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第十二章 ナヴィとグローリア案内所
224.ヴィオネットの妹
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「ぐっ!」
「レミア!!」
「おらおらおらおら! どしたどしたぁ! そんなんじゃ俺は倒せないぜ!!」
ヴィオネットの猛攻は凄まじく、レミアに攻撃の隙を与えさせないほど苛烈なものだった。
「レミア! 今あなたには攻撃強化と防御強化を入れてるわ! そんなに構えなくても大丈夫だよ!」
「くっ分かってます! でも……」
姉さまの攻撃の一発一発が普段の数倍は重いし、一度喰らったら初手にもらったパンチの比じゃないくらいダメージをもらってしまう。
いくらナヴィさんの強化魔法があるとはいえ、所詮はただの<アタックグロウ><ディフェンドグロウ>。下級の強化魔法で何とかなるほど姉さまの攻撃は甘くない。
「そんな考えながらガードしてるとこういう攻撃も見逃しちまうぞ……」
「!? 消えた!」
「こっちだよ」
レミアはいなくなったヴィオネットの気配に気づき横を向くと、目の前には彼女の靴底が迫っていた。
「ぶっ!」
「レミア!」
「おっと、横向いたら危ないだろ。綺麗なお顔が台無しだぜ? まぁ龍になったらあんまり関係ねぇけどな。あはははは!」
「ぐっ、げほっ、げほっ、いっつ。くそぉ!」
鼻から血を流していたレミアの妙に痛がる様子にナヴィは何かに気づく。
「やっぱりなんか変だ……強化魔法を掛けたにしては攻撃に対する痛がり方が過剰な気がする……まさか」
「ねぇレミア! あなた、もしかしてあたしの魔法を拒絶してるの?」
「え……?」
「はっ……?」
戦闘を続けようとしていた二人の手が止まった。
「どういうことだナヴィ」
「さっきから少し引っかかってたんです。レミアにかなりの魔力量を消費して強化魔法を掛けているはずなのに、あたしの自身の魔力の残量が大して変わっていない。それにレミアの体内の細胞に働きかけているこの魔法が途中で壁みたいなのにぶつかる感じがあったんです」
「ぶつかる感じ……?」
「強化魔法は掛けている術者とそれを受ける側の魔力の受け渡しを行っているようなものなんです。それなのにあたしの魔力が減っていない。つまりレミアはあたしの魔法を受け付けていない、そうなんでしょ。レミア!?」
「っつ!?」
「図星か……?」
ナヴィの問いかけに言葉が詰まるレミアにヴィオネットは失望の目を向ける。
「ち、違います! 見てください! ちゃんと魔法を受け取った証のオーラをちゃんと身に纏っているじゃないですか」
振り返りナヴィに体を見せるレミアだったが、ナヴィは無言で首を振った。
「ナヴィ……さん?」
「あなたはあたしがどんな特訓をしてるのかってあんまり知らないと思うけど。それはあたしの特訓をする前のただの強化魔法なんだ」
「え?」
「そうじゃなきゃそこまでやられていないよ」
「……本当なのか、レミア」
「姉さま……」
顔を下に向け構えていた拳を下ろすレミア。
「姉さま。ナヴィさん。私にはこの戦闘の意図が分かりません。どうして二対一なのでしょうか」
「……?」
「私一人で姉さまに勝つことはできない。姉さまはそう思ってナヴィさんと共闘させるようにしたのでしょうか?」
「……」
レミアの話にヴィオネットは黙り込み腕を組んだ。
「そうですよね、これなら私でも勝てるって自信を持たせるために。そうですよねナヴィさん!」
「そ、それは……」
「私はナヴィさんに手助けしてもらっても姉さまに勝つことはできません。私と姉さまとでは才能が違いますから」
「才能……それは違うぞレミア」
「何が違うんですか!!」
弁明をしようとしたヴィオネットにレミアは腹を立たせ、食いつき気味で拒絶した。
「姉さまには分からないんですよ。私の気持ちなんて」
「追いつきたくても追いつけない。追いつかせてくれない。私がどんなに頑張っても、どんなに挑んでも簡単に姉さまはそれを跳ねのけてしまう」
「レミア……」
「最初は姉さまの妹ということがすごく嬉しくて、誇らしくて、自慢で……でもそれも幼少時代の話。大人になり私も仕事をするようになってからはその気持ちは一気に変わっていきました」
「冒険者さまらの、『天才ヴィオネットグローリアの妹』という過剰な期待、プレッシャー、私にはそれを受け止めきれるような器も才能もありません。私なりに努力して成長したとしても、それを『ヴィオネットさんの妹だから当然だよね』って一蹴して……誰も私のことなんて見てくれない」
「それに、そんな私の目の前に現れたナヴィさん」
「え? あたし?」
「最初に案内所に来た時、なんだ私よりも下の人はいるんだ。それに同業者ならなおさら『天才ヴィオネットグローリアの妹』の私が負けるはずがない。正直そんな風に思っていました」
「え……」
「でも、そのナヴィさんはあっという間に私を抜き去っていった。数年かけて手慣れた仕事の数々をナヴィさんはたった数か月で、私が何年も積み重ねてきた冒険者さまとの信頼関係をいとも簡単に作って」
「分かっていたんです。『ヴィオネット・グローリアの妹』このレッテルに一番甘えてるのは自分だって」
「だから、ナヴィさんの力を借りて姉さまに勝ったとしても、それは今までの私と変わらない。意味が無いんです」
「ふーんあっそ」
ヴィオネットは乾いた言葉を吐き捨てた。
「ヴィオネさん!?」
「姉……さま?」
「はぁ、もういいや。終わりだ」
<バーサーク>の状態を解き元の姿へと戻ったヴィオネットはレミアの横を通り無言で案内所へと帰っていった。
「レミア!!」
「おらおらおらおら! どしたどしたぁ! そんなんじゃ俺は倒せないぜ!!」
ヴィオネットの猛攻は凄まじく、レミアに攻撃の隙を与えさせないほど苛烈なものだった。
「レミア! 今あなたには攻撃強化と防御強化を入れてるわ! そんなに構えなくても大丈夫だよ!」
「くっ分かってます! でも……」
姉さまの攻撃の一発一発が普段の数倍は重いし、一度喰らったら初手にもらったパンチの比じゃないくらいダメージをもらってしまう。
いくらナヴィさんの強化魔法があるとはいえ、所詮はただの<アタックグロウ><ディフェンドグロウ>。下級の強化魔法で何とかなるほど姉さまの攻撃は甘くない。
「そんな考えながらガードしてるとこういう攻撃も見逃しちまうぞ……」
「!? 消えた!」
「こっちだよ」
レミアはいなくなったヴィオネットの気配に気づき横を向くと、目の前には彼女の靴底が迫っていた。
「ぶっ!」
「レミア!」
「おっと、横向いたら危ないだろ。綺麗なお顔が台無しだぜ? まぁ龍になったらあんまり関係ねぇけどな。あはははは!」
「ぐっ、げほっ、げほっ、いっつ。くそぉ!」
鼻から血を流していたレミアの妙に痛がる様子にナヴィは何かに気づく。
「やっぱりなんか変だ……強化魔法を掛けたにしては攻撃に対する痛がり方が過剰な気がする……まさか」
「ねぇレミア! あなた、もしかしてあたしの魔法を拒絶してるの?」
「え……?」
「はっ……?」
戦闘を続けようとしていた二人の手が止まった。
「どういうことだナヴィ」
「さっきから少し引っかかってたんです。レミアにかなりの魔力量を消費して強化魔法を掛けているはずなのに、あたしの自身の魔力の残量が大して変わっていない。それにレミアの体内の細胞に働きかけているこの魔法が途中で壁みたいなのにぶつかる感じがあったんです」
「ぶつかる感じ……?」
「強化魔法は掛けている術者とそれを受ける側の魔力の受け渡しを行っているようなものなんです。それなのにあたしの魔力が減っていない。つまりレミアはあたしの魔法を受け付けていない、そうなんでしょ。レミア!?」
「っつ!?」
「図星か……?」
ナヴィの問いかけに言葉が詰まるレミアにヴィオネットは失望の目を向ける。
「ち、違います! 見てください! ちゃんと魔法を受け取った証のオーラをちゃんと身に纏っているじゃないですか」
振り返りナヴィに体を見せるレミアだったが、ナヴィは無言で首を振った。
「ナヴィ……さん?」
「あなたはあたしがどんな特訓をしてるのかってあんまり知らないと思うけど。それはあたしの特訓をする前のただの強化魔法なんだ」
「え?」
「そうじゃなきゃそこまでやられていないよ」
「……本当なのか、レミア」
「姉さま……」
顔を下に向け構えていた拳を下ろすレミア。
「姉さま。ナヴィさん。私にはこの戦闘の意図が分かりません。どうして二対一なのでしょうか」
「……?」
「私一人で姉さまに勝つことはできない。姉さまはそう思ってナヴィさんと共闘させるようにしたのでしょうか?」
「……」
レミアの話にヴィオネットは黙り込み腕を組んだ。
「そうですよね、これなら私でも勝てるって自信を持たせるために。そうですよねナヴィさん!」
「そ、それは……」
「私はナヴィさんに手助けしてもらっても姉さまに勝つことはできません。私と姉さまとでは才能が違いますから」
「才能……それは違うぞレミア」
「何が違うんですか!!」
弁明をしようとしたヴィオネットにレミアは腹を立たせ、食いつき気味で拒絶した。
「姉さまには分からないんですよ。私の気持ちなんて」
「追いつきたくても追いつけない。追いつかせてくれない。私がどんなに頑張っても、どんなに挑んでも簡単に姉さまはそれを跳ねのけてしまう」
「レミア……」
「最初は姉さまの妹ということがすごく嬉しくて、誇らしくて、自慢で……でもそれも幼少時代の話。大人になり私も仕事をするようになってからはその気持ちは一気に変わっていきました」
「冒険者さまらの、『天才ヴィオネットグローリアの妹』という過剰な期待、プレッシャー、私にはそれを受け止めきれるような器も才能もありません。私なりに努力して成長したとしても、それを『ヴィオネットさんの妹だから当然だよね』って一蹴して……誰も私のことなんて見てくれない」
「それに、そんな私の目の前に現れたナヴィさん」
「え? あたし?」
「最初に案内所に来た時、なんだ私よりも下の人はいるんだ。それに同業者ならなおさら『天才ヴィオネットグローリアの妹』の私が負けるはずがない。正直そんな風に思っていました」
「え……」
「でも、そのナヴィさんはあっという間に私を抜き去っていった。数年かけて手慣れた仕事の数々をナヴィさんはたった数か月で、私が何年も積み重ねてきた冒険者さまとの信頼関係をいとも簡単に作って」
「分かっていたんです。『ヴィオネット・グローリアの妹』このレッテルに一番甘えてるのは自分だって」
「だから、ナヴィさんの力を借りて姉さまに勝ったとしても、それは今までの私と変わらない。意味が無いんです」
「ふーんあっそ」
ヴィオネットは乾いた言葉を吐き捨てた。
「ヴィオネさん!?」
「姉……さま?」
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