村人Aは勇者パーティーに入りたい! ~圧倒的モブが史上最高の案内人を目指します~

凛 捺也

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第十二章 ナヴィとグローリア案内所

195.差異

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「溶岩鬼、オーガロック……」

「こいつは俺一人でやる! あんたは岩陰に隠れてな」

「え!? ちょ、クオード様」

 目の前の強敵の姿に高揚し突っ込んでいったクオード。

「グルォォォ!」

 うわめっちゃ火吹いてるし……爪にも溶岩が。
 想像していたよりもずっと強そう。
 これを倒せる推定レベルも四十クラスのパーティーのはず。

「それをあの人は一人で……?」

「はぁぁぁ!」

 クオードの素早い檄捌きがオーガロックの溶岩でできた外皮を削っていく。

「さっきまでの戦闘よりずっと速い!」

「ち、攻撃は当たってるが、かてぇな」

 一度攻撃の手を止め後方に下がるクオード。 

「クオードさん! 奴のあの固い装甲の中にあるみぞおち部分を狙ってください! そこが弱点です!」

「よーし分かった、やってやる!」

「グルォォ!」

「来た! くそっ!」

 オーガロックの鋭い爪を持った高速攻撃に防戦一方になるクオード。

「はえっ、それにいくら防具があってもあちいな、一回一回の攻撃を受け止めるたびに火の粉が出てやがる」

「クオードさん大丈夫ですか!?」

 言われた通り岩陰からクオードの様子を見守り声を掛けるナヴィ。

「大丈夫だ、このくらいの攻撃なら……ってマジかよ。なんで攻撃しながら火を吹く準備が整ってんだよ……」

 オーガロックの口から大量の炎が放射された。

「ぐあぁ!」

「クオードさん!? くっ」

 だめだ、私も戦わなきゃ!

「こっち向きなさいオーガロック!」

 ナヴィは岩陰から飛び出し青の魔法陣を展開させる。

「ナヴィちゃん、だめだ!」

「大丈夫です! 私だって魔法ぐらいは!」
<ウォーターショット!>

 ナヴィの魔法陣から水で生成された弾丸が何発も発射された。

「グォォ!」

「よし、水属性の攻撃だから多少威力が低くても……ってうそ」

 全然効いてないじゃない……。

「グルォォォォォォ!!」

 オーガロックが遠距離からナヴィに向かい火炎球を放った。

「盾が間に合わない……当たる」

「くっやっぱり、どうしたって案内人の攻撃じゃ限度がある……いくらその魔法を極めたとしてもその先は冒険者の魔法使いのそれには劣る」

 クオードがナヴィの盾となり攻撃を受け止めた。

「クオードさん! ……そ、そうです……よね」

 構えていた杖を力が抜けたかのようにぶらんと下に降ろしたナヴィ。

「早く岩陰にナヴィちゃん! 早く岩陰に」

「……はい」

 クオードに言われナヴィはとぼとぼと岩陰に戻っていった。

「はぁ。やっぱり一人じゃ厳しいかな……まぁそれでも倒すんだけどな。ナヴィちゃん、そこで大人しくしてるんだぜ」

「わ、分かりました」

「よし、さぁオーガロック。こっからが本番だぜ!」

「グルルルルル」

 クオードとオーガロックの激しい戦闘が再度開始したがナヴィはそれを見守ることしかできなかった。

「あれ、あたしなんでここで隠れてるんだろう」

 エンフィーや、アミスをサーティーンプリンスターから一人でも守れるくらい強くなるって思ってたのに。

 レミアには負けて。ここではクオードさんの後ろに隠れて。

 あたし何もできてないじゃない。

「あの時ヴィオネさんに言われた通りじゃん」

 レミアに負けた日のベッドで言われたことそのまんまだ。

「お前はクビだ。明日荷物をまとめてここを立ち去れ」

「クビ……なんで」

「ここでお前に教えられることは何もない」

「……どういうことですかヴィオネさん」

「お前が俺たちに求めているものと俺たちがお前に提供できるものが違う。ただそれだけだ」

「そ、そんなことは。だってあたしよりもずっと二人の方が強いし……」

「だからダメなんだよ」

「は……」

「いいか、俺たちは冒険者じゃない。案内人なんだ。そしてその生まれたほとんどが村人上がり。魔法使いや剣術に長けた冒険者からの生まれじゃない。この意味が分かるか?」

「……」

「なぁナヴィ。お前は案内人だ、そして俺たちの仕事はなんだ」

「そ……それは」

 モンスターを倒して、冒険者様を……。

 あれ、言葉にできない。文章がつながらない。どうして。こんな簡単な質問なのに。

「……」

「そういうことじゃねぇのか」

「……」

「いいか、ナヴィ。まずはそれを探すことだ。強くなりたいって思うことも大事だ。だが案内人としてもっと大事にしなきゃいけないものが今のお前には欠けている」

「あ……」

「俺たちは不完全な職種なんだ。生まれだけではないがどんなに頑張っても冒険者と同じようにはできないし、横に立つことも難しい。それがわからないうちはお前はグローリア案内所には必要ない」

「とはいっても俺も鬼じゃない。不当解雇のようなこともしたくないしな。出たきゃ出ろ、いるなら約束通りうちの案内所の全ての雑務をやってもらう」

「ヴィオネさん……」

「あとは好きにしな。残るのも村に帰るのも俺はもう止めない」

 そういうと、ヴィオネットはナヴィに背を向け、すたすたと部屋を出て行った。

 そして、翌日の明朝。

「おはようございます。ヴィオネットさん」

 一階でナヴィを待っていたかのように受付の前で煙草を吸いながら立っていたヴィオネット。

 そしてナヴィの大荷物を見たヴィオネットが挨拶を返す。

「行くんだな」

「はい。あたし、まだ自分のこと全然わかってなかったみたいですから」

「そうか」

「短い間でしたがお世話になりました」

 深々と頭を下げるナヴィを見たヴィオネットが舌打ちをして煙草を一気に吸い上げた。

「ナヴィ」

「……はい?」 
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