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第九章 王都公認 案内人適性試験 最終試験 準決勝編
106.奥の手
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先ほどまでの状況とは一変し、補助魔法を組み合わせたナターシャの攻撃に防戦一方になるロイ。
「どう、ロイ! さっきまでの威勢はどこに行ったのかしら!?」
「くそーおいらも攻撃したいのにー」
「ほら、次行くよ!」
「くっ!」
でも、何とか分かってきた、この大振りをするための構えになった瞬間を、それを狙って先にガードに入っておけば……。
ロイはナターシャの振りかぶったタイミングを見逃さず、すかさずガードの態勢に入る。
……。
「あれ?」
ガードをしてもナターシャの攻撃はロイには来なかった。
ガードを解き、ハンマーの端からナターシャをちらりと見ると、ロイの目の前に大鎌が襲い掛かってきていた。
「な! ぐあ!」
ガードの隙を突いたナターシャの攻撃がロイを吹き飛ばし、大ダメージを与えた。
「ぐ、どうして。あいらは完璧に<フェザーウエイト>で軽くしようとしていたタイミングに合っていたはずなのに……」
「ふふ、もっと考えなさい、ロイ!」
「く、また突っ込んできて。くそー!」
その後もナターシャの攻撃を受け止めていくロイ。そこからも何度か攻撃を受け、ロイの体も少しずつだがダメージを負っていった。
「はぁ。はぁ」
「あら、もうグロッキーな感じかしら」
「はぁ。……なるほどね、何回か受けてみて分かったよ。おいらに攻撃を当てる瞬間に魔法を使っている時と、使うふりをしている時で分けてるんだね……」
「あら意外とすぐにばれちゃった」
「攻撃が当たったときのダメージの重さが明らかに違ったよ。<フェザーウエイト>は軽くなるけど多分武器に使うと威力も半減されちゃうんでしょ?」
「……ロイにしては頭を使ったじゃない。でもさ、それが分かってどうなるのかな?」
「……確かに! どうしよう!」
「あほか! ほらまだ行くよ!」
「くそー!」
「ロイ君大丈夫かな……」
ルナはナターシャに押されているロイに何度か声を掛けるもうまくかみ合わずに連携が途切れていた。
確かにナターシャちゃんの言う通りですね……。声を何度かかけたけど、多分ロイ君はこのことを見破っても考えながらは戦えない。そういう戦い方をしてないからね。ケビンさんもそれを見越してナターシャちゃんにあの補助魔法を組み込ませたってことですか。そうだとしたらなんて恐ろしい推察力……。
ケビンの方をちらりと見るルナ。
「ふ、考えてるみたいだな。ルナ……」
「そう、この瞬間的に<フェザーウエイト>を使う時と使わない時の速度差が肝になっている。ロイのような勘のいい奴はこれを二択の内のどちらかだと予想して構えるが実際はそうじゃない。」
「魔法を使わない時に備えるとそれを見たナターシャが<フェザーウエイト>でガードの前に切りつける。逆も然り。<フェザーウエイト>に備えるのであれば、早めに動いた体を後からゆっくりと大鎌そのものの重さで叩き込む。」
「特にロイみたいなのは、考えても無意味だ。見てから手を変えられるからな。」
ルナは額に汗をかいた。
このまま戦っても立て直すには流れが悪い……なら。
「タイムアウト!」
「ルナ!?」
ロイが驚きながらルナの方に視線を移した。
「隙あり!」
その瞬間を切り込もうとしたナターシャの前にスーザンが転移魔法で現れる。
「そこまで!」
スーザンはナターシャの大鎌を素手で止めた。
「!?」
『只今ルナ選手よりタイムアウトの申し出がありました。今から時間を設けたいと思います!』
ロイは足を引きずりながらルナの元へと向かいフィールドから降りていった。
「はぁ。ありがとうルナ。おいら正直危なかったよ」
「ううん。むしろもっと早く取ってればよかったね」
「いや、何となくあの攻撃パターンにも慣れてきたし次は何とかしてみせるよ」
ボロボロになっているロイの姿を見たルナはごくりと喉を動かし真剣な表情でロイに言う。
「ロイ君。やっぱりあれ使おうか」
「……いいの? でもあれは決勝でって」
「ナターシャちゃんは強い。奥の手を使わずに戦えるほど甘い相手じゃないのはロイ君が一番分かってるよね」
「うん。そうだね。おいらナターシャに勝ちたい!」
「じゃあもう変に考えて温存とか奥の手を隠すとかはなし! 全力で倒しに行こう!」
ルナはロイの腕を掴んで笑顔で言った。
「おう! ニシシ!」
歯を見せて笑うロイ。
「じゃあ行ってくる!」
「うん! 行ってらっしゃい!」
ロイはハンマーを持ち直し、すでにフィールドに上がっていたナターシャの元へと向かった。
「お待たせ、ナターシャ」
「ふふ、待ってたわ。次で決着をつけてあげる!」
「……そんなに簡単にいかないよ」
「……雰囲気が変わった?」
「勝って決勝に行くのはおいらとルナだ」
大鎌をゆっくりと構えるナターシャ。
「何かまだあるのね……ロイ」
「うん。もう隠したりとか温存したりとかはしない。全力で倒させてもらうよ。ナターシャ」
「望むところだよ。ロイ!」
「どう、ロイ! さっきまでの威勢はどこに行ったのかしら!?」
「くそーおいらも攻撃したいのにー」
「ほら、次行くよ!」
「くっ!」
でも、何とか分かってきた、この大振りをするための構えになった瞬間を、それを狙って先にガードに入っておけば……。
ロイはナターシャの振りかぶったタイミングを見逃さず、すかさずガードの態勢に入る。
……。
「あれ?」
ガードをしてもナターシャの攻撃はロイには来なかった。
ガードを解き、ハンマーの端からナターシャをちらりと見ると、ロイの目の前に大鎌が襲い掛かってきていた。
「な! ぐあ!」
ガードの隙を突いたナターシャの攻撃がロイを吹き飛ばし、大ダメージを与えた。
「ぐ、どうして。あいらは完璧に<フェザーウエイト>で軽くしようとしていたタイミングに合っていたはずなのに……」
「ふふ、もっと考えなさい、ロイ!」
「く、また突っ込んできて。くそー!」
その後もナターシャの攻撃を受け止めていくロイ。そこからも何度か攻撃を受け、ロイの体も少しずつだがダメージを負っていった。
「はぁ。はぁ」
「あら、もうグロッキーな感じかしら」
「はぁ。……なるほどね、何回か受けてみて分かったよ。おいらに攻撃を当てる瞬間に魔法を使っている時と、使うふりをしている時で分けてるんだね……」
「あら意外とすぐにばれちゃった」
「攻撃が当たったときのダメージの重さが明らかに違ったよ。<フェザーウエイト>は軽くなるけど多分武器に使うと威力も半減されちゃうんでしょ?」
「……ロイにしては頭を使ったじゃない。でもさ、それが分かってどうなるのかな?」
「……確かに! どうしよう!」
「あほか! ほらまだ行くよ!」
「くそー!」
「ロイ君大丈夫かな……」
ルナはナターシャに押されているロイに何度か声を掛けるもうまくかみ合わずに連携が途切れていた。
確かにナターシャちゃんの言う通りですね……。声を何度かかけたけど、多分ロイ君はこのことを見破っても考えながらは戦えない。そういう戦い方をしてないからね。ケビンさんもそれを見越してナターシャちゃんにあの補助魔法を組み込ませたってことですか。そうだとしたらなんて恐ろしい推察力……。
ケビンの方をちらりと見るルナ。
「ふ、考えてるみたいだな。ルナ……」
「そう、この瞬間的に<フェザーウエイト>を使う時と使わない時の速度差が肝になっている。ロイのような勘のいい奴はこれを二択の内のどちらかだと予想して構えるが実際はそうじゃない。」
「魔法を使わない時に備えるとそれを見たナターシャが<フェザーウエイト>でガードの前に切りつける。逆も然り。<フェザーウエイト>に備えるのであれば、早めに動いた体を後からゆっくりと大鎌そのものの重さで叩き込む。」
「特にロイみたいなのは、考えても無意味だ。見てから手を変えられるからな。」
ルナは額に汗をかいた。
このまま戦っても立て直すには流れが悪い……なら。
「タイムアウト!」
「ルナ!?」
ロイが驚きながらルナの方に視線を移した。
「隙あり!」
その瞬間を切り込もうとしたナターシャの前にスーザンが転移魔法で現れる。
「そこまで!」
スーザンはナターシャの大鎌を素手で止めた。
「!?」
『只今ルナ選手よりタイムアウトの申し出がありました。今から時間を設けたいと思います!』
ロイは足を引きずりながらルナの元へと向かいフィールドから降りていった。
「はぁ。ありがとうルナ。おいら正直危なかったよ」
「ううん。むしろもっと早く取ってればよかったね」
「いや、何となくあの攻撃パターンにも慣れてきたし次は何とかしてみせるよ」
ボロボロになっているロイの姿を見たルナはごくりと喉を動かし真剣な表情でロイに言う。
「ロイ君。やっぱりあれ使おうか」
「……いいの? でもあれは決勝でって」
「ナターシャちゃんは強い。奥の手を使わずに戦えるほど甘い相手じゃないのはロイ君が一番分かってるよね」
「うん。そうだね。おいらナターシャに勝ちたい!」
「じゃあもう変に考えて温存とか奥の手を隠すとかはなし! 全力で倒しに行こう!」
ルナはロイの腕を掴んで笑顔で言った。
「おう! ニシシ!」
歯を見せて笑うロイ。
「じゃあ行ってくる!」
「うん! 行ってらっしゃい!」
ロイはハンマーを持ち直し、すでにフィールドに上がっていたナターシャの元へと向かった。
「お待たせ、ナターシャ」
「ふふ、待ってたわ。次で決着をつけてあげる!」
「……そんなに簡単にいかないよ」
「……雰囲気が変わった?」
「勝って決勝に行くのはおいらとルナだ」
大鎌をゆっくりと構えるナターシャ。
「何かまだあるのね……ロイ」
「うん。もう隠したりとか温存したりとかはしない。全力で倒させてもらうよ。ナターシャ」
「望むところだよ。ロイ!」
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