村人Aは勇者パーティーに入りたい! ~圧倒的モブが史上最高の案内人を目指します~

凛 捺也

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第九章 王都公認 案内人適性試験 最終試験 準決勝編

97.準決勝に向けて⑤

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 あ、ブランが帰ってきた。

 草むらの茂みでダリウスを偵察していたエンフィーが身を隠す。

「ブランは用心深い性格の人っぽいから見つかったら何されるかわからないしね…………。よし大丈夫そうかな、とりあえず観察再開! 何でもいいから早くダリウス君にお水飲ませてあげてよー」

 エンフィーはそう念じながら頭をゆっくりと出し観察を再開する。


「やぁダリウス。帰ったよ」

「ブ、ブランさん。おかえりなさい……」


 優しそうな顔をして微笑むブラン。だがその顔を見たダリウスの顔はエンフィーにはひどく怯えているように見えていた。

 昨日の通りとても二人はパートナーの様には見えないわね。どういうことをしてあぁなってるのか確かめなくちゃ。


「いやぁ、決勝で当たると思うケビンとナターシャペアを視察しに行ったら途中でばれちゃってねぇ」

「へ、へぇそ、そうなんですか……」

「それで、昨日の夜中に話して朝から特訓させてたサテラ達の対策はもうできたんだよね?」

「あ、あのそれなのですが……」

 ダリウスが話始めようとした瞬間、ブランはダリウスとの距離を一瞬で詰めお互いの鼻が付きそうになるほど顔を近づける。

「できたんだよね……?」

 先ほどの表情とは一変し、蔑むような眼差しでダリウスに詰め寄った。

「あの、は、はい。い、一応」

「よろしい。では見せてみなさい」

 その言葉を聞いたブランは再度微笑み、優しく声を掛ける。

「よろしい。では見せてみなさい。 ん……誰だ!?」


「ひっ! やば!」

 エンフィーは自分の方を向こうとしているブランに気づき、すぐさま頭を隠した。

「……気のせいか。さぁダリウスやってみなさい」

「……はい」

 あっぶな……良かったー早めに気づけて。さてさて、ダリウス君の特訓の成果はいかほどのものか……。


 ダリウスは一人で練習していたサテラの動きを想定した武器捌きをブランの前で披露する。

 そして草むらではその武器捌きを見ていたエンフィーが驚いていた。

「え、待って待って、たった半日でこんなにできるものなの……? サテラちゃんの双肩に体術を加えたあの一回戦の動きをあそこまでシュミレートして体を動かせるなんて」

 ブランはこの完成度になんて言うのかしら……。


「ブ、ブランさんどうでしょうか……」

 ダリウスは午前の特訓で多少の自信がついたのかブランに出来を尋ねる。

「何をやってるんだダリウス……これだといいとこ勝てて八十パーセントだ」

 褒められるとは思っていなかったものの予想外の返答に戸惑うダリウス。

「え、あ、あの……でも僕にはこれが精いっぱいで」

「おい、お前、また俺に歯向かうのか……?」

「そ、そんなつもりじゃ……い、痛いです、痛いです!」

 ブランはダリウスの言葉に聞く耳を持たず、ダリウスの髪を思い切り掴み、顔をさらに近づけた。

「いいかダリウス、八十パーセントで満足すんじゃねぇ。二十パーセントは負けるんだぞ。俺が求めてんのは完膚なきまで叩き潰せるほどの圧倒的な力の差なんだよ。口答えする暇あったらさっさと百パーセントにしろクズがぁ!」

 掴んだダリウスの髪を横に引っ張りそのまま地面に叩きつけた。

「ひっ!」

「いいかい。お前は強くなりたい。俺は優勝したい。俺たちは利害関係が一致してるパートナーだ。俺はお前のことを信じてるぞ? いいか、必ず俺を優勝まで導け。分かったな?」

「……はい。ブランさん」

 先ほどまで小さく輝いていたダリウスの瞳から完全に光が消えた。

「とは言え、ここまで練習よく頑張ったな。ほら水だ。飲め」

 そういうとブランは植物に撒くかのように地面に水を捨てた。

「あぁ、ありがとうございます。ブランさん」

 ダリウスは喉に水分が一滴たりとも残っていないかすれた声で感謝の言葉を述べ、地面に這いつくばりながらブランが撒いた水を舐めた。

「さっきの出来で満足するようなら朝ごはんはまた後でだな。飲んだらすぐに特訓だ」

「……はい」


 エンフィーはブランのダリウスに対する、壮絶な仕打ちを見て腰を抜かして立てなくなっていた。

「ひどい。ひどすぎる。あんなの奴隷じゃない……」

 とはいえ、その感情を抜きにしても、結果かなりの成長速度でダリウス君は強くなっていってる……。このままじゃお姉ちゃん達がやばい。早くお姉ちゃん達に伝えないと。

 エンフィーはその場を離れナヴィ達の元へと帰っていった。


「ふむ。誰かはわからなかったが言ったか。まぁいい、ほとんど俺の優勝は見えている。さぁ飲んだかダリウス。さっさと特訓を始めるぞ。ここからは極秘の特訓だ」

「極秘……?」

「あぁ、他の奴らは絶対に使わない奥の手だ。お前だけにできる相手を一瞬で葬り去れる技だ」

「……はい。僕、頑張ります」

「ふ、いい子だ」

 こうして二人の特訓は日付が変わるまで行われた。そこからダリウスが食事にありつけたのは就寝前の10分ほど。与えられたのはパンと少量のスープのみだった。 
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