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第一章 ナヴィ 職業『村人A』編
3.トニー・マクレガン
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テリウス様……。
目の前にいたのは『勇者伝記』の主人公、勇者テリウスだった。
セミロングほどのブラウンの髪に、白銀のロングコート、背中に背負っている漆黒の大剣。間違いないわ。あのテリウス様だわ。しかも隣には女剣士のマリア、後ろには槍使いのライオと魔法使いのオネットかしら。本通りの勇者パーティーご一行ね。凄いわ。強そうなのはもちろんだけど、近くで見ると本当に圧巻だわ。
それにしても本当にかっこいいわね。ついていきたい。むしろ連れてって。あたしはやっぱり村人Aなんてごめんよ。勇者様達と冒険したいのぉ。
そんなことを考えながら、もぞもぞして目を輝かせていたナヴィにテリウスが話しかけた。
「あの」
「あ、はい! 冒険者様ですね、こんにち……」
「ごめん、それが目的じゃないんだ」
言い切る前にテリウスが口をはさんだ。
「この小屋にトニー・マクレガンというスーパーアドバイザークラスのおじいさんがいらっしゃるとお聞きしたのですが」
「南の方角に少し進むと『始まりの遺跡』というダンジョンがありますがいかがでしょう」
はっ、まだ今日の勤務時間終わってない…あたしこれしか言えない。って、なに、マスターアドバイザークラスって。
テリウスの隣にいた長身の槍使い、ライオがナヴィに近づきテリウスに言った。
「テリウス、これはただの村人Aだ。かなりのべっぴんだが、これ以上のこともこれ以下のことも話せないただのモブだ」
ライオは2メートルほどある身長から見下すようにナヴィを蔑む。
「ライオさん、それは少し言いすぎですよ……。しょうがないじゃないですか、あなたは悪くありませんよ」
魔法使いのオネットが注意する。
「ライオ、あんたやっぱ最低ね。悪かったわね村人さん」
女剣士マリアもそれに続いた。
このオネットやマリアの言葉もナヴィの慰めにはならなかった。むしろ逆効果である。
そっか、この人たちにとってはあたしはただのモブ…か。ただの村人の一人……よね。
自分の存在の小ささを改めて感じたナヴィは顔を下に向けた。
グスッグスッと鼻をすする音がかすかに聞こえる。
「その辺にしておけ。すまなかったね。メンバーの軽率な発言を許してくれ」
テリウスは軽く頭を下げる。
その時、接客をするエントランスの奥にある控室からギーッと鈍い音とともに白髪の老人が出てきた。
「トニー・マクレガンはわしじゃ。うちのかわいい孫娘に何をしたのかな」
いつもの優しい顔からは想像もできないほどの真剣な表情とオーラがトニーから見えた。
「おじいちゃん」
「ナヴィ、ありがとう。今日はもう仕事は終わりじゃ。下がっていなさい」
トニーの優しい微笑みはいつも通りだったが、その微笑みの奥にあるかすかな緊張感をナヴィは感じた。
「お姉ちゃん、行こう」
トニーと一緒に控室にいたエンフィーがトコトコと近づいてきてナヴィの手を握り、引っ張る。
「ちょっと、エンフィー!」
「では、話をお聞きしましょうか」
「えぇ、お願いします」
そう言うと勇者パーティーとトニーは席に座り、話し始めた。
エンフィーに引っ張られながら何かに気づくナヴィ。
あれ、そういえば長年村人としてやってきたおじいちゃんがダンジョンの案内ではなく普通にテリウス様達と話していたわ。どういうことかしら。
控室に戻り扉を閉めるとエンフィーが話し出す。
「そっか、ナヴィお姉ちゃんはあんまり知らないのよね。おじいちゃんのこと。仕事にも興味なかったし」
「え、どういうこと? それに村人のはずなのに、さっきあんなに勇者様たちと普通に会話することができてたのはどうしてなのかしら。エンフィーは知っているの?」
ナヴィが聞くとエンフィーは顎を上げ、腕を組み意気揚々と話した。
「そりゃお姉ちゃんよりはいろんなこと知ってるよ。たくさん勉強してるしね」
「あはは、そうね。さすがエンフィー。良ければその話詳しく聞かせてくれない?」
「その話はあと、それよりもお姉ちゃん。あっちの会話気にならない?」
「た、確かに。なんの話をしているのかしら」
「ちょっとだけ扉開けて聞いてみようよ」
「そうね、あんなおじいちゃんの表情も見たことなかったし」
エンフィーはばれないようにゆっくりと数センチ扉を開ける。控室はエントランスとそう遠くはない距離にあり、そこに耳を傾ける。
話に夢中でトニー達は扉が開いたことには気づかなかったが、すでに会話は終わりそうな雰囲気が漂っていた。
「では、承りました。お気をつけて」
「えぇ。ではまた。よろしくお願いします」
その言葉を聞いたエンフィーとナヴィは先ほどよりさらに扉を開け、勇者パーティーが小屋を出ていく姿を見送った。
「あ、テリウス様……」
一瞬だけ振り返るテリウス。確かに一瞬だったが、ナヴィと目が合い少し微笑む。
そしてもとに戻る瞬間、少しだけ顔が悲愴な顔つきになり、口が動く。
「え、今なんて言ったのかしら」
「ん、お姉ちゃんなんか見えたの?」
「いや、気のせいかしら。見間違いかも」
「ナヴィ、エンフィー。二人とも何をしているんだい」
音も立てずにトニーはナヴィ達の後ろに立っていた。
「「あ、おじいちゃん。お疲れ様」」
いつの間に……。
「さぁ今日の仕事は終わりじゃ。夜ご飯にするぞい。ふぉふぉ」
良かった。いつものおじいちゃんだ。
少しほっとした表情を見せるナヴィとエンフィー。
「ご飯も食べてお風呂も入ったし、寝ましょうか。おじいちゃん、エンフィーおやすみなさい」
「「おやすみ」」
三人はそれぞれの部屋へと入っていった。
いつも通りの生活が終わり。いつも通り布団に入る。あたし案外この異世界生活楽しんでるかも。明日も早いしまた朝から頑張らないとね。
そう意気込むといつも通りの時間にしっかりと眠りについた。
次の日の朝。
トニー・マクレガンは姿を消した。あたし達二人を残して。
目の前にいたのは『勇者伝記』の主人公、勇者テリウスだった。
セミロングほどのブラウンの髪に、白銀のロングコート、背中に背負っている漆黒の大剣。間違いないわ。あのテリウス様だわ。しかも隣には女剣士のマリア、後ろには槍使いのライオと魔法使いのオネットかしら。本通りの勇者パーティーご一行ね。凄いわ。強そうなのはもちろんだけど、近くで見ると本当に圧巻だわ。
それにしても本当にかっこいいわね。ついていきたい。むしろ連れてって。あたしはやっぱり村人Aなんてごめんよ。勇者様達と冒険したいのぉ。
そんなことを考えながら、もぞもぞして目を輝かせていたナヴィにテリウスが話しかけた。
「あの」
「あ、はい! 冒険者様ですね、こんにち……」
「ごめん、それが目的じゃないんだ」
言い切る前にテリウスが口をはさんだ。
「この小屋にトニー・マクレガンというスーパーアドバイザークラスのおじいさんがいらっしゃるとお聞きしたのですが」
「南の方角に少し進むと『始まりの遺跡』というダンジョンがありますがいかがでしょう」
はっ、まだ今日の勤務時間終わってない…あたしこれしか言えない。って、なに、マスターアドバイザークラスって。
テリウスの隣にいた長身の槍使い、ライオがナヴィに近づきテリウスに言った。
「テリウス、これはただの村人Aだ。かなりのべっぴんだが、これ以上のこともこれ以下のことも話せないただのモブだ」
ライオは2メートルほどある身長から見下すようにナヴィを蔑む。
「ライオさん、それは少し言いすぎですよ……。しょうがないじゃないですか、あなたは悪くありませんよ」
魔法使いのオネットが注意する。
「ライオ、あんたやっぱ最低ね。悪かったわね村人さん」
女剣士マリアもそれに続いた。
このオネットやマリアの言葉もナヴィの慰めにはならなかった。むしろ逆効果である。
そっか、この人たちにとってはあたしはただのモブ…か。ただの村人の一人……よね。
自分の存在の小ささを改めて感じたナヴィは顔を下に向けた。
グスッグスッと鼻をすする音がかすかに聞こえる。
「その辺にしておけ。すまなかったね。メンバーの軽率な発言を許してくれ」
テリウスは軽く頭を下げる。
その時、接客をするエントランスの奥にある控室からギーッと鈍い音とともに白髪の老人が出てきた。
「トニー・マクレガンはわしじゃ。うちのかわいい孫娘に何をしたのかな」
いつもの優しい顔からは想像もできないほどの真剣な表情とオーラがトニーから見えた。
「おじいちゃん」
「ナヴィ、ありがとう。今日はもう仕事は終わりじゃ。下がっていなさい」
トニーの優しい微笑みはいつも通りだったが、その微笑みの奥にあるかすかな緊張感をナヴィは感じた。
「お姉ちゃん、行こう」
トニーと一緒に控室にいたエンフィーがトコトコと近づいてきてナヴィの手を握り、引っ張る。
「ちょっと、エンフィー!」
「では、話をお聞きしましょうか」
「えぇ、お願いします」
そう言うと勇者パーティーとトニーは席に座り、話し始めた。
エンフィーに引っ張られながら何かに気づくナヴィ。
あれ、そういえば長年村人としてやってきたおじいちゃんがダンジョンの案内ではなく普通にテリウス様達と話していたわ。どういうことかしら。
控室に戻り扉を閉めるとエンフィーが話し出す。
「そっか、ナヴィお姉ちゃんはあんまり知らないのよね。おじいちゃんのこと。仕事にも興味なかったし」
「え、どういうこと? それに村人のはずなのに、さっきあんなに勇者様たちと普通に会話することができてたのはどうしてなのかしら。エンフィーは知っているの?」
ナヴィが聞くとエンフィーは顎を上げ、腕を組み意気揚々と話した。
「そりゃお姉ちゃんよりはいろんなこと知ってるよ。たくさん勉強してるしね」
「あはは、そうね。さすがエンフィー。良ければその話詳しく聞かせてくれない?」
「その話はあと、それよりもお姉ちゃん。あっちの会話気にならない?」
「た、確かに。なんの話をしているのかしら」
「ちょっとだけ扉開けて聞いてみようよ」
「そうね、あんなおじいちゃんの表情も見たことなかったし」
エンフィーはばれないようにゆっくりと数センチ扉を開ける。控室はエントランスとそう遠くはない距離にあり、そこに耳を傾ける。
話に夢中でトニー達は扉が開いたことには気づかなかったが、すでに会話は終わりそうな雰囲気が漂っていた。
「では、承りました。お気をつけて」
「えぇ。ではまた。よろしくお願いします」
その言葉を聞いたエンフィーとナヴィは先ほどよりさらに扉を開け、勇者パーティーが小屋を出ていく姿を見送った。
「あ、テリウス様……」
一瞬だけ振り返るテリウス。確かに一瞬だったが、ナヴィと目が合い少し微笑む。
そしてもとに戻る瞬間、少しだけ顔が悲愴な顔つきになり、口が動く。
「え、今なんて言ったのかしら」
「ん、お姉ちゃんなんか見えたの?」
「いや、気のせいかしら。見間違いかも」
「ナヴィ、エンフィー。二人とも何をしているんだい」
音も立てずにトニーはナヴィ達の後ろに立っていた。
「「あ、おじいちゃん。お疲れ様」」
いつの間に……。
「さぁ今日の仕事は終わりじゃ。夜ご飯にするぞい。ふぉふぉ」
良かった。いつものおじいちゃんだ。
少しほっとした表情を見せるナヴィとエンフィー。
「ご飯も食べてお風呂も入ったし、寝ましょうか。おじいちゃん、エンフィーおやすみなさい」
「「おやすみ」」
三人はそれぞれの部屋へと入っていった。
いつも通りの生活が終わり。いつも通り布団に入る。あたし案外この異世界生活楽しんでるかも。明日も早いしまた朝から頑張らないとね。
そう意気込むといつも通りの時間にしっかりと眠りについた。
次の日の朝。
トニー・マクレガンは姿を消した。あたし達二人を残して。
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