死んでないのに異世界に転生させられた

三日月コウヤ

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第2章 冒険者編

129話 代償は激痛と過去にない羞恥でした

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 球体《MOB》から吹き出したスモークによって一帯を覆い、ウルフらの足を止める結果となっていた。

え?爆発…しない?しかも敵の動きも止まてる。もしかして普通にあいつエルノア器具が正しく作動して作戦が成功した?ま、まさかこんな普通に上手くいくことがあるなん『グルルルル!』ん?

 声の方に目をやるとウルフらが全身の毛が逆立つように唸り声を上げながら震えていた…怯える様な感じではなく興奮した様子で。

「おい、これってまさか!」

 状況の危険さに気付くも一歩遅く、確認の為に後ろを振り返る前に背後のウルフから臀部を噛みつかれた。

「ぎゃぁ――!!ど、どうなってんだよ!?大人しくなるどころか凶暴性が増した気がするんだが!?」

「そんな筈…あ、これ落ち着かせるMモンスターO大人しくなるB爆弾じゃなく、興奮させるMモンスターK凶暴になるB爆弾だった。すまん同士間、違えた」

「おい、ふざけんな!こんな大事な場面でそんな致命的なミスを。というか何でそんなもんぶっそうなもんを携帯して持ち歩いてんだよ!?」

「そんなのもしもモンスターに遭遇した時によりパワーアップして襲われたいからに決まっているであろう!」

「決め顔でなにぶっ飛んだ事を『ガブッ!』『ガブッ!』『ガブッ!』…イタッ!イタタタタタタタァ!とにかくこの状況なんとかしてく!」

「この状況を打破する方法を…!わ、分かった同士、挽回して見せよう。文字通り体を張って助けてやる。囮作戦だ!」

囮作戦!?

 そう言うとエルノアは懐から一つ球体を取り出して噴出した霧を自身の全身に振り撒くとモンスターの群れへとツッコんでいった。

まさかあれ、さっき俺目掛けて投げたのと同じやつか?そうか、あれで周りのモンスター引き付けようって算段だな。…普通の人がする分には身を挺する中々に泣かせる行動なのにあいつがやるとドM心が働いたが故の行動にしか思えないのが残念だがいくらか引き付けてもらえるだけでも有難い。その間に俺はこいつらをどうにかして加勢に…

 エルノアが身を乗り出して作ろうとしてくれているチャンスを逃すまいと気合いをいれようとするタイガ。しかしエルノアが突っ込んだ残りのモンスターたちは予想に反してエルノアに引きつられるどころかエルノアを煙たがるように近づかれる事を嫌い彼女から距離を取り、結果的に大河のいる方に集まって来てしまった。

あ、あれぇ~?思ってたのと違うぞぉ?な~ぜにぃこっちへぇ???

グゥルルルルルルおえ~、何だあれ。気持ちわりぃ

グゥルルルルルル兄ちゃん、手伝ってよ。これ硬くて中々嚙み切れないよ

グゥルルルルルル仕方ねーな。まあ俺も匂い直しならぬ食い直ししてーから手伝ってやるよ」

グゥルルルルルル私もこの気持ちわるいの吐き出したいから手伝うわ
グゥルルルルルル俺もムカムカすっから肉食ってスカッとするか

 ”ガブ!” ”ガブ!” ”ガブ!”

「イギャー!!噛まれる箇所が増えたぁーー!!」

「ああーー!ずるい同…じゃなかった。すまない羨ましいぞ同士」

「てめー!欲求駄々洩れのまま謝罪すんな!注意を引くどころか残りまで全部こっちに吸い寄せられてるってどういう状況だよこれ!」

「な、何でこんな事に…ああ――!!これMモンスターK凶暴になるB爆弾でなくTとてつもないA悪臭B爆弾だったー!くっ、失敗してしまったか。しかし今度こそ…」

「ええい!自分でどうにかするからお前は何もせずにその人の護衛でもしてろ!」

これ以上マイナスにしか向かわないであろう展開は御免だ!こうなったらやりたくなかったけどアレするしかないか。実践ではまだ使えないと言われてたけど使いますね!

「バーニング!」

 右腕に火が点火して腕に噛みついていたウルフだけは嫌がり離れていったが他はまだ噛みつかれたままだった。

やっぱり一カ所じゃ足りない!全身に魔力とイメージを行き渡らせて体中のあらゆる箇所から一気に放出して!

「バーニング・バーストォー!!」

 大河が叫んだ瞬間彼の全身から火が吹き上がり彼の周りにいたモンスターたちにも着火した。

アオォ――ン!アオォン!アオォー!熱ーい!なにこれ!なにこれ!?

 火が燃え移り噛みつくどころでなくなったモンスターたちは一目散に大河から離れて遠ざかって行き、それを確認した後タイガも放出を止めてぐったりとうなだれた。

「よかった。これで一件落ちゃ…」

 一息吐こうとしたした瞬間に全身から無数の針に刺されたような痛みが走って地面に転げ回った。

「~~~!!」

そうだった 、これがあるんだった!普段魔力放出してない箇所を使用した故の筋肉痛のような反動!全身に熱した熱々の栗を突き刺されているみたいにいてえぇぇーー!!

 じはらくのたうちまわって数分するとようやく痛みが少し引いていき、大河はようやく顔を上げることが出来た。するとこちらを心配そうに見つめる男性の姿があった。

「あの、大丈夫でしょうか?随分苦しんでおられたみたいですけど…」

「まあ、なんとか。…見苦しいところをお見せしてすいません」

「えっと、そんな事は…危ないところを助けていただきありがとうございました!それと…こんな物しかありませんがよければお使いください」

 そう言って男性は一枚の毛布を差し出した。

「はぁ、どうもありがとうございます」

 何故手渡されたのが毛布なのか意図がわからず困惑しているとエルノアの咳払いが聞こえてきた。

「ああ~タイガさん?一応私も乙女端くれでして、その…あまり殿方の肌を晒した姿を目にした事はありませんので隠していただけると有難いのですが」

 こちらに背を向けチラチラと少しだけこちらを覗き込むように視線を送るエルノア。彼女の趣味関係無しに頬を染め恥ずかしがる表情や仕草といい似つかわしくない言葉遣いといい、これまでの彼女とは打って変わった態度に驚愕した。

え?誰ですかこの方?あのドMエルノアのそっくりさん?双子?今までと何もかもが違くない?…というかこの人今何て言った?『肌を晒した姿』?

 気になって視線を落とすと肌色の四肢が目に映った。正確には地面の上を転がり回ったことで茶色く汚れてしまっているが衣類を身に纏っていない状態であることは確かだった。

なるほど、全裸だなこれは………全裸!!

「イイィヤアァーー!!」

 ようやく今の自分の状態を理解した大河はこの世界に来て初めて痛みによるものでなく羞恥による悲鳴を上げたのだった











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