七補士鶴姫は挟間を縫う

銀月

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第一話・月桴高校

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私立月桴高校。
『自由と規律の秤を識る』というスローガンを掲げた一風変わったこの高校は、不良と秀才がおよそ半々で共生をしている。
その最大の特徴は、単位や出席日数というものを重視しないことだ。
卒業するには単位ではなく、定期考査での一定の成績と実力テストを突破する必要がある。
授業予定は一応組まれているものの、教室に来るかは生徒の自由だ。

その代わり、生徒側にはいくつかの規律を守ることを定められている。
違反回数を超えると有無を言わさず退学というシステムだ。
退学が決まれば、父兄が出てこようと、司法が介入しようとしてもどういう訳か覆すことができない。

一・授業に出ない場合でも、授業中の生徒及び教師の妨害をしてはいけない。妨害とは私語含む迷惑行為全般である。授業を受ける場合も同様である。一度の注意で改善されない場合は規定違反とみなす。

二・定期考査の突破には、年三回実施される考査の内二回、全教科総合点の7割を獲得しなければ定期考査は突破したと見なされず、留年が確定する。レポートや課外活動での取得は認められない。なお、三年生は定期考査はなく、十二月の実力テストで八割以上の得点で卒業が認められる。

三・定期考査・実力テスト当日にやむを得ない体調不良・入院を伴う怪我があった場合は、別日(教師と生徒で実地日を決める)に別室で考査(テスト)を実施する。日にちを決められるのは一度のみで変更はできず、当日受けなかった場合は留年及び規定違反とみなす。

四・当校生徒、教師は言うに及ばず、社会で暴言、暴力、非行と定められる行為を確認されれば即座に規定違反を四回分加算する。

五・違反回数五回を超えた時点で即退学とみなす。

六・留年は七年まで可能であり、超過した場合は自主退学扱いとなる。

他にもいくつか規定はあるが、この六つが基本的な規定である。
この六点を守っていれば、バイトをしようが授業にでまいが、学校でゲームをしようが何も咎められることはない。
体育館が空いていれば何人かで運動をしてもいい。

ただし、授業を欠席した状態で定期考査や実力テストを突破できるなら…という話だ。
月桴高校の定期考査は出題範囲は授業中に提示され、問題も高い総合力が必要とされる。
要は、授業を聞いていないと『得点を得ることが非常に難しい』問題が複数設定され、総合点で合格点数を取ることができないシステムだ。

留年すればその年数と年度に応じて別のクラスが用意されており、通常クラスとは別に作られている卒業テストに合格すれば卒業できる。

入学にも条件はない。入りたければ入学願書を書けばいいだけだ。
そんなシステムであるため、この高校には不良と秀才で二分化される校風になっているのだ。
だが、この規定は厳守されるものであるため、不良と他の生徒には傍から見れば奇妙な関係性が生まれている。

勉強を教え合い、ちょっかいをかけられている時は必ず誰かが牽制する。
その関係がいつのまにか当たり前になっているのだ。

そんな月桴高校で、七補士は養護教諭として今日も保健室に鎮座していた。
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