村人Aは勇者パーティーに入りたい! ~圧倒的モブが史上最高の案内人を目指します~

凛 捺也

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第九章 王都公認 案内人適性試験 最終試験 準決勝編

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「戦いを……戦いを止めよう」

「え……」

 ナヴィのその一言を聞いたサテラが膝から崩れ落ちた。

「サ、サテラちゃん?」

「ご、ごめんなさい。私の力が及ばずでナヴィさんにその判断をさせてしまいました……ぐすっ」

 サテラの目は溢れ出そうになる涙でいっぱいだった。

「え、あ、ご、ごめんサテラちゃん! 言い方がよくなかった」

「へ?」

 左右の手で涙を拭いていたサテラの手が止まり、それを見たナヴィが誤解を解こうとすぐに説明を続ける。

「今のままでの戦い方を止めようって言い方の方がいいわよね」

「え、それじゃ諦めて棄権しようってわけじゃ……」

「そんなわけないでしょ! もう、素直なんだか、天然なんだか……」

「だ、誰だってそんないい方されたらそういう風にとらえちゃいますよ!」

 鼻をすすり、ナヴィの胸をぽかぽかと叩くサテラ。

「ごめんごめん! そんなことしたらあたしがサテラちゃんに怒られちゃうわ」

「もう怒ってます! それで、さっき言ったことはどういうことなんですか?」

「それはね……」


 二人がこそこそと話している様子を伺うブランとダリウス。

「いい感じだね。ダリウス」

「……はい」

「ほら水だよ」

「あ、ありがとうございます」

 試合前から水を飲ませてもらえずひどく喉が渇いていたダリウスが、ブランの持っていた水の入ったボトルを手にしようとした瞬間、ブランはそのボトルをダリウスの上で逆さまにした。

「え……」

 ダリウスの髪から大量の水が流れていった。

「な、なんでですか……? 僕、さっきまでサテラを圧倒してたのに」

 その言葉を聞いたブランの顔が鬼の形相へと変わり、ダリウスの胸ぐらを掴んだ。

「確かにそうだな。俺の言う通りよくやってる。だが、誰が力の加減をしていいといった」

 ブランはダリウスの耳元で囁くような声で言った。

「え、僕はそんなことは……」

「分かるんだよ、戦い方を見ていれば……決定的な瞬間は幾つもあったのに、その全てでほんの少しずつ急所を外している。よくそんなことで俺が誤魔化せると思ったな、ダリウス」

「あの、ご、ごめんなさい、次はちゃんと戦うので……」

「次にそれをやったら試合後にお前を殺すぞ」

「……はい」

 ダリウスの返事を聞いたブランの顔は普段の穏やかな表情に戻り、ダリウスの頭に手を添えながら話を続けた。

「いい子だダリウス、君の力は僕が一番理解し、そして一番信用しているんだよ。あともう少しだ。頑張って『一緒に』優勝しようね」

「……はい、では、行ってきます」

 ダリウスはグローブをはめ直し、俯きながらフィールドへと上がっていく。


 加減したら、僕が殺される……。流石にそれはないだろうけど、きっとこれから先も地獄のような日々が待っているんだよね。でも、このままじゃ本当に僕はサテラを……。くそ、僕はなんて弱い人間なんだ。僕に力がないから、僕に勇気がないからこんなことに。

 それになんだよ『一緒に』って。そんなこと一ミリも思ってないくせに……。

「えーっと、ダリウス?」

 先に上がっていたサテラが頭を抱えていたダリウスに近づく。

「く、来るなぁ!」

 ダリウスは反射的に拳をサテラに向けた。

「うわっ!」

 それを見たすぐさまスーザンが止めに入る。

「ダリウス君。まだ試合再開の合図は出してないよ、その手を降ろしなさい」

「す、すみません」


「ダリウス……本当に大丈夫?」

 心配するサテラをダリウスは睨みつけた。

「君が棄権しないからだ」

「え、なんて言ったの? 」

「君が棄権していれば僕はこんな目には……どうして僕だけ」

 ダリウスは頭をガシガシと掻いた。



「被害者ぶるのはいい加減にしたらダリウス」

「……?」

 ダリウスはサテラの今までには聞いたことがない冷たく、吐き捨てるような声を聞いて動揺した。

「嫌ならさっさと倒せばいいじゃない。あなたがいつまでも加減して戦っているからそんなひどい目に合うんでしょ」

「何だと……?」

「私は手加減しろなんて言ったつもりはない。さっきのベンチでの話は一体何だったのかしら」

「……サテラ」

「自分で苦しんで外的要因で勝手に気持ちを押し殺して、上手くいかないからって私に八つ当たり。とても勇者の弟がする言動とは思えないわね」

 ダリウスは言い返すことができず拳に力が入り小刻みに震えだした。

「悔しいでしょ、こんなただの女の子にここまで言われて。今にも殴りたいんじゃないかしら」
「だったらさっさとあなたの持ってる力全部出してかかってきなさいよ! 正直今のあなたは何も怖くないわ!」

「サテラァァァ!」

 サテラに殴りかかろうとするダリウスを見たスーザンが慌てて合図を出した。

『し、試合再開!』

 接近するブランに対し、サテラは防御の態勢に入った。

「またさっきのガードか! もうその戦い方は分かってるんだよ! くらえ!」
<パワードナックル!>

「って、なっ……」

 必殺技を繰り出そうとしていたダリウスに逆に距離を詰めたサテラの姿を見たダリウス。

「やっぱりね……流石はナヴィさんです!」
<ウインドスラッシュ!>

 ダリウスの攻撃を紙一重で躱し、そのままサテラの必殺技がダリウスに炸裂した。

「ぐあぁぁ!」 
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