死んでないのに異世界に転生させられた

三日月コウヤ

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第2章 冒険者編

130話 魔法が使えないとは一体…

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 モンスターに襲われそうになっていた男性を助けてから既に半時程が過ぎていたが自身の裸を見られるという醜態によるショックが抜けず未だに放心状態となっていた。

「あの、大丈夫でしょうか?」

「ウン、ボクハツヨイコダカラヘイキダヨ」

「………」

 男性は心配になってなんとか声を掛けるも返って来る返答は決まって同じく中身の無いものでどうしたものかと困っていた。

「いくら自分の粗末な体が晒してしまったからとはいえいつもでそうしているつもりですか?殿方であれば裸の一つや二つ見られたくらいでいつまでもウジウジせずに前を向いてはどうなのですか?」

「ソウダネ、マエヲムイテアルコウ」

 いつに間にか復活して合流したクラリスが𠮟咤するも効果が無かった。いつもの彼であれば悪態の一つでも吐き出すのだがそれすらしようとしなかったため、いつもと違う彼の様子に流石の彼女らも心配になっていた。

「粗末などではなかったように見えたし、その…り、立派だったと思うぞ。色々と…」

「あの、そういう言い方をされてまうと」

「…も、もうお婿に行けない!」

「大丈夫、城には多くの兵士の知り合いがいるから問題ないぞ!」

 いらねぇーよ!!

「遠慮くなく言ってくれ、どういう男性がタイプなんだ?」

 これまでのエルノアの台詞や行動を考えると冗談抜きで本当に

「ああ、もういい!わかった、大丈夫だから!」

 これ以上落ち込んでるとさっきのとは比べ物にならないならない危機直面しそうだしな

「ええっと、申し上げるのが遅くなってしまいましたが改めて。私《わたくし》ブルモルド・ロブスと申します。この度は危ないところを助けていただき本当にありがとうございました」

「ブルモード?もしかしてブルモルド商談のブルモルド・ロブス氏ですか?」

「私のことをご存知で?」

「勿論ですよ。リーボンやその周辺地域、近隣の公国などに多くの商品を提供している事で有名ですから。王都や北東の周辺にもその名が轟く程ですもの。しかし何故そのような方がお一人でこのような場所におられたのですか?」

「はい、実は数日前リボーンへの荷物を配送をしている時でした。突然大量の魔物に襲われてしまいて」

「そんな事が…」

「護衛の冒険者は雇っていたのですが現れた魔物の数があまりに多く、止む負えず荷物は諦めてその場を離れる事にしたのです」

「英断でしたね」

「はい。しかしその後も追撃され、命からがら逃げ押せることには成功したものの、他の方々とは離れ離れになってしまい気が付いたらあの場に居たという訳です」

「大変な目に遭われましたね。ですが私達と一緒に居ればもう安心ですからね。必ずやリボーンまで安全にお連れ致します」

「ありがとうございます」

 自信満々に話すクラリスだったが大河はその様子をジド目で見つめており、その視線に気づき不満の表情を浮かべる。

「あまり女性をジロジロと見るのは失礼だと思うのですが。それと何ですかそのモノ申したげなお顔は?」

「色々とツッコみたいのは山々だが、とりあえず一つ聞いておきたい。現在地が何処なのかもわかっていないのどうやって目的にまで送り届けるんだ?」

「ああ、その事ですか。それなら大丈夫ですよ。範囲にもよりますが場所を特定する術は持ち合わせていますから」

 そう言うとクラリスは地面に膝と手を付き目を瞑ってからしばらく動かなくなった。一分ほど経った頃に立ち上がり目を見開いて周囲を見渡した。

「成程、ここはあの夜泣き森の外れに位置する場所でしたか」

 独り言のように呟いた後で再び男性の方に向き直った。

「どうやらここは通常の経路からそれた位置にあるみたいですが真っすぐこのまま南西の方角に向かって進めば南からのリボーンへの確立されているルートへ出れるはずです」

「ほ、本当ですか!?」

「ええ、そこまで行ければひとまず問題ないでしょう。かなり疲労しているようですけど動けますか?なんでしたらそこの荷物持ちにおぶらせますので…」

「ちょっと待った」

「何ですか?まさか男性を背負うのが面倒だとか言った情けないセリフを吐く訳ではありませんよね?」

「ツッコミたくはあるがとりあえず違う。そんな事ではなくお前確かこの辺が何処だか全くわからないと言ってなかったか?なのに何でこんなあっさり現在地の把握を行えているですかね?」

「非常事態ですし人助けの為ですから魔法を使って周辺を魔力で探って現在位置を把握したんです」

「成程、大変便利な魔法をお持ちなんですね。でもだったら何で森で迷子になってた時に使用する気配すらみせなかったのかご説明願えませんかね?」

「冒険とは未知であるからこそ様々な発見や出会いがあって楽しいのです。それが最初からある程度どういう所か分かってしまってはつまらないですから命の危険が訪れるような時や活動不能に陥りそうになる時以外ではギリギリまで使用しないよにしただけの事ですよ」

「途中で明かにヤバイ危険昆虫に追われたと思うのですが?貴女の妹さんも行動不能になって地面に倒れ込んでいた記録しているんですが?」

「それは後になってからの話ですし男性であれば終わった事にグチグチ口出ししてはいけませんよ。氏を見てください、あれだけ危険な目に遭ったというのに愚痴の一つも溢されていないでしょう?タイガさんも見習うべきなのでは?」

「そ、そうかもしれませんね」

堪えろ俺!他の人がいる前では堪えろぉ!!

「まあまあまあ、そのくらいで。私の方から皆様にお礼をさせてもらいたのですが」

 このロブスの提案が彼の今後に大きく左右していくことを彼らはまだ知らない。







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