α主人公の友人モブαのはずが、なぜか俺が迫られている。

宵のうさぎ

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青年期編

『転化』

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 学園の初日の授業は精霊契約と各科の講義説明だけで終わる。
 校舎にとどまっていても鬱陶しい視線が突き刺さるだけだ。高位貴族だから慣れているとはいえ、進んで見世物になるつもりは早々ない。

 だから早々に、カイルと一緒に二人でカイルの寮の部屋へと引き上げることにした。



 月の女神と太陽の男神に直接侍る六属性の精霊王。その精霊王の下には、上級、中級、下級と呼ばれる精霊たちがいる。
 精霊王は人界には降りてこないので、上級が実質的な最高位精霊だ。
 人類史上、まだ数えられる程度の人数しか契約に至っていない。

 契約の時、僕はずっとカイルのことを考えていた。

 カイルのことを思い浮かべるだけで、胸の内から燃え上がるほどの想いが沸き上がる。
 いったいいつになれば僕はオメガになれるのか。カイルのつがいになれるのか。
 焦れるような思いと共に、どうやったって消すことができない愛があふれ出すのだ。

 カイルへの想いがそのまま形を得たような暖かな火の精霊が僕の胸に宿ったとき、僕のこの愛が二柱の神に。ひいては世界に認められた気がした。

「カイルは風の精霊と契約したのか」
「そういうレオンは火の精霊?なんだか意外だな」

 契約した精霊は基本的に契約者の体の中で大人しくさせておくのがマナーだ。
 なにせ、精霊は魔法を使える。武器をみだらに見せるのは歓迎されない。
 しかし学園では話が別だ。交流を持ち、自身の精霊を理解するために。その力をコントロールする術を学ぶために顕現させておくのが推奨されている。

「精霊との契約の時、僕はずっとカイルのことを考えていたんだ。この、燃えるようなカイルへの愛が火の精霊へと姿を変えたのなら、それは少し誇らしいよ」
 僕の言葉に、カイルが目尻を赤く染めてゆっくりと僕へ顔を近づけた。

「んっ、は……っ」
 覆いかぶさるようにソファに押し倒され、そのまま上からカイルのフェロモンものしかかる。
 筋肉が付いた分厚い体と、深みの増した重いフェロモンに押さえつけられ身動きが取れない。
「はぁ……、かわいい……」
 思わずと言ったようにそうこぼしたカイルに、口の端が上がるのがわかる。
 昔はあれほど暗い髪の女に可愛いと漏らしていたカイルが、二度と僕以外をそう形容することがないのだと実感するたびにどうしようもない優越感が沸き起こる。
 今後、カイルのこの甘い声を向けられるのは僕一人なのだと実感できるから。
 


「レオン、首を噛ませて」
 カイルが僕の首筋に唇を寄せ歯を立てて来た。
 そのいつもと変わらない求愛行動に、ズクリと胎の奥がうずくような感覚を覚えびくりと跳ねる。
「ゃ……ッ、まって、くれ……ッ」
 ちゅっちゅっと何度もリップ音を鳴らして首筋に吸い付かれるたびに、違和感は大きくなっていく。
 カイルとの触れ合いの際、熱くなるのはいつだって女やオメガを孕ませる方の部位なのに。それなのに、今日はどうしようもなく胎の奥がうずいて仕方がない。

「なに、か……、おかしいんだッ」
「レオン?」
 カイルが僕から体を離し、宥めるように体に手を滑らせた。
「ンぁッ!」
 びくびくと腰が跳ね、自身の下穿きを汚してしまったのがわかった。
 今までにない反応に、自分自身でも付いて行けずに身を震わせることしかできない。

「んッ!ぁ、お、なか……ッ、あつい……っ」
 ドクドクと血が全身を早く駆け巡り始め、それに伴い上がっていく体温が煩わしい。
「ひぅッ!?」
 どろりと、濡れるはずのない尻が濡れる未知の感覚に背筋がゾクゾク粟立った。

 フェロモンの制御が効かずに甘酸っぱい匂いが辺り一面に充満し、自分の匂いはこんなにも甘かっただろうかと一瞬疑問が首を擡げた。
 しかし、すぐに下腹部からずくずくと融けそうなほどの耐え難い甘い疼きに思考が散り散りになりそうになる。
 体内が、まるで何かを食むようにぐにぐにと蠢いているのが自分でも分かった。
 胎の奥がナニカを求めて拓く感覚に、まさかと一つの可能性に行き着く。

「ぁっ、かい、るッ。ヒー、トが……ッ、きたかもっ」
 助けを求めるようにカイルへと手を伸ばすと、目をまぁるく見開いたアルファが、僕をギラギラとした瞳で見下ろしていた。
「あッ!!」
 たったそれだけのことに、自分の心の中の深い部分が満たされる感覚。
 これがオメガの本能なのだろう。アルファであった今まで感じたことのない多好感に体を震わせていると、カイルが僕の体を抱き上げた。
 それすらも快感へと繋がってしまう。

 抱きかかえられた腕の中、カイルの濃いフェロモンの匂いに頭がくらくらする。
 匂いが特に濃ゆいカイルのシャツを引っ張りスペースができると、迷うことなくそこに顔を突っ込んだ。
 頭上から、カイルの苛立ちまぎれの舌打ちが聞こえてきたが、カイルに甘えたい欲求が収まらなくてそのまま素肌に舌を這わす。

「~~~~ッ!!後で、泣いてもやめないぞッ!」
「やめないで……っ、ぼくを、かんでくれ」
 カイルには珍しく、やや乱暴に僕はベッドの中央へと放り投げられた。
 これまで、僕との触れ合いの際には絶対脱ごうとしなかった服を脱ぎ捨てたカイルが、僕の上へと覆いかぶさる。



「レオン。俺の欲を受け止めてくれ」


 この後、僕が煽りに煽った飢えた獣に、足腰が立たなくなるほど貪られたのは言うまでもない。
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