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第三章 冒険者同行編
16.無謀なパーティー
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ナヴィが依頼を受けてから明日で一か月になる。
『始まりの遺跡』のダンジョンに向かうため、森の中を歩く二人の男女がいた。
「ナヴィさん。僕。本当にダンジョンなんて攻略できるのでしょうか」
剣の柄を震えながら持つ駆け出し冒険者コイルが言った。
「えぇ。大丈夫です。誰もが最初はコイル様と同じ駆け出し冒険者だったのですから。それに今日は私もいます。ご安心ください」
ナヴィはコイルに向かって微笑むと、コイルの震えていた手の上に優しく手を乗せる。
コイルが安心した表情になった瞬間、後ろから何か気配を感じた。
「ん。コイル様。剣を構えて下さい!」
「ナヴィさん?」
そこにはダンジョンに行くまでの道中によくいるスライムだった。
「コイル様。準備はよろしいですか?モンスターとの戦闘です」
「え、僕まだモンスターなんて倒したことなくて……」
「安心してください。私がおります。モンスターから目を逸らさず、動きを観察しましょう」
「はい!」
コイル様の手、まだ震えているわね。
「スライムは一定の距離を保てば攻撃を仕掛けてくることはありません。一度深呼吸をして一気に切りかかって下さい」
「深呼吸ですか。すーっ。はー。よし。くらえ!」
コイルの震えと体全体の力みが抜け、そのままスライムに切りかかった。
スライムも攻撃に移ったがナヴィが咄嗟に<アクセル>をコイルに掛け、その速度差でなす術もなくやられていった。
「僕。モンスターを倒したの……?」
「えぇ、初モンスター撃破おめでとうございます。深呼吸をした後からの動きは見事でしたよ」
ナヴィがコイルの手を取って祝福する。
「ありがとうございます。僕なんかできそうな気がしてきました!」
「はい、かなりの素質の持ち主だと確信いたしました」
<アクセル>を掛けられたのは気づいてない。まぁでもこれでコイル様の冒険者としての自信がついてくれればオーケーよ。
その思惑通り、コイルはダンジョンの道中、そしてダンジョンの攻略もナヴィの力を借りつつもクリアすることができた。
「コイル様、お疲れさまでした。初めてのダンジョンだったとは思えないほどの動きでしたよ」
「いえ、ナヴィさんのガイドのおかげです。ありがとうございます。いって」
最後のボスに攻撃されたコイルの腕が出血している。
<ヒール!>
コイルの傷が一瞬で直った。
「すごいよナヴィさん。一瞬で痛みが消えました」
「いえ。コイル様のおかげで私も魔力を温存できていたので」
お世辞っぽい言い方になってしまったけど、コイル様は確かにセンスがあるわね。ひょっとしたら結構上のランクまでいくんじゃ……。
「ナヴィさん。なんか胸のタトゥーが光ってるよ」
二つあったナヴィの胸のタトゥーにもう一つの輝きが生まれ始める。
「あ、これは。ついに来ましたね」
光の輝きとともに三つ目のタトゥーが胸に浮かんだ。
おぉと目を見開くコイル。
ナヴィは少し顔を赤めながら注意した。
「コイル様。そんなに見られたら私恥ずかしいです」
「あ、すみません!」
後ろに引き土下座をするコイル。
「いえ、それにこれで私も『上級ガイド』になることができました。コイル様のおかげでもありますよ。ありがとうございました」
ナヴィは深々とお辞儀をした。
「いえ、僕は何もしてないですよ。ナヴィさん今日は本当にありがとうございました!」
「はい。それでは帰りましょうか」
ナヴィとコイルは行きよりも軽快な足取りで村に帰っていった。
もう日暮れね、結構遅くなってしまったかしら。
いつも通り玄関の扉をゆっくりと開ける。
「ただいまー。エンフィー帰ったわよ」
「お姉ちゃんおかえり」
エンフィーはナヴィの胸をじーっとを見る。
「ついに『上級ガイド』になったのね! おめでとう。今日はご馳走にしないとね!」
目を輝かせナヴィに抱き着く。
「ご馳走なんていいわよ。いずれはなる予定だったんだし。でもありがとうエンフィー。良かったわ何とか明日に間に合って」
「明日が大一番だもんね。これで成功できたらうちのお店はまた大繁盛よ」
頬に手のひらを当て妄想をするエンフィーをナヴィは微笑ましく見守った。
「さぁナヴィお姉ちゃん。今日は早く食べて早く寝て明日に備えましょ!」
「えぇ。そうさせてもらうわ」
その後布団に着いたナヴィだったが、数時間眠れずにいた。
この一か月いろんな冒険者と同行してきた。コイル様のような駆け出し冒険者、サム様やハンナみたいなここらじゃベテランの冒険者。いろんな戦い方やモンスターのデータを取って、研究してきたけど……。
正直不安だわ。明日は初対面の冒険者様だし、モンスターやダンジョンの情報も完璧に調べきることができなかった。
窓の外を見るナヴィ。
「あら、今日は快晴だったはずなのに、星が見えないわね」
どうか明日からの旅が無事に終わりますように……。
次の日の朝、店の開店とともにとある四人の冒険者パーティーが入ってきた。
「いらっしゃいませ!」
エンフィーがいつものように元気よく挨拶をする。
軽装備をした紳士風の男が話し始めた。
「やぁ、今日ナヴィさんの同行を予約していたデニスです。」
奥にいたナヴィはデニスとそのパーティーを数十秒観察した。
来たわね、大剣に大盾、弓に魔法使いか。装備はいいけど……。えっちょっと待って。
ナヴィの息が止まる。
デニスといった男とその横にいる大盾がレベル四十のタトゥーだけど、後ろの弓と魔法使いの二人はレベル三十。そんな。
もう考えるのはやめて直接聞こうと、ナヴィはデニスの前に飛び出した。
「ナヴィは私です」
「おぉ、これから一週間よろしくねナヴィさん」
握手を求めるように手を出した。
「え、えぇ」
一応するけどさ。何この胡散臭い笑顔。
「デニス様、同行の前に一つお伺いしてもよろしいでしょうか」
「えぇ何なりと」
「私、今回はパーティー全員がレベル四十だけどどうしても行きたい、とお聞きしてこの依頼をお受けしました」
「しかし、後ろの方々はレベル三十のクラスですよね」
「あ、あぁ伝え間違えてしまいまして……」
額の汗をぬぐうデニス。
「今回の『密林の神殿』は魔王直属の配下が牛耳る、レベル五十以上の冒険者が必須のダンジョンになってます。デニス様達はこの現状でも勝算があるとお考えで?」
脅すような低いトーンの声と冷たい表情でナヴィは聞いた。
しかしデニスの返答は意外なものだった。
「えぇもちろんです。そこは任せてください。作戦もきっちりと立ててあります。俺達四人の連携はそこら辺のパーティーのそれとは違いますよ」
胸に手を当て背中を反らせた。
急に饒舌ね。何なのこの自信。逆に怖いけど。まぁ冒険者様を信じてあげるのも『上級ガイドの役目』よね。
少し固まりはしたが、表情を和らげ了承した。
「かしこまりました。そうしましたらデニス様、ここから一週間同行させていただきます。よろしくお願いします」
「あぁよろしく」
デニスとそのパーティーはにやりと笑った。
ナヴィはお辞儀をしていたため気づかなかったが、エンフィーはその歪んだ笑顔に気づいた。
出発の準備を終え玄関から出ようとするナヴィ。
「お姉ちゃん。耳貸して!」
エンフィーが背伸びをしナヴィの耳に手を当てた。
「何エンフィー」
「あの人たちなんか危なっかしいわよ。何かあったらすぐに依頼を放棄してでも帰ってきてね」
「分かってるわエンフィー。必ず帰ってくる。あなたを一人には絶対にさせない。約束するわ」
エンフィーを抱きしめるナヴィ。
「うん約束。行ってらっしゃい」
こうしてナヴィはデニスの依頼を受け一週間という長い期間を共に過ごすことになった。
ナヴィが出発してから二時間ほど経った時、二人の店には見覚えのある冒険者が力任せに勢いよく玄関のドアを開けた。
「ナヴィ!」
「あれ、ハンナさん。どうしたの」
「エンフィーちゃん。ナヴィはもう行っちゃった?」
いつにもない真剣な表情でエンフィーを見つめるハンナ。
「えぇ、デニスという冒険者様のパーティーと一緒に一週間かけて『密林の神殿』に向かったわ」
「くっそ。僕がもう少し早く気づいていれば……」
ハンナは悔しそうに爪を噛んだ。
「ハンナさん。やっぱりあのデニスという男のパーティーって何かあるんですか?」
「あぁ。大ありだ。あいつらの王都での呼び名は……」
ハンナの方を怯えながらもまっすぐ見つめるエンフィーにハンナが言う。
「あいつらの通り名は……。『ガイド殺し』だ」
『始まりの遺跡』のダンジョンに向かうため、森の中を歩く二人の男女がいた。
「ナヴィさん。僕。本当にダンジョンなんて攻略できるのでしょうか」
剣の柄を震えながら持つ駆け出し冒険者コイルが言った。
「えぇ。大丈夫です。誰もが最初はコイル様と同じ駆け出し冒険者だったのですから。それに今日は私もいます。ご安心ください」
ナヴィはコイルに向かって微笑むと、コイルの震えていた手の上に優しく手を乗せる。
コイルが安心した表情になった瞬間、後ろから何か気配を感じた。
「ん。コイル様。剣を構えて下さい!」
「ナヴィさん?」
そこにはダンジョンに行くまでの道中によくいるスライムだった。
「コイル様。準備はよろしいですか?モンスターとの戦闘です」
「え、僕まだモンスターなんて倒したことなくて……」
「安心してください。私がおります。モンスターから目を逸らさず、動きを観察しましょう」
「はい!」
コイル様の手、まだ震えているわね。
「スライムは一定の距離を保てば攻撃を仕掛けてくることはありません。一度深呼吸をして一気に切りかかって下さい」
「深呼吸ですか。すーっ。はー。よし。くらえ!」
コイルの震えと体全体の力みが抜け、そのままスライムに切りかかった。
スライムも攻撃に移ったがナヴィが咄嗟に<アクセル>をコイルに掛け、その速度差でなす術もなくやられていった。
「僕。モンスターを倒したの……?」
「えぇ、初モンスター撃破おめでとうございます。深呼吸をした後からの動きは見事でしたよ」
ナヴィがコイルの手を取って祝福する。
「ありがとうございます。僕なんかできそうな気がしてきました!」
「はい、かなりの素質の持ち主だと確信いたしました」
<アクセル>を掛けられたのは気づいてない。まぁでもこれでコイル様の冒険者としての自信がついてくれればオーケーよ。
その思惑通り、コイルはダンジョンの道中、そしてダンジョンの攻略もナヴィの力を借りつつもクリアすることができた。
「コイル様、お疲れさまでした。初めてのダンジョンだったとは思えないほどの動きでしたよ」
「いえ、ナヴィさんのガイドのおかげです。ありがとうございます。いって」
最後のボスに攻撃されたコイルの腕が出血している。
<ヒール!>
コイルの傷が一瞬で直った。
「すごいよナヴィさん。一瞬で痛みが消えました」
「いえ。コイル様のおかげで私も魔力を温存できていたので」
お世辞っぽい言い方になってしまったけど、コイル様は確かにセンスがあるわね。ひょっとしたら結構上のランクまでいくんじゃ……。
「ナヴィさん。なんか胸のタトゥーが光ってるよ」
二つあったナヴィの胸のタトゥーにもう一つの輝きが生まれ始める。
「あ、これは。ついに来ましたね」
光の輝きとともに三つ目のタトゥーが胸に浮かんだ。
おぉと目を見開くコイル。
ナヴィは少し顔を赤めながら注意した。
「コイル様。そんなに見られたら私恥ずかしいです」
「あ、すみません!」
後ろに引き土下座をするコイル。
「いえ、それにこれで私も『上級ガイド』になることができました。コイル様のおかげでもありますよ。ありがとうございました」
ナヴィは深々とお辞儀をした。
「いえ、僕は何もしてないですよ。ナヴィさん今日は本当にありがとうございました!」
「はい。それでは帰りましょうか」
ナヴィとコイルは行きよりも軽快な足取りで村に帰っていった。
もう日暮れね、結構遅くなってしまったかしら。
いつも通り玄関の扉をゆっくりと開ける。
「ただいまー。エンフィー帰ったわよ」
「お姉ちゃんおかえり」
エンフィーはナヴィの胸をじーっとを見る。
「ついに『上級ガイド』になったのね! おめでとう。今日はご馳走にしないとね!」
目を輝かせナヴィに抱き着く。
「ご馳走なんていいわよ。いずれはなる予定だったんだし。でもありがとうエンフィー。良かったわ何とか明日に間に合って」
「明日が大一番だもんね。これで成功できたらうちのお店はまた大繁盛よ」
頬に手のひらを当て妄想をするエンフィーをナヴィは微笑ましく見守った。
「さぁナヴィお姉ちゃん。今日は早く食べて早く寝て明日に備えましょ!」
「えぇ。そうさせてもらうわ」
その後布団に着いたナヴィだったが、数時間眠れずにいた。
この一か月いろんな冒険者と同行してきた。コイル様のような駆け出し冒険者、サム様やハンナみたいなここらじゃベテランの冒険者。いろんな戦い方やモンスターのデータを取って、研究してきたけど……。
正直不安だわ。明日は初対面の冒険者様だし、モンスターやダンジョンの情報も完璧に調べきることができなかった。
窓の外を見るナヴィ。
「あら、今日は快晴だったはずなのに、星が見えないわね」
どうか明日からの旅が無事に終わりますように……。
次の日の朝、店の開店とともにとある四人の冒険者パーティーが入ってきた。
「いらっしゃいませ!」
エンフィーがいつものように元気よく挨拶をする。
軽装備をした紳士風の男が話し始めた。
「やぁ、今日ナヴィさんの同行を予約していたデニスです。」
奥にいたナヴィはデニスとそのパーティーを数十秒観察した。
来たわね、大剣に大盾、弓に魔法使いか。装備はいいけど……。えっちょっと待って。
ナヴィの息が止まる。
デニスといった男とその横にいる大盾がレベル四十のタトゥーだけど、後ろの弓と魔法使いの二人はレベル三十。そんな。
もう考えるのはやめて直接聞こうと、ナヴィはデニスの前に飛び出した。
「ナヴィは私です」
「おぉ、これから一週間よろしくねナヴィさん」
握手を求めるように手を出した。
「え、えぇ」
一応するけどさ。何この胡散臭い笑顔。
「デニス様、同行の前に一つお伺いしてもよろしいでしょうか」
「えぇ何なりと」
「私、今回はパーティー全員がレベル四十だけどどうしても行きたい、とお聞きしてこの依頼をお受けしました」
「しかし、後ろの方々はレベル三十のクラスですよね」
「あ、あぁ伝え間違えてしまいまして……」
額の汗をぬぐうデニス。
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脅すような低いトーンの声と冷たい表情でナヴィは聞いた。
しかしデニスの返答は意外なものだった。
「えぇもちろんです。そこは任せてください。作戦もきっちりと立ててあります。俺達四人の連携はそこら辺のパーティーのそれとは違いますよ」
胸に手を当て背中を反らせた。
急に饒舌ね。何なのこの自信。逆に怖いけど。まぁ冒険者様を信じてあげるのも『上級ガイドの役目』よね。
少し固まりはしたが、表情を和らげ了承した。
「かしこまりました。そうしましたらデニス様、ここから一週間同行させていただきます。よろしくお願いします」
「あぁよろしく」
デニスとそのパーティーはにやりと笑った。
ナヴィはお辞儀をしていたため気づかなかったが、エンフィーはその歪んだ笑顔に気づいた。
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「お姉ちゃん。耳貸して!」
エンフィーが背伸びをしナヴィの耳に手を当てた。
「何エンフィー」
「あの人たちなんか危なっかしいわよ。何かあったらすぐに依頼を放棄してでも帰ってきてね」
「分かってるわエンフィー。必ず帰ってくる。あなたを一人には絶対にさせない。約束するわ」
エンフィーを抱きしめるナヴィ。
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こうしてナヴィはデニスの依頼を受け一週間という長い期間を共に過ごすことになった。
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