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第三章 冒険者同行編
15. 新たな仕事
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「じゃあエンフィー。行ってくるわね!」
「うん。今日から新しい仕事だね。頑張ってねお姉ちゃん!」
王都で買った杖とローブを着たナヴィは笑顔でエンフィーに手を振った。
「さぁ今日からはもっと忙しくなるぞー!」
自分の顔をパンパンと叩き、エンフィーは今日も情報提供に尽力する。
玄関の外では依頼者がナヴィを今か今かと待っていた。
「サム様。お待たせしました。それではダンジョンに向かいましょう」
「おう。ナヴィちゃん今日は頼むぜ!」
今日依頼してくださったのは、うちの常連でもあるサム様。刀使いでサム様を含めていつも三人のパーティーを組んでいるわ。三人とも最近レベル二十のタトゥーが出たそうだわ。
ナヴィはダンジョンに向かい歩いている最中にサムに依頼の詳細を聞いていた。
「サム様、今日は確か東に五キロほど進んだところにある『ゴブリンの遺跡』ですよね」
「あぁ、実はそこの奥にいるビッグゴブリンから中々レアな刀が入手できるみたいでな。ただ、そこのダンジョンが迷路みたいに複雑で一度諦めちまったんだよ」
「なるほど。それは大変ですね。でもご安心ください!」
ナヴィは自分の胸に勢いよく手を当てる。
「私は昨日エンフィーから聞いていたのでマップもすべて頭に入っております。お任せください!」
「おぉ、それは頼もしいね! ナヴィちゃん頼んだよ」
「はい!」
四人は森の中にある岩に囲まれたダンジョンの前に着いた。
「着きました。では中は暗いので私の案内通りにお願いします」
ナヴィの案内は完璧だった。圧倒的な情報量と的確な指示で順調にダンジョンを攻略していった。
遺跡を歩いている最中サムのパーティーはナヴィをべた褒めしていた。
「いやぁ、確かに案内所だけでもすごいなとは思ってたけど、同行してくれるとまさかここまで楽になるとは……」
「はい、本当にすごいです! ナヴィさんの案内には無駄がなくてとってもわかりやすいですし」
サムのパーティーの一人である短刀使いの少年マルクが言った。
「いいえ、私なんてそんなまだまだです」
ナヴィは頬を赤らめながら控えめに応える。
「ナヴィさん謙遜なさらないでください。それにモンスターとの戦闘でのナヴィさんの補助魔法は非常に助かりましたし」
火属性魔法使いの女性メリーも続いた。
「いやーほんとパーティーに入ってもらいたいくらいだよ。な、二人とも!」
うんうんと二人は頷く。
ナヴィはそれに苦笑いで応える。
「あはは、パーティーになれるのは『上級ガイド』より更に上の『アドバイザー』からだけですので私はまだまだですよ」
「ナヴィちゃんならそこまであっという間だよ! 先に予約していいかな?」
ナヴィの手を握り笑顔で話すサムに、ナヴィは顔をそらし対応する。
「すみません、実は私にはもう入りたいパーティーがあるんです……。私はその人のために『スーパーアドバイザー』を目指しているので。サム様の期待には応えられません」
真剣に応えたナヴィに対して、軽率な発言をしてしまったサムは反省した。
「ナヴィちゃん、すまない。そこまで考えてるなんて。軽はずみの発言だった」
「いいえ。それに同行ならいつでもできますし!」
「そりゃそうだな。それじゃ毎日同行させちゃおうかな!」
「サム、それはそれでなんかいやらしいです」
「メリー冷たいな」
「サムさん僕も同意見です」
「マルクまで……」
サムは冗談のつもりで言ったことを鵜呑みにした二人の言葉にしゅんとしてしまった。
「ふふふふ」
ナヴィはくすくすと笑った。
「ナヴィさんどうしたんですか?」
「すみませんマルクさん。パーティーってなんかいいですね。戦闘している時にも思ったのですが、皆さんとつながっている気がして、すごく楽しいです」
あたしもテリウス様達とこんな風にできる日が来るのかしら。
その言葉に対してサム達は微笑んだ。
「あぁめっちゃいいぞパーティーは。一心同体だ! それは今日だけだがナヴィちゃんも一緒な」
あ、そっか今日だけはパーティーなんだ。あたしも。
ナヴィはパーティーの三人に笑顔を見せる。
「はい。ありがとうございます。サム様のパーティーは素敵なパーティーです!」
「よし、じゃあこの調子で一気にボスの部屋まで向かうぞ!」
「「おぉ!」」
地下三階に降りたところに、紫色の煙が漂う大きく重そうな扉があった。
扉の前で四人は入念にボスの情報の最終確認をしていた。
「ここがボスの部屋です。皆さん気を付けてください。ビッグゴブリンは大きさの割に非常に素速く攻撃を当てるのが至難の業と言われています」
「なるほど、そりゃ難しいな」
「えぇ、逆に体力はボスの中では少ない方ですので隙ができた瞬間を狙いましょう。一撃で倒せるスキルを各自温存してそこで叩くようにすればすぐに終わるはずです」
「オーケーだ、二人とも準備はいいか?」
「「はい!」」
「じゃあ行くぞ!」
サムがボスの部屋の扉を開けた。
「ウオオオオオオオオ!」
深緑色の巨体に巨大なこん棒を持ったモンスターがいた。
んー。想像以上にでかいわね。データが採りたいけど今は先に皆を支援しないと。
ビッグゴブリンがパーティーに向かってこん棒を振った。
ナヴィは素早く補助魔法をかけた。
「皆さん行きますよ!」 <アクセル!>
敏捷性を上げた三人は避けることができた。ナヴィは後方にいるため攻撃は当たらない。
パーティーは攻撃を開始した。
<ファイアーボール!>
<スラッシュ!>
<ファイアブレード!>
それぞれの攻撃をビッグゴブリンはするりと躱す。
「こいつ、ナヴィちゃんが言ってた通り相当速いぞ」
「えぇ、ほんとに。ぐあっ!」
「マルク!」
よそ見をしていたマルクにニ撃目のこん棒が当たる。
倒れたマルクは痛みでうまく立つことができず、そこに追い打ちを掛けるようにゴブリンはマルクの前に来た。
ゴブリンはマルクの前でこん棒を振り上げた。
「「マルク!」」
「サム様、メリー様!」
二人を呼んだナヴィはその瞬間大量の補助魔法を掛ける。
<ディレイムーブ!>
こん棒を振り上げたビッグゴブリンのスピードが緩くなった。
「二人とも! 今です! 魔力を一気に上げてください!」
<アクセル!>
<マジックグロウ!>
<アタックグロウ!>
ナヴィは二人の敏捷性と魔法攻撃、物理攻撃の能力が向上させた。
「来た! メリー、一気に行くぞ!」
「はい!」
<ファイアーブレード!>
<ファイアーメテオ!>
炎をまとった刀が背中を大きく切り裂き、正面からは無数の火の玉が直撃した。
二人の魔力が上昇した攻撃にゴブリンは一瞬で倒れた。
「た、助かったー」
「大丈夫ですか? マルク」
「ったく。心配かけんなよー」
「ははごめんね、骨とかは折れてないと思うけど」
安堵の笑みで話す三人にナヴィが近づく。
「皆様お疲れさまでした。マルク様、こちらへ」
<ヒール!>
マルクの体が白い光に包まれ傷が癒えていった。
「ここまで治るヒールは初めてだ。すごい魔力だねナヴィさん」
「お役に立ててよかったです」
ナヴィはほっとした表情で微笑んだ。
ふぅと一息つくと倒れたビッグゴブリンの後方に宝箱が現れる。
「お、これこれ」
「あ、サムさん待ってくださいよ!」
先に行くサムとマルクを残った二人が眺めていた。
「ナヴィさん、あなた村人の時から魔力を上げる練習でもしてたのでしょうか?」
「え、いいえ、特には何も……」
「あなたの魔力は私たちレベル二十のクラスを優に超えています。正直驚きました」
「あはは、だとしたらきっとおじいちゃんの譲りものだと思います」
「トニーさんですね。確かにそうかもしれません。しかしこうして私たちはあなたのおかげでダンジョンをクリアすることができました。本当にありがとう」
ナヴィの手をぎゅっと握った。
「メリー様……」
「おーい、メリー、ナヴィちゃん。お目当てのものが見つかった! 帰ろうぜ!」
「えぇ、今行きます」
メリーは走って二人のもとに向かった。
おじいちゃん、この仕事って本当に素晴らしいわ。主人公とか冒険者にこだわってた時のあたしがバカみたい。
「ナヴィさん。先行っちゃいますよ!」
遠くから先ほどとは打って変わっての元気なマルクの声が聞こえる。
「えぇ。ただいま」
ナヴィは笑顔で三人の中に入っていった。
サムのパーティーとは帰路で別れ、店に帰ってきたナヴィ。
「お姉ちゃん、おかえりなさい! はいコーヒーだよ!」
「ありがとうエンフィー」
笑顔でコーヒーを受け取った。
「その様子だと同行は成功したって感じかしら」
「まぁね。それに楽しかったわ」
「楽しかった?」
「えぇ、パーティーって素敵だなと思ったし、その人たちがボスを倒した後の安心した表情を見たとき、この仕事の良さにまた気づけた気がするわ」
……お姉ちゃん、どんどん遠くに行っちゃうなぁ。
エンフィーの顔がほんの少し悲し気な表情に変わる。
「エンフィー。どうかした?」
「ううん。何でもない。それよりお姉ちゃん。一か月後にお姉ちゃんご指名での予約が入りました!」
「え。どんな仕事かしら」
「レベル四十クラスの四人組パーティーで場所はあの東の今日行ったところからさらに奥にある『密林の神殿』よ」
ナヴィはエンフィーの言ったことに対し目を丸くした。
「え、あそこって確か魔王直属の部下が牛耳っているレベル五十クラスじゃないといけないところじゃ」
「そうなんだけどさ、何か妙に自信ありげだったし前払いでゴールド受け取っちゃったから断るに断れなくてね」
喉をごくりと大きく動かしため息をしながら応えた。
「んーならしょうがないわね。やるしかないか」
「よかった! お姉ちゃんなら大丈夫だよ!」
「それでもこの一か月であたし自身もかなり鍛えないとだめね」
「エンフィー。申し訳ないけどここから一か月あたしは同行を優先的に行うようにするわ」
「わかった! お姉ちゃん頑張ってね!」
この依頼が後にナヴィを苦しめることになるとは二人は知る由もなかった。
「うん。今日から新しい仕事だね。頑張ってねお姉ちゃん!」
王都で買った杖とローブを着たナヴィは笑顔でエンフィーに手を振った。
「さぁ今日からはもっと忙しくなるぞー!」
自分の顔をパンパンと叩き、エンフィーは今日も情報提供に尽力する。
玄関の外では依頼者がナヴィを今か今かと待っていた。
「サム様。お待たせしました。それではダンジョンに向かいましょう」
「おう。ナヴィちゃん今日は頼むぜ!」
今日依頼してくださったのは、うちの常連でもあるサム様。刀使いでサム様を含めていつも三人のパーティーを組んでいるわ。三人とも最近レベル二十のタトゥーが出たそうだわ。
ナヴィはダンジョンに向かい歩いている最中にサムに依頼の詳細を聞いていた。
「サム様、今日は確か東に五キロほど進んだところにある『ゴブリンの遺跡』ですよね」
「あぁ、実はそこの奥にいるビッグゴブリンから中々レアな刀が入手できるみたいでな。ただ、そこのダンジョンが迷路みたいに複雑で一度諦めちまったんだよ」
「なるほど。それは大変ですね。でもご安心ください!」
ナヴィは自分の胸に勢いよく手を当てる。
「私は昨日エンフィーから聞いていたのでマップもすべて頭に入っております。お任せください!」
「おぉ、それは頼もしいね! ナヴィちゃん頼んだよ」
「はい!」
四人は森の中にある岩に囲まれたダンジョンの前に着いた。
「着きました。では中は暗いので私の案内通りにお願いします」
ナヴィの案内は完璧だった。圧倒的な情報量と的確な指示で順調にダンジョンを攻略していった。
遺跡を歩いている最中サムのパーティーはナヴィをべた褒めしていた。
「いやぁ、確かに案内所だけでもすごいなとは思ってたけど、同行してくれるとまさかここまで楽になるとは……」
「はい、本当にすごいです! ナヴィさんの案内には無駄がなくてとってもわかりやすいですし」
サムのパーティーの一人である短刀使いの少年マルクが言った。
「いいえ、私なんてそんなまだまだです」
ナヴィは頬を赤らめながら控えめに応える。
「ナヴィさん謙遜なさらないでください。それにモンスターとの戦闘でのナヴィさんの補助魔法は非常に助かりましたし」
火属性魔法使いの女性メリーも続いた。
「いやーほんとパーティーに入ってもらいたいくらいだよ。な、二人とも!」
うんうんと二人は頷く。
ナヴィはそれに苦笑いで応える。
「あはは、パーティーになれるのは『上級ガイド』より更に上の『アドバイザー』からだけですので私はまだまだですよ」
「ナヴィちゃんならそこまであっという間だよ! 先に予約していいかな?」
ナヴィの手を握り笑顔で話すサムに、ナヴィは顔をそらし対応する。
「すみません、実は私にはもう入りたいパーティーがあるんです……。私はその人のために『スーパーアドバイザー』を目指しているので。サム様の期待には応えられません」
真剣に応えたナヴィに対して、軽率な発言をしてしまったサムは反省した。
「ナヴィちゃん、すまない。そこまで考えてるなんて。軽はずみの発言だった」
「いいえ。それに同行ならいつでもできますし!」
「そりゃそうだな。それじゃ毎日同行させちゃおうかな!」
「サム、それはそれでなんかいやらしいです」
「メリー冷たいな」
「サムさん僕も同意見です」
「マルクまで……」
サムは冗談のつもりで言ったことを鵜呑みにした二人の言葉にしゅんとしてしまった。
「ふふふふ」
ナヴィはくすくすと笑った。
「ナヴィさんどうしたんですか?」
「すみませんマルクさん。パーティーってなんかいいですね。戦闘している時にも思ったのですが、皆さんとつながっている気がして、すごく楽しいです」
あたしもテリウス様達とこんな風にできる日が来るのかしら。
その言葉に対してサム達は微笑んだ。
「あぁめっちゃいいぞパーティーは。一心同体だ! それは今日だけだがナヴィちゃんも一緒な」
あ、そっか今日だけはパーティーなんだ。あたしも。
ナヴィはパーティーの三人に笑顔を見せる。
「はい。ありがとうございます。サム様のパーティーは素敵なパーティーです!」
「よし、じゃあこの調子で一気にボスの部屋まで向かうぞ!」
「「おぉ!」」
地下三階に降りたところに、紫色の煙が漂う大きく重そうな扉があった。
扉の前で四人は入念にボスの情報の最終確認をしていた。
「ここがボスの部屋です。皆さん気を付けてください。ビッグゴブリンは大きさの割に非常に素速く攻撃を当てるのが至難の業と言われています」
「なるほど、そりゃ難しいな」
「えぇ、逆に体力はボスの中では少ない方ですので隙ができた瞬間を狙いましょう。一撃で倒せるスキルを各自温存してそこで叩くようにすればすぐに終わるはずです」
「オーケーだ、二人とも準備はいいか?」
「「はい!」」
「じゃあ行くぞ!」
サムがボスの部屋の扉を開けた。
「ウオオオオオオオオ!」
深緑色の巨体に巨大なこん棒を持ったモンスターがいた。
んー。想像以上にでかいわね。データが採りたいけど今は先に皆を支援しないと。
ビッグゴブリンがパーティーに向かってこん棒を振った。
ナヴィは素早く補助魔法をかけた。
「皆さん行きますよ!」 <アクセル!>
敏捷性を上げた三人は避けることができた。ナヴィは後方にいるため攻撃は当たらない。
パーティーは攻撃を開始した。
<ファイアーボール!>
<スラッシュ!>
<ファイアブレード!>
それぞれの攻撃をビッグゴブリンはするりと躱す。
「こいつ、ナヴィちゃんが言ってた通り相当速いぞ」
「えぇ、ほんとに。ぐあっ!」
「マルク!」
よそ見をしていたマルクにニ撃目のこん棒が当たる。
倒れたマルクは痛みでうまく立つことができず、そこに追い打ちを掛けるようにゴブリンはマルクの前に来た。
ゴブリンはマルクの前でこん棒を振り上げた。
「「マルク!」」
「サム様、メリー様!」
二人を呼んだナヴィはその瞬間大量の補助魔法を掛ける。
<ディレイムーブ!>
こん棒を振り上げたビッグゴブリンのスピードが緩くなった。
「二人とも! 今です! 魔力を一気に上げてください!」
<アクセル!>
<マジックグロウ!>
<アタックグロウ!>
ナヴィは二人の敏捷性と魔法攻撃、物理攻撃の能力が向上させた。
「来た! メリー、一気に行くぞ!」
「はい!」
<ファイアーブレード!>
<ファイアーメテオ!>
炎をまとった刀が背中を大きく切り裂き、正面からは無数の火の玉が直撃した。
二人の魔力が上昇した攻撃にゴブリンは一瞬で倒れた。
「た、助かったー」
「大丈夫ですか? マルク」
「ったく。心配かけんなよー」
「ははごめんね、骨とかは折れてないと思うけど」
安堵の笑みで話す三人にナヴィが近づく。
「皆様お疲れさまでした。マルク様、こちらへ」
<ヒール!>
マルクの体が白い光に包まれ傷が癒えていった。
「ここまで治るヒールは初めてだ。すごい魔力だねナヴィさん」
「お役に立ててよかったです」
ナヴィはほっとした表情で微笑んだ。
ふぅと一息つくと倒れたビッグゴブリンの後方に宝箱が現れる。
「お、これこれ」
「あ、サムさん待ってくださいよ!」
先に行くサムとマルクを残った二人が眺めていた。
「ナヴィさん、あなた村人の時から魔力を上げる練習でもしてたのでしょうか?」
「え、いいえ、特には何も……」
「あなたの魔力は私たちレベル二十のクラスを優に超えています。正直驚きました」
「あはは、だとしたらきっとおじいちゃんの譲りものだと思います」
「トニーさんですね。確かにそうかもしれません。しかしこうして私たちはあなたのおかげでダンジョンをクリアすることができました。本当にありがとう」
ナヴィの手をぎゅっと握った。
「メリー様……」
「おーい、メリー、ナヴィちゃん。お目当てのものが見つかった! 帰ろうぜ!」
「えぇ、今行きます」
メリーは走って二人のもとに向かった。
おじいちゃん、この仕事って本当に素晴らしいわ。主人公とか冒険者にこだわってた時のあたしがバカみたい。
「ナヴィさん。先行っちゃいますよ!」
遠くから先ほどとは打って変わっての元気なマルクの声が聞こえる。
「えぇ。ただいま」
ナヴィは笑顔で三人の中に入っていった。
サムのパーティーとは帰路で別れ、店に帰ってきたナヴィ。
「お姉ちゃん、おかえりなさい! はいコーヒーだよ!」
「ありがとうエンフィー」
笑顔でコーヒーを受け取った。
「その様子だと同行は成功したって感じかしら」
「まぁね。それに楽しかったわ」
「楽しかった?」
「えぇ、パーティーって素敵だなと思ったし、その人たちがボスを倒した後の安心した表情を見たとき、この仕事の良さにまた気づけた気がするわ」
……お姉ちゃん、どんどん遠くに行っちゃうなぁ。
エンフィーの顔がほんの少し悲し気な表情に変わる。
「エンフィー。どうかした?」
「ううん。何でもない。それよりお姉ちゃん。一か月後にお姉ちゃんご指名での予約が入りました!」
「え。どんな仕事かしら」
「レベル四十クラスの四人組パーティーで場所はあの東の今日行ったところからさらに奥にある『密林の神殿』よ」
ナヴィはエンフィーの言ったことに対し目を丸くした。
「え、あそこって確か魔王直属の部下が牛耳っているレベル五十クラスじゃないといけないところじゃ」
「そうなんだけどさ、何か妙に自信ありげだったし前払いでゴールド受け取っちゃったから断るに断れなくてね」
喉をごくりと大きく動かしため息をしながら応えた。
「んーならしょうがないわね。やるしかないか」
「よかった! お姉ちゃんなら大丈夫だよ!」
「それでもこの一か月であたし自身もかなり鍛えないとだめね」
「エンフィー。申し訳ないけどここから一か月あたしは同行を優先的に行うようにするわ」
「わかった! お姉ちゃん頑張ってね!」
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