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第九章 王都公認 案内人適性試験 最終試験 準決勝編
103.前日
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朝の一件があったナヴィとサテラは、二日目の特訓をこなしていた。
「うん。いい出来なんじゃないかな」
「はぁはぁ。ありがとうございます。ハンナさん」
「お疲れ様! だいぶ魔法の組み込ませ方が上手になったねサテラちゃん」
「いえ、ナヴィさんたちの教え方が良かったので」
この子ほんとええ子やぁ。
「そしたらハンナ、サテラちゃん。ちょっと遅いけどお昼にしましょうか、エンフィーもそろそろ戻ってくるはずよ」
「お姉ちゃーん!」
「お、話をしてたら!」
そこから少しして四人はシートを敷き、昼食に入った。
「エンフィー。ブラン達の様子は?」
「また一段と強くなってたわ。やり方は賛同できないけど、結果としてそれがダリウス君の強さにきっちりと変換されてる」
「そ、そうですか……」
「でも大丈夫、対策されてるのは昨日のタパが偵察されたところまでだったから。それにサテラちゃんの新スタイルの方はまだ何も見られてないわけだしさ!」
「「「…………」」」
エンフィーの話を聞き黙り込む三人。
「あれ……? 私何かまずいこと言っちゃった?」
「い、いえ、実はまだ私の新スタイルができきってなくて今日もできるかどうか微妙なところなんです」
「だ、大丈夫よ! まだ時間はあるし、あたしも手伝うから」
「僕も手伝うよ」
「ありがとうございます、何とか形にしてみせます」
確かにサテラちゃんのスタイルは昨日一度見せてもらったけど、正直半々ね。普通の戦い方の方はある程度対策されてるだろうし……。
でも、ここはサテラちゃんを信じよう。
「じゃあお昼も食べたし、早速始めましょう」
「はい!」
ナヴィ達の特訓は夜遅くまで行われた。
「サテラちゃん。そろそろ終わりにしよっか」
「…………はい」
その後特訓を終えた二人は先に戻っていたハンナとエンフィーの宿に戻るため、王都の商店街を歩いていた。
「……」
「……」
やっぱ落ち込むよね……あれだけ特訓したのに結局あと一歩というところできなかった。これを試合で使うのは魔力の消費量的にも得策じゃないし、反動も大きい。
「サテラちゃん。あたしね、新スタイルに関しては明日使うのは控えた方がいいかなって……」
「え……?」
「サテラちゃんも本人だから知ってると思うけど、魔力の消費量的にも体に掛かる負荷的にもこの成功率だとかなり厳しいわ。ハンナと特訓した通常戦闘でも相当戦えるようになったし、明日はそれだけでも何とかいけるんじゃないかなって……」
ここで無茶させるのは今後のサテラちゃん的にも良くない。申し訳ないけどここはあなたを守ること優先にして考えさせて。
「そ、そうですね……」
サテラは暗い表情を浮かべるもナヴィの言ったことに納得し頷いた。
「おーいサテラー!」
「あ、ちょっと! 急に走ると危ないよ!」
商店街の入り口の方から聞き覚えのある少年の声と女性の声が聞こえた。
「あれ、ロイ!?」
「えへへ、元気してたかぁ」
「うん! ていうか、どうしてそんなにボロボロなの?」
「いやぁ特訓がなかなかハードでさ、ルナってば張り切って休憩なしにずーっとやらせるんだぜ。綺麗な顔に似合わずスパルタって感じでさー」
「それは君が全然話聞いてくれないからでしょ!」
ルナはロイの頭を小さく叩いた。
「いたたた」
「あ、ルナ!」
「ナヴィさん! どうも!」
ロイとサテラの会話を見ながら、二人は現状を報告し合った。
「なるほど、まだ奥の手が完成しきってない……と」
「うん、それで何とかそれを使わずにって話をしてたら元気なくなっちゃってさ……」
「そうでしたか……実は今日のお昼にわたくしも同じことがありました。そしたらロイ君がかなり拗ねて駄々ばかりをこねるようになっちゃって……」
「あははそういうところロイ君可愛いよね」
「大変ですよ自由奔放で振り回されてばかりで。結局その後の練習効率もあまり上がらずで時間を消費してしまいました」
「それで、その後どうしたの?」
「そのままロイ君のしたいことをやらせました」
「あ、そうなんだ……よかったの? それで」
「分かりません。けど、わたくしロイ君を見て気づいたんです。ある程度危険って判断してやらせないことは大人としては正しいのかもしれない。けどそうやって憶測で物事判断してこの子の成長にストップをかけることは案内人としてはどうなのかなって……」
「ルナ……」
「だから、わたくしは安全策を取るよりも、ここで失敗してもその後それがロイ君のためになるならって考えました」
ルナは胸に手を当て、真っ直ぐにナヴィを見つめた。
「そうだったのね……」
「明日の結果がどうなるかわかりませんが、ロイ君にとって明日の試合を通してそれが成長するための一瞬になってくれればいいなって思ってます。それにこの子たちはまだ粗削りの状態で完璧ではありませんしね」
「そうね……確かに」
ルナ。そこまで考えて……。あたしのサテラちゃんに対して言ったことも、彼女にとっては成長しようという気持ちを阻害されてる気分になっちゃったのかもね……。
だめじゃないしっかり信じてあげないと。パートナーなんだから!
「ありがとう、ルナ……」
「へ? 何がですか?」
「ううん、何でもない」
「おーいルナあっちに美味しそうなものあるぞー!」
「あ、またどっか行こうとして! じゃあナヴィさんまた明日! ちょっとロイ君、待ちなさーい!」
……行っちゃった。ルナもロイ君とあって変わったわね。
「あの……ナヴィさん?」
ナヴィの裾をくいくいと引っ張り不安そうな顔で見つめるサテラ。
その裾に引っ張られるようにナヴィは腰を落としサテラに目線を合わせる。
「サテラちゃん。やっぱり明日当日だけど朝早めに起きてもうちょっと練習しようか」
その言葉を聞いた瞬間サテラの目の輝きが変わった。
「え、いいんですか!?」
「うん。あたしも悔いを残したくないしね」
「……ありがとうございます! そうと決まったら早く帰って寝ましょう!」
「あはは、そんなに手を引っ張らないで」
この子がまだ諦めずに何とかしようとしてるんだ。あたしがこの子を信じてあげないでどうする。まだ明日がある。何とかしてあげよう!
こうして二日目が終わりついに準決勝当日になる。
「うん。いい出来なんじゃないかな」
「はぁはぁ。ありがとうございます。ハンナさん」
「お疲れ様! だいぶ魔法の組み込ませ方が上手になったねサテラちゃん」
「いえ、ナヴィさんたちの教え方が良かったので」
この子ほんとええ子やぁ。
「そしたらハンナ、サテラちゃん。ちょっと遅いけどお昼にしましょうか、エンフィーもそろそろ戻ってくるはずよ」
「お姉ちゃーん!」
「お、話をしてたら!」
そこから少しして四人はシートを敷き、昼食に入った。
「エンフィー。ブラン達の様子は?」
「また一段と強くなってたわ。やり方は賛同できないけど、結果としてそれがダリウス君の強さにきっちりと変換されてる」
「そ、そうですか……」
「でも大丈夫、対策されてるのは昨日のタパが偵察されたところまでだったから。それにサテラちゃんの新スタイルの方はまだ何も見られてないわけだしさ!」
「「「…………」」」
エンフィーの話を聞き黙り込む三人。
「あれ……? 私何かまずいこと言っちゃった?」
「い、いえ、実はまだ私の新スタイルができきってなくて今日もできるかどうか微妙なところなんです」
「だ、大丈夫よ! まだ時間はあるし、あたしも手伝うから」
「僕も手伝うよ」
「ありがとうございます、何とか形にしてみせます」
確かにサテラちゃんのスタイルは昨日一度見せてもらったけど、正直半々ね。普通の戦い方の方はある程度対策されてるだろうし……。
でも、ここはサテラちゃんを信じよう。
「じゃあお昼も食べたし、早速始めましょう」
「はい!」
ナヴィ達の特訓は夜遅くまで行われた。
「サテラちゃん。そろそろ終わりにしよっか」
「…………はい」
その後特訓を終えた二人は先に戻っていたハンナとエンフィーの宿に戻るため、王都の商店街を歩いていた。
「……」
「……」
やっぱ落ち込むよね……あれだけ特訓したのに結局あと一歩というところできなかった。これを試合で使うのは魔力の消費量的にも得策じゃないし、反動も大きい。
「サテラちゃん。あたしね、新スタイルに関しては明日使うのは控えた方がいいかなって……」
「え……?」
「サテラちゃんも本人だから知ってると思うけど、魔力の消費量的にも体に掛かる負荷的にもこの成功率だとかなり厳しいわ。ハンナと特訓した通常戦闘でも相当戦えるようになったし、明日はそれだけでも何とかいけるんじゃないかなって……」
ここで無茶させるのは今後のサテラちゃん的にも良くない。申し訳ないけどここはあなたを守ること優先にして考えさせて。
「そ、そうですね……」
サテラは暗い表情を浮かべるもナヴィの言ったことに納得し頷いた。
「おーいサテラー!」
「あ、ちょっと! 急に走ると危ないよ!」
商店街の入り口の方から聞き覚えのある少年の声と女性の声が聞こえた。
「あれ、ロイ!?」
「えへへ、元気してたかぁ」
「うん! ていうか、どうしてそんなにボロボロなの?」
「いやぁ特訓がなかなかハードでさ、ルナってば張り切って休憩なしにずーっとやらせるんだぜ。綺麗な顔に似合わずスパルタって感じでさー」
「それは君が全然話聞いてくれないからでしょ!」
ルナはロイの頭を小さく叩いた。
「いたたた」
「あ、ルナ!」
「ナヴィさん! どうも!」
ロイとサテラの会話を見ながら、二人は現状を報告し合った。
「なるほど、まだ奥の手が完成しきってない……と」
「うん、それで何とかそれを使わずにって話をしてたら元気なくなっちゃってさ……」
「そうでしたか……実は今日のお昼にわたくしも同じことがありました。そしたらロイ君がかなり拗ねて駄々ばかりをこねるようになっちゃって……」
「あははそういうところロイ君可愛いよね」
「大変ですよ自由奔放で振り回されてばかりで。結局その後の練習効率もあまり上がらずで時間を消費してしまいました」
「それで、その後どうしたの?」
「そのままロイ君のしたいことをやらせました」
「あ、そうなんだ……よかったの? それで」
「分かりません。けど、わたくしロイ君を見て気づいたんです。ある程度危険って判断してやらせないことは大人としては正しいのかもしれない。けどそうやって憶測で物事判断してこの子の成長にストップをかけることは案内人としてはどうなのかなって……」
「ルナ……」
「だから、わたくしは安全策を取るよりも、ここで失敗してもその後それがロイ君のためになるならって考えました」
ルナは胸に手を当て、真っ直ぐにナヴィを見つめた。
「そうだったのね……」
「明日の結果がどうなるかわかりませんが、ロイ君にとって明日の試合を通してそれが成長するための一瞬になってくれればいいなって思ってます。それにこの子たちはまだ粗削りの状態で完璧ではありませんしね」
「そうね……確かに」
ルナ。そこまで考えて……。あたしのサテラちゃんに対して言ったことも、彼女にとっては成長しようという気持ちを阻害されてる気分になっちゃったのかもね……。
だめじゃないしっかり信じてあげないと。パートナーなんだから!
「ありがとう、ルナ……」
「へ? 何がですか?」
「ううん、何でもない」
「おーいルナあっちに美味しそうなものあるぞー!」
「あ、またどっか行こうとして! じゃあナヴィさんまた明日! ちょっとロイ君、待ちなさーい!」
……行っちゃった。ルナもロイ君とあって変わったわね。
「あの……ナヴィさん?」
ナヴィの裾をくいくいと引っ張り不安そうな顔で見つめるサテラ。
その裾に引っ張られるようにナヴィは腰を落としサテラに目線を合わせる。
「サテラちゃん。やっぱり明日当日だけど朝早めに起きてもうちょっと練習しようか」
その言葉を聞いた瞬間サテラの目の輝きが変わった。
「え、いいんですか!?」
「うん。あたしも悔いを残したくないしね」
「……ありがとうございます! そうと決まったら早く帰って寝ましょう!」
「あはは、そんなに手を引っ張らないで」
この子がまだ諦めずに何とかしようとしてるんだ。あたしがこの子を信じてあげないでどうする。まだ明日がある。何とかしてあげよう!
こうして二日目が終わりついに準決勝当日になる。
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