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第十二章 ナヴィとグローリア案内所
225.一歩前へ
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「はぁ、もういいや。終わりだ」
<バーサーク>状態を解き、元の姿へと戻ったヴィオネットはレミアの横を通り無言で案内所へと足を運んでいた。
「姉さま……?」
通り過ぎていくヴィオネットに声を掛けるレミアに対し、彼女は一瞬だけ憐みの目を向けた。
「お前らも中に入れ。少ししたら夜ご飯にしよう」
「……」
ヴィオネットはそのまま俯いていたナヴィの横も通り過ぎていく。
それを見たレミアはヴィオネットの方に振り返り背中を追いかけていった。
「あ、あの……姉さま」
もういい、これ以上は俺のエゴになってしまう。
これ以上レミアに求めるのはやめよう。
諦めたんじゃない。俺が期待をしすぎていただけなんだ。
俺が全部やればいいだけだ。たったそれだけのこと。
そのような意志を固め案内所の扉に手を掛けた瞬間だった。
彼女の背後から頬を叩いた大きな音が鳴った。
「!?」
ヴィオネットが音に反応し振り向くと、そこには膝から崩れ落ちていたレミアと、それを見下し左手がほんのりと赤くなっているナヴィの姿が映っていた。
「ナヴィ……?」
頬を押さえて体を震わせていたレミア。
「……にするんですか」
「なに?」
レミアの細々とした声にナヴィは冷たく低い声で対応した。
「なにするんですか!!」
「あんたこそ何してんのよ!!」
「「!?」」
ナヴィの怒鳴り声にレミアとヴィオネットが目を見開く。
「さっきから話を聞いていればなに? 『誰も私のことなんて見てくれない』? 『天才ヴィオネットグローリアの妹』? 甘ったれんな!」
「ひっ……」
ナヴィはレミアの胸を両手で掴み無理矢理立ち上がらせた。
「自分は悪くない被害者みたいな面しやがって、いつまでそうやって周りのせいにし続けるの!?」
「わ、私は、そんな……」
「誰も私のことを見てくれない? 違う。見てくれないのは冒険者さまでもヴィオネさんでもない。あんたが……あんた自身が自分で自分を見ようとしないからでしょ!」
「!?」
「ヴィオネさんがいつあんたと比べるような発言をしたの? あたしがいつあなたの方が下だって言った? あんたが勝手に決めつけて穴に入るように下に潜り込んでるだけじゃない!」
「そんなことは……」
「案内所の時も、あなたは冒険者さまに言ってたよね? 『私は姉さまとは違いますから』って。あれは謙遜なんかじゃない。自分からヴィオネさんという陰に隠れることで自分の居心地のいい場所に逃げようとしてただけなんでしょ!」
「ち、違う!」
「違くない!」
ナヴィはレミアの潤む瞳を真っ直ぐに見つめる。
「!?」
「もうやめようよ。上とか下とかさ……誰もそんなことで姉妹が仲たがいするところなんて見たくないんだよ」
「……」
「もうやめようよ。勝手に決めつけて自分の殻に閉じこもろうとするのも」
「……」
「もうやめようよ。才能が違う、姉を越えられないって諦めてしまうのを」
「……」
「その陰から一歩踏み出すのは辛いことだと思う。でも、今のまま死ぬまで陰に隠れる方がもっとつらいと思う」
「……」
歯を食いしばりながら涙を流し始めるレミア。
その姿を見たナヴィはレミアの肩に手を置き、穏やかな声で語り掛けた。
「レミア、今なんだよ。あんたが殻を破って姉の横に並ぼうと前に一歩出せるのは」
「今……」
「うん。超えようよ。ヴィオネットさんを」
「私が……姉さまを……超える」
「できるよ。レミアなら」
「でも……私一人じゃやっぱり……」
「なーにいってるの」
「え?」
「だから今日はあたしがいるんでしょ。ちょっとは頼りなさいよ。冒険者さまがダンジョン探索やボス攻略であたし達案内人を頼るように。レミアだって周りの人を頼っていいんだよ。一人で抱えなくていいんだよ?」
そう微笑みかけるナヴィの姿に、レミアは大粒の涙を流した。
「……ぐすっ。ナヴィさん……」
「あなたならできる。だって、『天才ヴィオネットグローリアの妹なんだから』」
「え……それって」
「ヴィオネさんにできることはあなたにもできるんだよ!」
「……!」
そうか……私の思う『ヴィオネットグローリアの妹』とナヴィさんの思っていた『ヴィオネットグローリアの妹』。同じ言葉でもこんなに違うんだ。
私は妹だから、姉ができることでも妹にはできないことがあると思ってた……。
けどそうじゃない。姉ができることは妹にもできる。
姉さま。私でもあなたのように強くなれるのでしょうか。
あなたの横に並べるのでしょうか……。
「レミア?」
レミアは肩に乗っていたナヴィの手をゆっくりと離し、無言で立ち上がった。
「ナヴィさん、私。やっぱり才能の有無は少なからずあると思うんです。私と姉さまやナヴィさんはやっぱり違うと思います」
「レミア……」
「でも、もう諦めたくありません。姉さまが天才だったとしても、最強だったとしても、それでも姉さまに食らいついていきたい。もう陰には隠れたくない」
「うん」
「私は姉さまに並びたい。姉さまを超えたい!」
「うん」
「姉さま!」
玄関口で二人の様子を見守っていたヴィオネットに視線を向けるレミア。
「……なんだ?」
「私ともう一度戦ってください! ナヴィさんと一緒に!」
「……いい眼になったな。レミア」
「今日、私は姉さまを超えてみせます!!」
レミアの言葉にヴィオネットの口角が一気に上がった。
「望むところだ。レミア!」
<バーサーク>状態を解き、元の姿へと戻ったヴィオネットはレミアの横を通り無言で案内所へと足を運んでいた。
「姉さま……?」
通り過ぎていくヴィオネットに声を掛けるレミアに対し、彼女は一瞬だけ憐みの目を向けた。
「お前らも中に入れ。少ししたら夜ご飯にしよう」
「……」
ヴィオネットはそのまま俯いていたナヴィの横も通り過ぎていく。
それを見たレミアはヴィオネットの方に振り返り背中を追いかけていった。
「あ、あの……姉さま」
もういい、これ以上は俺のエゴになってしまう。
これ以上レミアに求めるのはやめよう。
諦めたんじゃない。俺が期待をしすぎていただけなんだ。
俺が全部やればいいだけだ。たったそれだけのこと。
そのような意志を固め案内所の扉に手を掛けた瞬間だった。
彼女の背後から頬を叩いた大きな音が鳴った。
「!?」
ヴィオネットが音に反応し振り向くと、そこには膝から崩れ落ちていたレミアと、それを見下し左手がほんのりと赤くなっているナヴィの姿が映っていた。
「ナヴィ……?」
頬を押さえて体を震わせていたレミア。
「……にするんですか」
「なに?」
レミアの細々とした声にナヴィは冷たく低い声で対応した。
「なにするんですか!!」
「あんたこそ何してんのよ!!」
「「!?」」
ナヴィの怒鳴り声にレミアとヴィオネットが目を見開く。
「さっきから話を聞いていればなに? 『誰も私のことなんて見てくれない』? 『天才ヴィオネットグローリアの妹』? 甘ったれんな!」
「ひっ……」
ナヴィはレミアの胸を両手で掴み無理矢理立ち上がらせた。
「自分は悪くない被害者みたいな面しやがって、いつまでそうやって周りのせいにし続けるの!?」
「わ、私は、そんな……」
「誰も私のことを見てくれない? 違う。見てくれないのは冒険者さまでもヴィオネさんでもない。あんたが……あんた自身が自分で自分を見ようとしないからでしょ!」
「!?」
「ヴィオネさんがいつあんたと比べるような発言をしたの? あたしがいつあなたの方が下だって言った? あんたが勝手に決めつけて穴に入るように下に潜り込んでるだけじゃない!」
「そんなことは……」
「案内所の時も、あなたは冒険者さまに言ってたよね? 『私は姉さまとは違いますから』って。あれは謙遜なんかじゃない。自分からヴィオネさんという陰に隠れることで自分の居心地のいい場所に逃げようとしてただけなんでしょ!」
「ち、違う!」
「違くない!」
ナヴィはレミアの潤む瞳を真っ直ぐに見つめる。
「!?」
「もうやめようよ。上とか下とかさ……誰もそんなことで姉妹が仲たがいするところなんて見たくないんだよ」
「……」
「もうやめようよ。勝手に決めつけて自分の殻に閉じこもろうとするのも」
「……」
「もうやめようよ。才能が違う、姉を越えられないって諦めてしまうのを」
「……」
「その陰から一歩踏み出すのは辛いことだと思う。でも、今のまま死ぬまで陰に隠れる方がもっとつらいと思う」
「……」
歯を食いしばりながら涙を流し始めるレミア。
その姿を見たナヴィはレミアの肩に手を置き、穏やかな声で語り掛けた。
「レミア、今なんだよ。あんたが殻を破って姉の横に並ぼうと前に一歩出せるのは」
「今……」
「うん。超えようよ。ヴィオネットさんを」
「私が……姉さまを……超える」
「できるよ。レミアなら」
「でも……私一人じゃやっぱり……」
「なーにいってるの」
「え?」
「だから今日はあたしがいるんでしょ。ちょっとは頼りなさいよ。冒険者さまがダンジョン探索やボス攻略であたし達案内人を頼るように。レミアだって周りの人を頼っていいんだよ。一人で抱えなくていいんだよ?」
そう微笑みかけるナヴィの姿に、レミアは大粒の涙を流した。
「……ぐすっ。ナヴィさん……」
「あなたならできる。だって、『天才ヴィオネットグローリアの妹なんだから』」
「え……それって」
「ヴィオネさんにできることはあなたにもできるんだよ!」
「……!」
そうか……私の思う『ヴィオネットグローリアの妹』とナヴィさんの思っていた『ヴィオネットグローリアの妹』。同じ言葉でもこんなに違うんだ。
私は妹だから、姉ができることでも妹にはできないことがあると思ってた……。
けどそうじゃない。姉ができることは妹にもできる。
姉さま。私でもあなたのように強くなれるのでしょうか。
あなたの横に並べるのでしょうか……。
「レミア?」
レミアは肩に乗っていたナヴィの手をゆっくりと離し、無言で立ち上がった。
「ナヴィさん、私。やっぱり才能の有無は少なからずあると思うんです。私と姉さまやナヴィさんはやっぱり違うと思います」
「レミア……」
「でも、もう諦めたくありません。姉さまが天才だったとしても、最強だったとしても、それでも姉さまに食らいついていきたい。もう陰には隠れたくない」
「うん」
「私は姉さまに並びたい。姉さまを超えたい!」
「うん」
「姉さま!」
玄関口で二人の様子を見守っていたヴィオネットに視線を向けるレミア。
「……なんだ?」
「私ともう一度戦ってください! ナヴィさんと一緒に!」
「……いい眼になったな。レミア」
「今日、私は姉さまを超えてみせます!!」
レミアの言葉にヴィオネットの口角が一気に上がった。
「望むところだ。レミア!」
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