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幼少期編
不本意な成熟
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「う…………あ゛ッ」
ずくんずくんと体の奥に宿った炎が身を焦がす。
もう何度も衝動を解き放ったのにに、一向に収まる気配がない。
ヒートアタックの現場でうずくまるレオンを目にした瞬間、目の前が怒りで真っ赤に染まった。
その時、発現しかけていたアルファ性が強制的に覚醒したことにより、今俺のフェロモンは乱れに乱れている。
徐々に成熟するはずだった体とバース性の均衡が崩れたんだ。オメガのヒートフェロモンを散々浴びたのも悪かった。
無理に発言した強いバース性に引っ張られ、一時的なアルファの発情状態。つまりラットに陥った。
本来ならば、つがいのオメガと共に昇華させるはずの欲を一人で堪えねばならず、頭がおかしくなりそうだ。
「れお、ん……っ、れおん……ッ」
駄目だ。やめろ。思い浮かべるな。
ぐつぐつと茹るような思考の中。何度も何度も反芻するのは、レオンが俺の腕の中で意識を失った姿。
そんな彼が、俺を欲に蕩けた目で見てくる姿。
違う。レオンにそんなことを求めていない。なんで、どうして。俺はレオンのこんな姿を思い浮かべているんだ。
オメガたちがさまざまな欲を孕んだ目でレオンを見ることに不快感を覚えていたくせに。他でもない俺自身がそんな目を向けるのか。
玄関ホールでレオンを抱き上げ、保健室に向かう途中。ヒートアタックに気づいた上級生と先生方がやってきた。
レオンを他の誰かに預けるのが嫌で、急に発現したアルファの威圧フェロモンをコントロールすることもできずにいた。
レオンを早く診せなければという思いはあるのに、どうにも本能が従わない。
俺がレオンを守らなければという想いばかりが先行して、正しい判断が下せなかった。
周囲も、正規の手順で覚醒したわけではない不安定な俺を刺激するのもはばかられ、誰にもどうにもできずに膠着状態に陥ったころ、ディラン先輩とセルジュ先輩が来てくれた。
「カイル!俺に任せろ。誰にもレオンハルトを傷つけさせん!」
「カイル、大丈夫。私たちは味方だ。大丈夫、もう安全だ。周囲を威圧する必要はないよ」
「その通りだ!もしこの状況を利用する輩がいたら、この俺が守ってみせるぞ!!」
「ディランの強さは君も知っているだろう?だから大丈夫、ね?私たちを信じてくれ」
繰り返し、大丈夫。危機は去った。自分たちが守ると告げられ、半ば意識を飛ばしながらレオンを托したことを覚えている。
情けない。結局最後は先輩だよりか。自分一人では何もできない、どうしようもない弱者め。と、自分を責めることしかできなかった。
朦朧とする意識の中、俺自身もその場ですぐに医師の診察を受けることになった。
側にいるといつまでも俺のアルファ性を刺激するからと、ディラン先輩によって運ばれていくレオンの姿。
嫌だ止めろと叫びたい。連れて行かないでくれ。レオンに触れるなと叫びだしそうになる俺の手を、セルジュ先輩が握っていた。
しきりに大丈夫だから、信じてほしいと懇願するセルジュ先輩を前に、そんな気もしぼんでいく。
それなのに、グラグラとレオンに対する執着と独占欲だけが煮詰められて濃ゆくなる。
その間にも進んだ医師による診察で、発現熱とラットのような症状が一気にくるだろうから溜め込まずに発散しなさいと言われこの別室に送られたのだ。
寮とは違う、急なラットやヒートのための隔離病棟。
周囲とのつながりは扉に付けられた食事をやり取りする穴だけだ。
内側から鍵を開けなければならないここは、望まぬ性交から生徒を守ることに適している。
その、普段とは違う匂いのするベッドの上で、ひたすら本能に突き動かされる思考に抗う。
「ハ…………ッ、れおん」
ちがう。やめろ。女の体を思い浮かべるんだ。
柔らかい体、豊満な脂肪。滑らかな細い指先、白銀のサラサラとした髪。アイスブルーの潤んだ瞳。
やめろ、違う。これは駄目だ。これはひどい裏切りだ。
何度も何度も振り払うのに、いつも最後の最後でそれがレオンの顔に置き換わる。
なんで、どうして。やめてくれ。レオンは親友だ。親友でなければならない。そうでなければいけないのに。こんなことになって、これからどんな表情をレオンに向ければいい?
こんなことをレオンに知られたらどう思われる。
オメガの欲を孕んだ目に嫌悪を隠そうともしなかったレオンに知られるのか?駄目だ。それだけは。
軽蔑だけではきっとすまない。二度と、陽だまりの中レオンと昼寝をすることも叶わなくなる。それだけは嫌だ。
何かの気の迷いに違いない。そうでなくてはならないのだ。
初めて中てられたオメガのフェロモンと、その時一番近くにいたレオンの姿とを混同しているだけだ。そうでなくてはならないのだ。
女だ。女の体を想像するんだ。
白銀の美しい髪でも、アイスブルーの暖かな瞳でも、少年から青年へと移り変わるつつあるうっすら筋肉のついた締まりのある体つきでもなく。それとは真逆の女の姿で塗り替えなければ。
押し込み、蓋をし、塗り替えるんだ。二度と開かないように。二度とこんなことを思い浮かべることがないように。
親友からは程遠い。そんな姿で。
ずくんずくんと体の奥に宿った炎が身を焦がす。
もう何度も衝動を解き放ったのにに、一向に収まる気配がない。
ヒートアタックの現場でうずくまるレオンを目にした瞬間、目の前が怒りで真っ赤に染まった。
その時、発現しかけていたアルファ性が強制的に覚醒したことにより、今俺のフェロモンは乱れに乱れている。
徐々に成熟するはずだった体とバース性の均衡が崩れたんだ。オメガのヒートフェロモンを散々浴びたのも悪かった。
無理に発言した強いバース性に引っ張られ、一時的なアルファの発情状態。つまりラットに陥った。
本来ならば、つがいのオメガと共に昇華させるはずの欲を一人で堪えねばならず、頭がおかしくなりそうだ。
「れお、ん……っ、れおん……ッ」
駄目だ。やめろ。思い浮かべるな。
ぐつぐつと茹るような思考の中。何度も何度も反芻するのは、レオンが俺の腕の中で意識を失った姿。
そんな彼が、俺を欲に蕩けた目で見てくる姿。
違う。レオンにそんなことを求めていない。なんで、どうして。俺はレオンのこんな姿を思い浮かべているんだ。
オメガたちがさまざまな欲を孕んだ目でレオンを見ることに不快感を覚えていたくせに。他でもない俺自身がそんな目を向けるのか。
玄関ホールでレオンを抱き上げ、保健室に向かう途中。ヒートアタックに気づいた上級生と先生方がやってきた。
レオンを他の誰かに預けるのが嫌で、急に発現したアルファの威圧フェロモンをコントロールすることもできずにいた。
レオンを早く診せなければという思いはあるのに、どうにも本能が従わない。
俺がレオンを守らなければという想いばかりが先行して、正しい判断が下せなかった。
周囲も、正規の手順で覚醒したわけではない不安定な俺を刺激するのもはばかられ、誰にもどうにもできずに膠着状態に陥ったころ、ディラン先輩とセルジュ先輩が来てくれた。
「カイル!俺に任せろ。誰にもレオンハルトを傷つけさせん!」
「カイル、大丈夫。私たちは味方だ。大丈夫、もう安全だ。周囲を威圧する必要はないよ」
「その通りだ!もしこの状況を利用する輩がいたら、この俺が守ってみせるぞ!!」
「ディランの強さは君も知っているだろう?だから大丈夫、ね?私たちを信じてくれ」
繰り返し、大丈夫。危機は去った。自分たちが守ると告げられ、半ば意識を飛ばしながらレオンを托したことを覚えている。
情けない。結局最後は先輩だよりか。自分一人では何もできない、どうしようもない弱者め。と、自分を責めることしかできなかった。
朦朧とする意識の中、俺自身もその場ですぐに医師の診察を受けることになった。
側にいるといつまでも俺のアルファ性を刺激するからと、ディラン先輩によって運ばれていくレオンの姿。
嫌だ止めろと叫びたい。連れて行かないでくれ。レオンに触れるなと叫びだしそうになる俺の手を、セルジュ先輩が握っていた。
しきりに大丈夫だから、信じてほしいと懇願するセルジュ先輩を前に、そんな気もしぼんでいく。
それなのに、グラグラとレオンに対する執着と独占欲だけが煮詰められて濃ゆくなる。
その間にも進んだ医師による診察で、発現熱とラットのような症状が一気にくるだろうから溜め込まずに発散しなさいと言われこの別室に送られたのだ。
寮とは違う、急なラットやヒートのための隔離病棟。
周囲とのつながりは扉に付けられた食事をやり取りする穴だけだ。
内側から鍵を開けなければならないここは、望まぬ性交から生徒を守ることに適している。
その、普段とは違う匂いのするベッドの上で、ひたすら本能に突き動かされる思考に抗う。
「ハ…………ッ、れおん」
ちがう。やめろ。女の体を思い浮かべるんだ。
柔らかい体、豊満な脂肪。滑らかな細い指先、白銀のサラサラとした髪。アイスブルーの潤んだ瞳。
やめろ、違う。これは駄目だ。これはひどい裏切りだ。
何度も何度も振り払うのに、いつも最後の最後でそれがレオンの顔に置き換わる。
なんで、どうして。やめてくれ。レオンは親友だ。親友でなければならない。そうでなければいけないのに。こんなことになって、これからどんな表情をレオンに向ければいい?
こんなことをレオンに知られたらどう思われる。
オメガの欲を孕んだ目に嫌悪を隠そうともしなかったレオンに知られるのか?駄目だ。それだけは。
軽蔑だけではきっとすまない。二度と、陽だまりの中レオンと昼寝をすることも叶わなくなる。それだけは嫌だ。
何かの気の迷いに違いない。そうでなくてはならないのだ。
初めて中てられたオメガのフェロモンと、その時一番近くにいたレオンの姿とを混同しているだけだ。そうでなくてはならないのだ。
女だ。女の体を想像するんだ。
白銀の美しい髪でも、アイスブルーの暖かな瞳でも、少年から青年へと移り変わるつつあるうっすら筋肉のついた締まりのある体つきでもなく。それとは真逆の女の姿で塗り替えなければ。
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親友からは程遠い。そんな姿で。
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