死んでないのに異世界に転生させられた

三日月コウヤ

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第2章 冒険者編

131話 ロブスのお礼

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「お礼、ですか?」

「はい、この命を救ってくださったご恩に報いる為にも出来る限りの事をさせていただいたいのです」

ふむふむ、お礼か

「いやいや、そんなに気になさるなロブス殿よ。今回の出来事は不幸な事故のようなもの。それに冒険者にとって人助けは当ぜ…」

「ありがとうござます。喜んで受け取らせて頂きます」

「って、ちょっ!ど、同志ー!」

「貴方なんて事を口走っているのですか!せっかくエルノアがカッコよく決めていたところなのに水どころか汚水を差して!」

「そうだぞ!冒険者というものはこういう時に『人として当然の事をしたまでですのでお礼など頂けません!』と、言い切るものだろう!だからこそ皆が冒険者に憧れるのであろう!」

「そうですよ!全国の少年少女の夢を壊すおつもりですか!」

「…今回に限って言えばお前らの言いたいわからないでもないし、そういう台詞を言ってみたい願望が俺にも無いこともないんだけどさぁ」

「だったら…」

「けどお前ら、今の自分たちの立ち位置分かってるのか?」

「「??」」

「住処が無く、所持金も無く、あの街ではこれといった頼る宛も無いときた。それにお前らが今回あの街に移るにあたって初日にも拘わらず粉々になってしまったあのホーム以外に金品やら生活必需品などは所持していたり、転送してもらえたりはないんだろう?」

 昨夜外で川の字のような形で寝ないといけなくなった際に今後の為の現状把握としてメイドらに確認してみたところ、メイドらが持参していた緊急用寝袋以外に役に立つものは持って来ておらぬ事を知らされ絶望していた。

「そうだ、着の身着ぬ儘のような状態で自分ら力だけで生活したかったからな。殆どの物は置いてきてしまったのだ」

「なら分かってもらえるとは思うがあの超カツカツオーバーな生活環境と懐事情で他人からの贈り物に断りを入れられる経済的余裕がどこにあるんだ?」

「それは考え方が間違っています」

「?」

「このひもじいような生活は神が我々に下さったご褒…試練なのです」

「おい、本音が漏れそうになってるぞ。大体神様が与えたというよりかはそこの妹のミスの結果だろう?」

「あれはミスなどではではありません。大体ロブス氏はさっきまで襲われ続け、今はなにもかも失っているような状態なのですよ。そんな満身創痍の方にハイエナの如く群がってたかろうというのですか?」

「うっ」

 クラリスに指摘されてロブスの方を見る。ボロボロとなっている衣服に傷だらけの手。命からがら逃げて来たという彼の言葉を彼の状態がよく表しており、より一層クラリスの言葉が突き刺さった。

 天使
『彼女の言う通りだよ!こんな命からがらの人から貰い物をしようだなんて最低だよ!ここはちゃんと断って…』

 悪魔
『おいおい、お前の頭はお花畑か?現在どれだけナイナイ尽くしだと思ってんだ?どんなもんでも貰っとくべきだろう?』

『何事も無く無事に助けられてたんだからそれでいいじゃないか!』

『何事も無く?確かに相手は無事だったかもしれんが自分の状態をよく見てから言えよ。全然無事に見えない上に衣服は消失。こんな状態で綺麗事なんて愚かとしか言いようがないぜ』

『なんだと!』
『なんだよ?』
『ぐぬぬぬぬぬぬ』

 中立
『はいはい、それくらいで。取りあえず貰う貰わないは別にして話を聞くだけ聞いてみよう』
『『そうするか』』

「ところでお礼とはどういったものなのでしょうか?」

「ええ、皆様は…冒険者なのですよね?」

 最初は確認といった感じの声色がかなりの疑問符が浮かんでいるような感じに変わり問いかけるロブス。大河は改めて自分たちの恰好に目をやる。

 タイガ →衣服消失で毛布のみ
 エルノア→顔以外は殆ど包帯
 クラリス→全身包帯ぐるぐる巻き

こりゃ疑問に思われてもしかたないか。それに…

「少なくとも自分は…」

「そうだ、我々は冒険者だ!」

「ええ、美少女二人とお供一人のパーティーです」

「やはりそうだったんですね」

「ちょっと待て」

「何でしょうかお供さん?」

「さっきの発言はどういう事だ?」

「どういう意味でしょうか?ああ、美少女二人と『一匹』ではなく『お供』などという表現をしてあなたの存在意義を歪める発言をしてしまったことでしょうか?それでしたら誠に申し訳ありませんでした。初対面の方にはこっちの説明の方が良いかと思いましたが今度からちゃんと『一匹』と説明してさしあげるのでご了承ください」

「今の発言こそが俺の存在意義を思いっきり歪めている件については置いておくとして、お前らこれまで基本王都の王城で王女という立場で過ごしてたんだよな?」

「そうですがそれが何か?」

「何かってお前。その生活環境だと絶対冒険者なんかになってないだろう?何で冒険者だってありもしない事を口走ってるんだよ?」

「イケナイでしょうか?」

「身分というか職業を偽る偽称行為に対して何で逆そこまで疑問視出来るのかを聞きたいな」

「人助けをしたのですから実質冒険者といっても過言ではにではないですか」

「その理屈でいってしまうと全国の人助けをした結構な数の非冒険者の方々も冒険者にカウントされてしまうんですが?」

「どうせもうすぐ獲得する職業ですし誰にも迷惑が掛かるわけでもないですしいいではありませんか?それに冒険者として人を救ったという感じの方がなんかいいので」

「さいですか」

ま、まあ確かに実害があるわけでもないし、今までに比べればカワイイものか

「あの、それでお礼の件なのですが…」

「ああ、すみません。続けてください」

「はい、それで皆様は冒険者のようですのでお好きな武器の提供などを…」

「「「あ、それはいいです」」」

((自称行為ができないだろし(でしょうし…))

(スキルのせいで武器という武器は装備出来ない上に多分現状素手の強いから…)

(((使わないしな(必要ありませんしね)))

「珍しく意見が一致したな」

「それでしたら防具の方を…」

「「「それもいいです(結構です)」」」

((防具なんか装備したら受けられるダメージ快感が減ってしまうし(しまいますし))

(防具もそもそも装備できないし)

「でしたら魔道具なんかは…」

「「「必要ないです」」」

((だって私《エルノア》ので間に合ってますし))

(やっぱり使えないし。駄目だ改めて考えると俺が冒険者関連の物って貰ってもクソスキルのせいで役立つものが結果的に無くない?)

「それでしたらええっと、ええっと…」

「あの、無理に恩返ししようとしなくて大丈夫ですよ」

「ああ、そうだ!冒険者でしたら…」

 その直後ロブスからある提案をされて、それを承諾。そのまま4人は無事リボーンへとたどり着いたのだった。
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