まだ部屋のないメイドです。

炭酸水『しっぽのきもち』

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ホテルのロビー

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 朝食を終えた4人はホテルのロビーを通った。古き良き時代を思わせるアンティークなフロント、中央フロアーへと広がる螺旋階段は修繕の跡すら品格を感じさせる佇まいだった。

 ルナは昨晩は気が付かなかったホテルの美しさに目を見張るが、出立で賑わうロビーで見たくないものまで見えてしまった。

 ホテルの従業員の何人かの命の光が澱んで目に映る。見渡すと、客にも一人二人と同じ様に見える……この場の多くの者の命の光は普通に見えのだが……。

『油断してた……ここは街なんだわ……公爵領の片田舎とは違う……』

 詰まるように息をするルナに気が付いたマティー達が声を掛ける。

「ルナ、どうかした? 」
「具合が悪いのか? 」

 3人の呼びかけにルナは気を張った。

「……大丈夫です」

 そう答えたルナの顔からは血色が失せていた。口元がカタカタと震える。

『そうだった。人が多いからだわ……だから、死ぬ人も……多い』

 ルナはオークラルドの街に来てしまった事を後悔した。もう一つの異能の力だけはコントロール外だった。恐る恐る、フィンリーとウォルカー、マティーを見ると3人とも命の光がちゃんと灯っていた。

 それだけでも、ルナはホッとする……が、同時に自分の周りの人間だけでも助かれば良いのか? という自問に追い詰められた。

 私には何も出来ないのに!!

「すみません、もう平気です」

 ……大丈夫、慣れている……ずっと見てきたんだから。ルナは自分に言い聞かせた。フィンリーが予定の中止を申し出ようとした時、4人の前に1人の少女が現れた。

「お兄さま! ウィンリー様! 」

 ホテルの玄関から駆け寄る少女は、ウォルカーの妹だった。ウォルカーにハグをして、ウィンリーには手の甲にキスをねだった。マティーとルナは目もくれないようだった。

「お兄さまが昨夜いらっしゃらないから、こちらかなと思って来てみましたのよ?」

「やぁ、おはようリーザ。父さんには、ちゃんとここに来ることを伝えたのかい? 」

「ええ、ちゃんと伝えたわ 」

「そうか、じゃあ、こちらにおいで。フィンリーも来てくれるか? 」

 と、優しくウォルカーが微笑むと、ウォルカーはリーザの手を引いて、フィンリーとホテルの奥に向かっていった。

「ルナ、本当に大丈夫? 」

「あ、本当に、大丈夫なの。ビックリさせてごめんなさい」

 マティーが心配そうにルナの肩に手を掛けて顔色を覗いた。ルナの頬に赤みが戻ったのを見て、マティーがホッとした。

 ロビーに残されたマティーとルナは、待ち合わせの時間を確認してそれぞれの部屋に一度戻る約束をした。

 部屋へと戻る階段を上がるルナの周りを小さな者たちが囁く。それはもうずっと繰り返されているのに、ルナの耳には届いていない。

「ルナ……ルナ……おねがい、わたしたちにこえをかけて。きいて、きいてほしいの。ゆるしてほしいの……」

 妖精たちがルナに危険を知らせたくてざわめいていた。
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