくすスペース核爆弾だが、本来は速度に劣る宇宙戦艦や固定目標を相手とした兵器であり、弾速、爆発の拡散速度ともに遅い。

 絡みついた隊長機が邪魔をするなか、床を踏み抜かんばかりにエンジンを回したエイスは、すんでのところで爆発を逃れていた。
 だが、爆風にSMの下半身は完全に吹き飛ばされ、背後の動力炉もまた損傷と過負荷によって停止していた。

 爆発の余波に吹き飛ばされ、慣性によってどこまでも流される。

 宇宙漂流である。

 エイスはSMの遭難信号を発信、携行する武器を全て投げ捨てる。
 敵にしろ味方にしろ、武器を携行しては警戒したレスキュー隊が近づけない。

 後は救助の到着を祈るだけである。

 エイスの周囲には友軍艦はもちろん敵艦もない。
 エイスのSMと絡み合ったままの敵SM。二機が存在するのみである。

 (そういえば相手のSM。隊長機だったか。パイロットは無事なのか?)

 コクピットを逸れたとはいえ、エイスのスペースサーベルが至近距離に直撃しているのだ。

 エイスは隊長機へ近づくと、コクピットハッチを叩いて中へ声をかける。

「おい。生きてるか?」

 エイスの目の前で開いていくコクピットハッチ。
 その先では、地球軍パイロットの構える銃口がエイスに向けられていた。

「よせ。お前も状況が分かるだろう? 争っている場合じゃない」

「うるさい。貴様に私の部下が殺されたんだぞ。しかも全滅だ。全員殺されたんだ」

 隊長機と共にエイスを追い詰めたマスタングース隊。
 エイスが落としたSMは部下だったのだろう。

「それはすまない。だがお互い様だろう? 私の艦隊は全滅させられた」

「ふん。自業自得だ」

 なかなかに喧嘩腰である。
 もっとも部下を殺した相手を前にしては、冷静になれというのも無理がある。
 エイスも初めて部下が戦死した時は、とても冷静になどなれなかった。

 それでも、ここで争っても仕方がない。

「元気そうで何よりだ。すでに遭難信号を発信している。宇宙軍と地球軍、どちらの救助が来るかは分からない。君が私を撃ったのでは、宇宙軍が来た場合にマズイだろう? 銃を降ろしてくれないか」

「ふん。救助に来るのは地球軍に決まっている。宇宙軍にそんな余裕はないからな」

 確かにその可能性が高い。
 いきなり発砲しなかったことといい、現状を理解していることといい、頭に血が上ってはいるが思ったより冷静なようだ。
 仮にも隊長だ。粗暴なだけでは務まらない。

「そうかもしれない。だが、それなら捕虜とした私を地球軍で裁けば良い。無抵抗の捕虜を殺すような、自分の名誉を汚すような真似をする必要はなかろう」

 それなら正攻法で説得するだけだ。
 無抵抗の捕虜を虐待することは、宇宙条約で禁止されている。

「ふん。貴様など死刑に決まっている。それまでせいぜい懺悔するんだな」

 ひとまず向けられる銃口は納めてもらえた。
 後はお互いに生き残る方法を探るとしよう。

「そうするとしよう。それで、そちらの酸素は後どれだけ残っている?」

「……」

 エイスはあらためて隊長機の状態を確認する。

「私のサーベルでコクピットが破壊されているな。SMの酸素は残っているのか?」

「うるさい! 貴様が破壊したくせに残っているわけないだろう。スペーススーツの酸素ボンベにある六時間が全てだ」

 この破損では無理もない。脱出ポッドはコクピットと一体化しているため、コクピットが破壊されては機能しない。

「そうか。なら私のコクピットに来ると良い。あと六日は酸素が持つ。もっとも二人になれば半分の三日分といったところだが」

「ふん。礼は言わんぞ。貴様が私のSMを破壊したのだ。当たり前だからな」

「構わん。その代わり、地球軍の救助隊が来た時は、私への待遇が少しでも良くなるよう口添えをしてくれればありがたい」

「はっ。それが狙いか。恩を着せて自分だけ助かろうなど浅ましい奴だ」

「そうだな。だが、お前も私に優しくしておけ。もしも宇宙軍が来た時にその態度なら困ったことになるぞ」

「ふん。そんなことは万に一つもありえん」

 地球軍の隊長を引き連れユキカゼのコクピットへと戻る。
 もちろん一人乗りのため座席は一つだが、二人が過ごすだけのスペースはある。

「おい。何故お前がコクピットに座って、私はこんな所に座らねばならない?」

「仕方あるまい。座席は一つだ。そしてこれは私のSMだ」

 素早く座席にすべり込んだエイスに対して、先を越された隊長は計器が配置された鉄板の上に腰を降ろすしかない。

「やはり宇宙人は野蛮だな。レディーファーストという言葉を知らないのか?」

 まあ、声と体系から女性だろうことは分かっていた。

「レディーとして扱ってもらいたいなら、その宇宙人という呼び方は止めてもらおう」

 地球軍の中には、宇宙で生まれ育った者たちを宇宙人と呼んで蔑さげすむ者もいる。
 エイスとしても、あまり気分の良い呼ばれ方ではない。

「……すまない」

 隊長も自分の発言がただの腹立ちに任せた八つ当たりだと気付いたのだろう。
 思ったより素直で良い奴かもしれない。

「それなら交代で座席に座るとしよう。どうだ?」

「良いだろう」

 遭難信号を打ち上げた今、コクピットですることはない。
 エイスはスペーススーツのヘルメットを外すと、コクピットに充満する酸素を吸い込んだ。
 顔を全て覆い隠すヘルメットを長時間被りづづけるのは案外疲れるものだ。

「どうした? コクピットに酸素は十分ある。戦闘中でもあるまいに、ヘルメットを被ったままでは疲れるぞ」

「うるさい。貴様と一緒で休めるわけないだろう」

 気持ちは分からないでもないが、いつ救助が来るか分からないのだ。
 そんなにピリピリしては身体が持つまいとは思うが、エイスが口出すことではない。好きにさせるだけだ。

 エイスは目を閉じ眠りにつく。

「おい。交代だ。起きろ」

「……そうか。そんなに眠っていたのか」

 エイスは自分の身体を蹴とばす足によって、目を覚ましていた。
 戦闘の疲れが溜まっていたのだろう。
 狭い座席にも関わらず、思ったより眠れたようだ。

「ふん。敵と一緒だというのによく呑気に眠れるな」

 エイスを蹴とばす隊長は、いつの間にかヘルメットを外していた。

 パイロットにしては長い髪をしている。
 ヘルメットの中でまとめていたであろう漆黒の髪が解かれ、腰にまで届きそうである。
 相変わらずエイスを見る目つきはキツイものの整っており、隊長と呼ぶには若い容姿をしていた。

「ほう。なかなか美人だな」

「うるさい。早くどけ。計器の上に居たから身体が痛い」

 隊長はエイスと入れ替わるように座席へと座る。
 計器の上に追いやられたエイスだが、確かにここは尻が痛くなる。

「貴様。良いか。私は少し仮眠を取るが、絶対に寝顔を見るんじゃないぞ」

「難しいな。だが、なるべく善処する」

 何せコクピットに居てもすることはない。
 周囲を見ても、代り映えのない暗闇の宇宙が広がるばかり。
 それなら、美人の寝顔を見ていた方が心が休まるというものだ。

 そうしてエイスは隊長の寝顔を見ながら時間を過ごすのであった。
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