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第十一章 王都公認案内人 ナヴィ・マクレガン編

176.案内人?

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「お、待ってたぜナヴィちゃん」

 サムとそのパーティーは案内所のすぐそばにある大樹でナヴィを待っていた。

「サム様、メリー様、マルク様。大変お待たせいたしました」

 ……ん? ナヴィちゃん。元気なさそうな感じだな。

「サム様、なにかありましたか?」

「い、いやぁ、こうして同行してもらうのも久しぶりだよな! 忙しかったのかい?」

 俺が気にすることでもないか。受け答えはいつも通りのナヴィちゃんだしな。

「はい、おかげさまで王都公認の案内人になってからは休みなく働かせていただいております」

「すげぇな、つい最近までガイドだった女のことは思えない成長っぷりだぜ。なぁマルク」

 サムはそういうとマルクの肩を強く叩いた。

「ちょっ急に何するんですか!」

「ふふ、今日もお二方は仲良しですね……」

「メリーさんまでー! もう、早く行きましょうナヴィさん」

「はい。あ、サム様、武器を変更なされたのですか?」

「ん、あぁそうなんだよ、レベル30クラスを超えてから大斧に変えてな、パワーもついたし大きなダメージを一気に与えられる大斧がいいかなって」

「大斧……ですか……」

「とはいってもサムさんまだ大斧全然使いこなせてないですけどね!」

「あ、てめぇマルク! 言いやがったな!」

「お返しです!」

「……おじいちゃん……あたしは……」

 二人の様子を遠くから眺めていたメリーが暗い顔をしていたナヴィに気づきゆっくりと近づいた。

「ナヴィさん、大丈夫ですか……? 顔色があまり良くないですね。気分が悪いようでしたら今日の同行はキャンセルでも大丈夫ですよ」

「あ、心配させてしまって申し訳ございませんメリー様。私は大丈夫です。それに今回のダンジョン攻略では同行が必要と勧めたのは私ですから。私が抜けるわけにはいきません」

「そうですか、疲れも溜まっているでしょからあまり無理をなさらずに進みましょうね」

「はい、お心遣いありがとうございます」

「二人ともー! 早く行きますよー!」

 マルクの呼びかけで、メリーに見せていた表情からいつもの営業スマイルに戻ったナヴィ。

「マルク様! 今参ります。行きましょう、メリー様」

「はい」


 俺達サムパーティーはいつもの通りナヴィちゃんのサポートのおかげで順調にダンジョンを攻略していった。

「なぁマルク、メリー。これはいつも通り……か?」

「うーん。ま、まぁ順調なのはいいことだと思いますけどね」

「順調なのでしょうか……? 私たちはモンスターに遭遇はしていますが攻撃は一度もしてないですよね」

「あぁ、そうなんだよな」

 ナヴィちゃん……君はどうしちゃったんだい?



 四人が今回のダンジョンの入り口に着いた時の話だった。

「サム様、メリー様、マルク様。本日のダンジョンのモンスターはかなり高レベルなモンスターが多数目撃されています」

「あぁ、だから装備も整えてきたぜ」

「ばっちりです!」

「えぇ、私の魔法も問題ありません」

 やる気満々に三人に対し、声のトーンを変えることなくナヴィは淡々と話を続けた。

「……そのことなのですが、今回に限っては基本的には私が前衛で構え敵を感知し囮役となります。その後サム様達が後方から一気に倒すような形が望ましいかと」

 三人は首を傾げながらナヴィを見つめた。

「サムさん、えっとー」

 視線を左右に揺らしながら顎に手を当てて考えるマルク。

「それじゃあナヴィちゃんの荷が重すぎないか? ガイド役もしてもらってるのに囮もするなんて」

「問題ありません。怪我をしても回復魔法がありますから。それに今回のダンジョンはいつにも増してかなり危険度が高いです。全員が生き残れるための最善の策で探索していくことが良いかと」

「……ナヴィさん」

「そんな顔すんなメリー、ナヴィちゃんがこうやって言ってんだからそれが最善だ。同行をお願いしている以上ナヴィちゃんの指示に従おう、マルクもそれでいいな」

「「はい」」

「よし、決まりだ。ナヴィちゃん、前衛をよろしく頼む」

「かしこまりました。お任せください。私がサム様達を最後までお守りいたします」

「……?」



<マジックグロウ!>
<エアシュート!>
<ツヴァイエアシュート!>
<イージスの盾!>
<ガーディアン・エレクトリックレイ!>

「確かにそうは言ったんだがなぁ」

 サム達はは自分たちの前で戦うナヴィの姿をただ見守るだけとなっていた。

「はぁ、はぁ。サム様、今終わりました」

「あ、あぁご苦労様! サ、サンキューな」

 俺たちがぼーっと見ている間にあの数のモンスターを一人で……。

「ナヴィさん、怪我してるじゃないですか! 今回復魔法を!」

 ナヴィの左腕はモンスターにかまれた跡があり、服の上から血が滲んでいた。

「あぁ、メリー様。私は大丈夫です。先ほど回復魔法で止血しましたから」

「……あ、そ、そう、ですか……」


その後、ボスとの戦闘もナヴィちゃん一人で片付けてしまい、結局俺たちはダンジョンに入ってから一度も戦闘を行わず攻略を終えてしまった。


 ダンジョン攻略が終わり帰りの道中。

「皆さん、本日はお疲れ様でした」

「あ、あぁって俺らはなにもしてないけどな……」

「うーん僕も経験値はもらったしお目当てのアイテムも取れたけどなんだかなぁ」

「ナヴィさん、怪我の具合はどうですか」

 三人はどこか腑に落ちない顔をしていたがナヴィは特に気にもせずにテンプレートの文章を読むように終わりの挨拶をした。

「大丈夫です。では私はここで、本日もありがとうございました。またのご利用お待ちしております」
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