元BL 作家だったけど

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鈴のような声だな...、中身はワタシだが。

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「う、う。」
…何だろう。喉に違和感がある。
「ここは…?」
「王都近くの森だよ。」…王都?現代日本じゃないのか。あの夢は現実になってしまったのか。
じっと手を見る。少しだけ前より大きい、透き通るように白い手。髪を一房。うん、色違う。綺麗な柔らかい
金の巻き毛。きっと零れ落ちそうな大きさの碧い瞳の、少年に、なってるんだろうな。
「大丈夫か?」私は、声の方を見る。
…良かった、通りすがりの人だ。茶髪、茶目の人懐っこい笑みの兄ちゃんだ。動きやすそうな格好の、ド庶民だ。
「はい。大丈夫です。ただ…」何と言っていいのか。色々混乱している。どうでもいいけど、喉から出てくる、自分の声が、アイドル女子並みに高い。
「すみません。田舎から出てきて、脇道に入ったみたいです。働き口と住む所を探しています。」と、伏し目がちで言ってみる。
「偉いな、まだ小さいのに。」
兄ちゃんは、ヨシヨシとわたしの頭を撫でたが、自分15歳、この世界では成人男性だ。
「じゃあ俺んち来るか?俺んちは宿屋やってるんだ。俺は、ライ。お前は?」ニッカと笑ってライはいう。
「シリルです。よろしくお願いします。」
私は、騎士だの、狩の最中のどこぞの貴族様に会わなくてよかった、と思いつつライんちに向かった。

私、今は、シリル少年だが、中身は残念なBL作家だ。シリル君は私の生前書いてた作品のキャラ(受)だ。
そこら辺のアイドル顔負けの愛らしい容姿に、海のように広い心を持つ。彼は、商家の三男でかなり大きな商売をしているが、支店に向かう所で襲われる。色々消し飛んで、彼だけ生き残ってしまった。…そうとも。ちゃんときちんと、話して、諸々退治に行かにゃならんのだろう。が、今は嫌だ。
私は、色々の残骸を、見なかったことにした。

「はあ、まったく…」
私は、机と椅子、ベッドのみの6畳ほどの部屋でため息をついた。私は転生したらしい。
締切が明けて、ホッとして、んじゃ寝るかって、したところから記憶がない。
気が付いたら目の前にやたらまぶしい存在が居て、「この度は」とか。なんでも、地震と火事で、「この度」にあいなってしまったらしい。
「ただ、」「なんです?」「あまりにも気の毒に」
「かな。私割と好きなことしかしてないし、残ってたらやばいようなあれこれまで、残らず片付いているなら上等な気もするんですけど。」
だから、そんな顔しないで。
「誰かと心を通わす喜びを知らないのは寂しい。」
それは、どちらの、声?
「たとえば、この話の」
それは、出版される予定の。まだ先の。
「あなたは、しらないと」
そして、視界はホワイトアウトした。

 シリルは、森の入り口で、放心している所を騎士に救われるが、強大な魔力を持っているということで、城に連れられて行き、勇者たちと諸々、それこそ諸々あるわけだ。しかし、シリル君の中身は私だ。今諸々は欲しくない。なんなら、そんな覚悟ない。
 コンコンと、ドアがノックされる。
「俺だ。」
ドアを開けるとライが具沢山のスープとパンの皿の乗ったトレーを持って立っていた。
「ありがとうございます。」
 あれから、森の端につないであった馬でライの家の宿屋までいき、着替えを借りて風呂をいただいた。魔石付きの木桶で魔力を魔石に込めると自動(?)でお湯が溜まる。
身ぎれいにしたところでダボっとした、借り物シャツとズボンを着る。うん。
 ライは、おおっ、て顔をする。いいたいことはわかる。彼シャツ。袖をまくってもでかい。
「よかったら、うちでしばらく働かないか。」
「いいんですか?」いただきます、と食べ始める。よく煮込んだ肉と野菜入りのビーフシチューに似た…。美味い。
「ああ。親父も喜ぶぜ。お前かわいいし。」
 ライの性別の誤解は解いてある。かわいいとは。私にはライについてはいまいち分からない。メインキャラではなかった、っていうかこんな人描いたっけ。
「これで、薪の束とかはこぶしな。」ライはスープを食べてる私の頭をワシワシと撫でる。馬に乗ってた荷を下ろすのを手伝ったらガン見されたな。
「かわいいとは。」
「まんまだよ。」ニッカと笑う。…あれこの人よく見りゃイケメンでは。今そんな設定いらんけど。










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