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第十二章 ナヴィとグローリア案内所
221.帰る場所
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「って感じだな。はぁ。しゃべりすぎて喉からっからだ」
クオードはここに至るまでの経緯を話終え、一息ついた。
「あ、あたし何か持ってきますね」
「ナヴィ、助かる」
ナヴィはカウンター裏のキッチンにコーヒーを淹れに行った。
「それで、クオード。さっき言ってた二人組のガキはお前がウルカヌスの力を使おうとするくらいの相手だったんだろ。どうして最初から使わなかった」
「ウルカヌスはその性質上他の冒険者がいると、操る炎でどうしても巻き添えを食らっちまうほど使い勝手が悪い精霊だ。生死が係った激闘だったとしても無理には使えない。それぐらい扱うには危険な精霊だ」
「なるほどな……、だが俺とテンスシートのマハって奴を倒したときには使ってたじゃねぇか」
「あれはお前だからだ」
「は?」
クオードの言っている言葉の意味が分からず眉間にしわを寄せるヴィオネット。
「お前もマハとダンジョン内で戦った時に見ただろ。ウルカヌスの力を」
「あぁ、まぁ確かにあれはすげぇ威力だったな……結局俺の攻撃で隙を見せたマハに最後の一撃を加えたのもあの炎だったからな」
「あれでもかなりセーブしてたんだぜ」
「なに……?」
「じゃねぇとダンジョンが崩壊しちまって俺らごと押しつぶされるからな」
「案内人として何年も手助けしている俺にもまだ見せてない力があの精霊に?」
「あぁ、だが。今回の奴らの襲撃でそれを使わざるを得ないほど奴ら魔物は力を付けていることが分かった」
ヴィオネットはクオードの話を聞き口元を手で隠す。
「二年前よりも……か?」
「二年前、冒険者が戦力としてサーティーンプリンスターと戦っていけるレベルは四十クラスからだった。だが、今回はその四十クラス、五十クラスの連中がフォースシートではなくその側近に完封されたんだ。この意味が分かるだろう」
「……」
「……」
数分の沈黙が二人の間に流れた。
「……すまねぇクオード。煙草吸っていいか?」
「……ふっ。こんな時にか?」
「ばーか。こんな時だから。だよ。お前も一本どうだ?」
ヴィオネットは胸ポケットから出した煙草を一本クオードに手渡した。
「こーゆーのも久々だ。子供ができてからやめてたんだけどなぁ」
「すーっ。ふぅー。なぁクオード……」
一息で一本を吸い切ったヴィオネットは窓の前に立ちその場で長く煙を吐いた。
「ん? どうした」
「夕焼け……綺麗だな」
煙草を吸っている途中に何を言っているのかわからずぽかんと口を開けたクオードだったが、ゆっくりと微笑みに変わり、煙を吐いた。
「空だけじゃないだろ。この案内所を囲んでいる優しい緑も、その先に広がる雄大な海も、点在して冒険者を待ち受けるダンジョンも。みんな素晴らしい世界なんだぜ」
「ヴィオネさん! クオードさん! コーヒー淹れてきましたよ!」
トレーにコーヒーを乗せ二人に向かって歩いてくるナヴィ。
その姿を見たヴィオネットがナヴィに微笑んだ。
「……そして。この世界の人々も。だな」
「……あぁ」
「え? 人々? どうしたんですかヴィオネさん?」
ナヴィはヴィオネットの突然の言葉に首を傾げ見つめる。
「なんでもねぇ……クオード、情報の共有感謝する」
「おう。ナヴィちゃん。すまねぇ淹れてもらったのに。もう帰る時間だわ」
「え!? もう帰ってしまうんですか? せめて一口くらいは……」
「わりぃな! 家に妻と子供を待たせてるんだ! また今度ゆっくり飲ませてもらうぜ!」
「子ども? 妻? クオードさん結婚してらしたんですか!?」
「この左手の指輪が見えなかったか!? それじゃ案内人としてはまだまだだぜ!」
「んな!? まぁ確かに気づかなかったあたしが悪いのですが……」
クオードは頬を膨らませているナヴィの頭の上に手を置く。
「そういうところもヴィオネットにしっかりと学んでおくんだぞ!」
「……え」
ナヴィは笑顔で話すクオードの顔を見上げた。
「クオード、お前んとこのガキはうるせーだろ。さっさと帰ってやれ」
「それもそうだな……それじゃあな、ナヴィちゃん」
玄関の前に立ち笑顔で手を振るクオード。
「あ、またお待ちしております!」
ナヴィの言葉でクオードの手が一瞬止まり、真顔になる。
「クオード……さん?」
「……あ、あぁ! またな!」
クオードは自分の表情を理解し、すぐに作り笑いに変えた。
そしてそのままナヴィとヴィオネットに背中を向け、玄関の扉を開ける。
「また……か」
玄関を出ると一度立ち止まり、夕焼けを見上げるクオード。
「大丈夫だ。この景色もきっとまたすぐに見れる」
さぁ、帰ろう。
クオードはグローリア案内所から一時間ほど歩いたところに構えている家に帰宅した。
「ただいま!」
「あ、パパ! お帰りなさい!」
「お、コリン! 今日もいい子にしてたか!?」
「うん! 今日ね、ママのお手伝い沢山したんだ!」
「お、すげぇじゃねぇか! その話もっと聞かせてくれよ!」
「何言ってるのコリン。お皿を洗っただけでしょう?」
「あ、ママ!」
「お帰りなさい、あなた」
寝室からクオードの妻、エミリーがゆっくりと顔を出した。
「……ただいま、エミリー」
「鎧、相当傷だらけね」
「あぁ、今日はちょっとしんどくてな」
「だめよ。あんまり無理しすぎちゃ、この子だっているんだから」
エミリーは膨らんでいる自身のお腹を優しく摩った。
「お、また大きくなったのか!」
「ふふ、今日は何回か蹴ったのよ」
「そうかぁ。もうすぐだもんな……」
クオードは嬉しそうにエミリーのお腹に耳を当てる。
「えぇ。だから、この子のためにも冒険者稼業はほどほどにね」
「……分かってる」
俺には帰る場所がある。絶対に守らなきゃいけないものがある。
そう、たとえどんなに敵と力の差があったとしても。
命を賭して……。
クオードはここに至るまでの経緯を話終え、一息ついた。
「あ、あたし何か持ってきますね」
「ナヴィ、助かる」
ナヴィはカウンター裏のキッチンにコーヒーを淹れに行った。
「それで、クオード。さっき言ってた二人組のガキはお前がウルカヌスの力を使おうとするくらいの相手だったんだろ。どうして最初から使わなかった」
「ウルカヌスはその性質上他の冒険者がいると、操る炎でどうしても巻き添えを食らっちまうほど使い勝手が悪い精霊だ。生死が係った激闘だったとしても無理には使えない。それぐらい扱うには危険な精霊だ」
「なるほどな……、だが俺とテンスシートのマハって奴を倒したときには使ってたじゃねぇか」
「あれはお前だからだ」
「は?」
クオードの言っている言葉の意味が分からず眉間にしわを寄せるヴィオネット。
「お前もマハとダンジョン内で戦った時に見ただろ。ウルカヌスの力を」
「あぁ、まぁ確かにあれはすげぇ威力だったな……結局俺の攻撃で隙を見せたマハに最後の一撃を加えたのもあの炎だったからな」
「あれでもかなりセーブしてたんだぜ」
「なに……?」
「じゃねぇとダンジョンが崩壊しちまって俺らごと押しつぶされるからな」
「案内人として何年も手助けしている俺にもまだ見せてない力があの精霊に?」
「あぁ、だが。今回の奴らの襲撃でそれを使わざるを得ないほど奴ら魔物は力を付けていることが分かった」
ヴィオネットはクオードの話を聞き口元を手で隠す。
「二年前よりも……か?」
「二年前、冒険者が戦力としてサーティーンプリンスターと戦っていけるレベルは四十クラスからだった。だが、今回はその四十クラス、五十クラスの連中がフォースシートではなくその側近に完封されたんだ。この意味が分かるだろう」
「……」
「……」
数分の沈黙が二人の間に流れた。
「……すまねぇクオード。煙草吸っていいか?」
「……ふっ。こんな時にか?」
「ばーか。こんな時だから。だよ。お前も一本どうだ?」
ヴィオネットは胸ポケットから出した煙草を一本クオードに手渡した。
「こーゆーのも久々だ。子供ができてからやめてたんだけどなぁ」
「すーっ。ふぅー。なぁクオード……」
一息で一本を吸い切ったヴィオネットは窓の前に立ちその場で長く煙を吐いた。
「ん? どうした」
「夕焼け……綺麗だな」
煙草を吸っている途中に何を言っているのかわからずぽかんと口を開けたクオードだったが、ゆっくりと微笑みに変わり、煙を吐いた。
「空だけじゃないだろ。この案内所を囲んでいる優しい緑も、その先に広がる雄大な海も、点在して冒険者を待ち受けるダンジョンも。みんな素晴らしい世界なんだぜ」
「ヴィオネさん! クオードさん! コーヒー淹れてきましたよ!」
トレーにコーヒーを乗せ二人に向かって歩いてくるナヴィ。
その姿を見たヴィオネットがナヴィに微笑んだ。
「……そして。この世界の人々も。だな」
「……あぁ」
「え? 人々? どうしたんですかヴィオネさん?」
ナヴィはヴィオネットの突然の言葉に首を傾げ見つめる。
「なんでもねぇ……クオード、情報の共有感謝する」
「おう。ナヴィちゃん。すまねぇ淹れてもらったのに。もう帰る時間だわ」
「え!? もう帰ってしまうんですか? せめて一口くらいは……」
「わりぃな! 家に妻と子供を待たせてるんだ! また今度ゆっくり飲ませてもらうぜ!」
「子ども? 妻? クオードさん結婚してらしたんですか!?」
「この左手の指輪が見えなかったか!? それじゃ案内人としてはまだまだだぜ!」
「んな!? まぁ確かに気づかなかったあたしが悪いのですが……」
クオードは頬を膨らませているナヴィの頭の上に手を置く。
「そういうところもヴィオネットにしっかりと学んでおくんだぞ!」
「……え」
ナヴィは笑顔で話すクオードの顔を見上げた。
「クオード、お前んとこのガキはうるせーだろ。さっさと帰ってやれ」
「それもそうだな……それじゃあな、ナヴィちゃん」
玄関の前に立ち笑顔で手を振るクオード。
「あ、またお待ちしております!」
ナヴィの言葉でクオードの手が一瞬止まり、真顔になる。
「クオード……さん?」
「……あ、あぁ! またな!」
クオードは自分の表情を理解し、すぐに作り笑いに変えた。
そしてそのままナヴィとヴィオネットに背中を向け、玄関の扉を開ける。
「また……か」
玄関を出ると一度立ち止まり、夕焼けを見上げるクオード。
「大丈夫だ。この景色もきっとまたすぐに見れる」
さぁ、帰ろう。
クオードはグローリア案内所から一時間ほど歩いたところに構えている家に帰宅した。
「ただいま!」
「あ、パパ! お帰りなさい!」
「お、コリン! 今日もいい子にしてたか!?」
「うん! 今日ね、ママのお手伝い沢山したんだ!」
「お、すげぇじゃねぇか! その話もっと聞かせてくれよ!」
「何言ってるのコリン。お皿を洗っただけでしょう?」
「あ、ママ!」
「お帰りなさい、あなた」
寝室からクオードの妻、エミリーがゆっくりと顔を出した。
「……ただいま、エミリー」
「鎧、相当傷だらけね」
「あぁ、今日はちょっとしんどくてな」
「だめよ。あんまり無理しすぎちゃ、この子だっているんだから」
エミリーは膨らんでいる自身のお腹を優しく摩った。
「お、また大きくなったのか!」
「ふふ、今日は何回か蹴ったのよ」
「そうかぁ。もうすぐだもんな……」
クオードは嬉しそうにエミリーのお腹に耳を当てる。
「えぇ。だから、この子のためにも冒険者稼業はほどほどにね」
「……分かってる」
俺には帰る場所がある。絶対に守らなきゃいけないものがある。
そう、たとえどんなに敵と力の差があったとしても。
命を賭して……。
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