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第十章 王都公認 案内人適性試験 最終試験 決勝戦編
156.ブレビンスの思惑
しおりを挟む「理事長。終わりました」
バックルームの扉をノックするスーザン。
「うん。聞こえていた。入っていいよ」
「失礼します」
「スーザンちゃん君も危ない橋を渡るね」
「ああでもしないと理解してもらえないかと……」
「トニーさんの話をするときのケビン君の反応は君も聞いているだろう」
「はい、正直賭けでした。しかしもごついていた彼らにはっきりと選択させるための材料として利用させていただきました。トニーさんには後で謝らなくてはいけません」
「ふ、まぁいいだろう。彼もそのくらいのことは許容すると思う」
「またテキトーなことを……」
「テキトーなんかじゃないよ。僕と彼とは長い付き合いなんだ。彼の考えていることはある程度分かるよ」
窓の外に手を掛けるブレビンス。
「理事長とトニーさんが……。ま、まぁそれは置いといて、作戦の方はどうですか?」
「うん。正直彼ら次第なところがあったからね。確信が持てなかった以上もう一つのプランも同時に考えていかなければならないな」
「随分と買っているのですね彼らのこと」
「もちろん君も一次試験から見ていただろう。あの三人は今は発展途上で粗削りの段階だが間違いなく天才だ」
「それは私でもわかりますが……」
「何年かかると思う?」
「え? 何年?」
「彼らが案内人達の中心として力がつくまで」
「早くて二年。ですかね……」
「ふむ。いい線だな普通にしていれば彼らが次のクラスの『アドバイザー』になれるのは大体そのぐらいだろう」
「り、理事長、確かに現状『スーパーアドバイザー』がいない中での最高ランクは『アドバイザー』です。しかし経験の浅い彼らでなくても他に『アドバイザークラス』の人間は数えるほどですが確かに存在しています。なぜその三人にそこまで拘るんですか?」
「ふむ、今の『アドバイザー』の子たちは前回の討伐軍では招集されなかったものばかりだ。それに実力者揃いではあるが一癖も二癖もあるような連中だろ? もちろん声はかけるし彼らにも中心になってもらうのは間違いないだろうけど」
「あの三人はその中にすぐにでも割って入れるほどの実力があると?」
「あぁ、その通りだ」
自信満々の顔でスーザンを真っ直ぐと見つめるブレビンス。
「…………はぁ。何度あなたのその顔に騙されたか……」
スーザンはため息を吐きながら頷いた。
「流石スーザンちゃん分かってるね!」
「ちょ! 抱き着いてこないでください! 変態!」
スーザンの蹴りがブレビンスのみぞおちに炸裂する。
「ごふっ! 相変わらずの反射神経だ。君も鈍ってないみたいだね」
「当たり前です。私だってそれに備えて準備してるんですから」
「ふふ。優秀な秘書を持つと甘えちゃうのが上の者の性だね」
「いや働け! ってそういえば。私、彼らが育つまで二年って言いましたけど、魔王軍の復旧前に攻めれるのでしょうか?」
「いや、間に合わない」
「はっ!? じゃあ駄目じゃないですか……」
「それでだ、一応こういうものを考えてみた、見てくれ」
呆れ顔のスーザンはブレビンスの作成した分厚い書類をパラパラとめくり目を通すとその目が一気に開いた。
「ん? なんですか、この紙……理事長これじゃ早すぎます。間に合わないですよ。それに彼らはまだ百パーセント引き受けてくれるなんて……」
「普通に待っていれば『二年』だがそれはあくまで普通にしていればだ。ただし、それは僕らのサポートが無かったらの話だ」
「でもこの予算の注ぎ方はあまりにも……」
「ふふ、今年は彼らの年になるぞ。ははは」
「まったく……他のものにばれても知らないですからね」
「まぁ、その時はその時だ。僕はその時が来たらいつでも首を差し出す覚悟は持ち合わせてるよ」
その言葉とは対照的な笑みを見せるブレビンスに、スーザンも再度ため息をついた。
「はぁ……なんでこんな人の秘書なんかになっちゃったのかなぁ……」
「ん? 何か言ったかい?」
「いいえ。何も。それではこの書類を基盤として進めさせていただきますね」
「お、分かってるね。頼んだよスーザンちゃん」
「ちゃん付けはやめてください。では、失礼します」
スーザンはブレビンスから受け取った分厚い書類を両手に抱え、バックルームを退出した。
ブレビンスはスーザンが立ち去る足音を聞きつつ、グラスに酒を注いだ。
「トニーさん。君の弟子。そして君の孫娘は今日王都公認の案内人になりましたよ。あなたに頼まれてここに呼んだので多少の成績が悪くても王都公認の名は捧げるつもりでした」
「しかし、彼らは自らの実力とそれを裏付ける圧倒的な努力でその称号を勝ち取った。願わくばこれからもそうあり続けてほしい。僕はそう思うよ」
「僕もそう永くは生きられないだろう。しかしあと一年。あなたが託してくれたこの責務。必ず果たして見せます」
「どんな手を使ってでも、あの子たちをスーパーアドバイザーに……」
ブレビンスはそう呟くとグラスに注いだ酒を一気に飲み干した。
「さて、ここからがスタートラインだね。頼んだよスーザンちゃん」
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