村人Aは勇者パーティーに入りたい! ~圧倒的モブが史上最高の案内人を目指します~

凛 捺也

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第一章 ナヴィ 職業『村人A』編

2.始まりは突然に

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とある日の昼下がり。


「南の方角に少し進むと『始まりの遺跡』というダンジョンがありますがいかかでしょう」

「なるほど、ありがとう。ではそこに向かうとします!」

「お気をつけていってらっしゃいませ」

 説明した村人Aは笑顔で手を振りながら見送った。


「お姉ちゃんお疲れ様。おじいちゃんが代わるから休憩していいって! はい、コーヒー淹れたよ!」

「うん、ありがとエンフィー。んーおいしい! それにしてもよくもまぁこんなぼろ小屋に毎日毎日冒険者が来るわね」

「まぁこういう案内はうちしかしてないしね。それにしても、だんだん様になってきたんじゃないのぉ、村人Aさーん。ぷっ」

「殴るわよ。休憩中以外これしか話せないなんてつまらないにもほどがあるわ。そんなことよりおじいちゃん手伝ってきて」

「ぶー。わかりましたー。またあとでね!」

 エンフィーは膨れた顔をしながらトニーの元へ戻っていった。



 ふーつかれたぁー。こっちに来て大体一か月くらいかな。仕事は簡単ですぐ慣れたけど単純作業で面白みがないわね。いつまでこんなことやるのかしら。


 それより仕事が終わってからトニーおじいちゃんや、エンフィーと生活していくうちに色んなことがわかってきたわ。


 まずあたしナヴィについて、それとなく聞いてみたけどどうやら割とあたしみたいな性格をしていたらしい。勇者様に憧れる何でもできちゃう女の子だったそう。

 年も同じで十八歳。あんまり性格とかも矯正しなくて良さそうなのが一安心って感じ。容姿も現実世界とほとんど変わらず黒髪ロングの整った目鼻立ち、青い瞳の猫目。スタイルもそのままかな。せめてこのボロ服だけ何とかしてもらえれば……。って無理か。


「はーいこちらコーヒーになりまーす!」
「おう、嬢ちゃんありがとな!」

 それでこのブロンド色のさらさらヘヤーに、青くて長いひらひらリボンをしているのが妹のエンフィー。現実世界でいう、いわゆる小悪魔系って感じの性格かしら。あとあたしに似た美少女、妹なんだから当たり前か。

 年は十二歳で、頭の回転も速い。そして何よりあたし思いですごくいい子なんだけど、たまにすごく馬鹿にしてくるのがね……まぁそれも含めて可愛いんだけど。

今はいろんな勉強をしながらここであたしやおじいちゃんの手伝いをしてくれるの。


「南の方角に少し進むと『始まりの遺跡』というダンジョンがありますがいかかでしょう」


 それで今、あたしと同じように冒険者にダンジョンの案内をしている白髪の男の人が、トニーおじいちゃん。
 村人として何十年も細々とやってたみたい。年齢的にはもうすぐ引退って感じかな。村では結構有名なおじいちゃんらしいんだけどそれ以上のことは全然教えてくれないの。

 まぁ優しくて頼りになるのはもちろんなんだけど、仕事に対しての熱意と責任感がありすぎるのがたまに傷。


 あとはこの世界についての本が部屋にたくさんあったから仕事終わりの時間を使っていくつか読んでみたの。

 舞台は『勇者伝記』と全く同じで魔王に支配された国ね。景色からして大方中世ヨーロッパって感じかしら。あたしたちの住んでいる村、オリバービレッジは王都より半日ほど南に歩いたところにあり別名『始まりの村』とも呼ばれているらしいわ。

 王都から出発した冒険者はまずはこの村を目指すらしいの。毎日平均五十組くらいの冒険者が来るのよ。


 ちなみにあたし達の行動が本通りになぞられてるのかは不明。ぼんやりとしか覚えてないし。でも、この家族の名前なんて一度たりとも出てこなかったことだけははっきりと覚えているわ。

 って誰に説明してるんだあたし。

「お姉ちゃん、そろそろ休憩終わりー! おじいちゃん大変そうだよ」

「あ、うん。いまいく!」
 休憩終わっちゃった……。

「おじいちゃん代わるよ!」

「おぉナヴィありがとう。最近は少し動くとすぐに息切れしてしまってのぉ」

「いいのよ、もうそういう年齢なんだから、無理しないで」

 近くにあった椅子に腰かけるトニーがナヴィの仕事姿をじっと観察する。

 ようやくピークが終わったのかナヴィも椅子の背もたれにどかっともたれかかった。

「ふーもうすぐ今日も終わりね。そんな大したことしてないのに何かしらこの疲労感」

「ふぉふぉ、それだけ仕事しているときに精魂込めて案内してるってことじゃよ」

「絶対違うわね。だってあたしこの仕事好きじゃないし。でも……」

「でも……なんじゃ」


「最初はただの客としか思ってなかった冒険者一人ひとりにもワクワクしている人や、自分の強さに自信がある人、しょうがなく来る人や、行きたくないって顔している人。自分にとって関係ない人でもこんなに違いがあるんだなって。何か他にもサポートできたら…そんな風に思える瞬間が増えた気がするわ」

「とはいえ、勤務時間中はダンジョンの案内しか冒険者様に話すことができないしどうすることもできないんだけどね、あはは」

 トニーは驚いた表情を一瞬見せたが、すぐにナヴィに向かってほほ笑んだ。

「ふぉふぉ、それだけしっかりと考えられていれば、これからきっといろんな冒険者様をサポートしていくことができるとわしは思うぞ。ナヴィは自分が思っているよりも優しく、頭もよい。きっと冒険者様からサポートしてほしいといわれる日も来るじゃろう」

 そっとナヴィの頭を撫でた。


「おじいちゃん。ありがとう。あたし頑張るね」
 サファイアのような青い瞳が潤む。

 数秒後ナヴィは何かに気づいたかのようにトニーに尋ねた

「待っておじいちゃん、サポートしていくって、それってどういうこ……」

 カランカラン、玄関からベルの音が鳴り響く。

「すみませーん。お尋ねしたいことがあるのですが」


「冒険者様ですね。こんにち……」

 ナヴィの口が止まる。




 え………

 テリウス様……

 目の前には『勇者伝記』の挿絵に描いてあった、勇者テリウスだった。
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