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第十三章 ブラッディフェスト 序章
235.ニシガン防衛戦
しおりを挟むセブンスシート、アーミリー・エーミリーの指令によりミモザが去った後のニシガン平野では。
「ギャァァァァ!」
「ジェニー! こっちは終わったぞ!」
「ありがとうございます、しかし西側の戦線が手薄になっています! そちらに救援を」
「分かった、連れてってくれ!」
「任せてください!」
ミモザの引き連れてきた魔物と戦うニシガン平野の冒険者と案内人達は、抜群の連携と個々の実力を発揮し魔物の侵攻を防いでいた。
「はぁ、はぁ」
「団長。大丈夫ですか? ここ数日戦いっぱなしですよね……?」
「まぁな、だがお前のガイドのおかげで何とかなっている。この猛攻さえ凌げば勝機が見えてくるぞ」
「はい。それにそれぞれの前線にいる物見の報告があり、敵の最後尾が見えてきているそうです!」
「なるほど、それは吉報だな。各門を守るパーティーに今の報告を。この戦いの終わりも近いと伝え士気を上げ前線を一気に上げるぞ」
「分かりました」
私たちニシガン平野の冒険者と案内人の結束力は他の地域よりも頭一つ抜けている。こんな薄っぺらい魔物の軍団なんかにやられるほど弱くない。
それに逆を言えばここが堕とされるようなことがあれば、ここ一帯の村や街のほとんどは……。
いや、現状かなり攻められてたけどそれも少しずつ押し戻せてきている。
「なぁジェニー」
「あ、はい。団長いかがいたしましたか?」
「数時間前から戦っていた敵から感じ始めたんだが、敵の連帯性が一気に無くなってように思えたのだが」
「……確かにそうですね」
ここを攻められてからの数日間はボードゲームのようにじわじわと我々の一手一手を摘んでいくような戦い方をしていたのに。
いきなり連携を止め数と力で押すような戦い方に変わっていましたね。
でも、だからこそ押し返すことができている。
あのまま攻められていたらと考えると。
「ジェニー? ジェニー!」
「おわっ」
「大丈夫か? 手綱から手を離すなよ!」
「すみません。敵の意図が読めなくてついぼっーとしてしまい落馬しそうに……」
「……敵の指揮官が変わったとみるべきか?」
「いえ……おそらくいなくなったのかと」
「いなくなった?」
「力技の攻めといえば聞こえがいいかもしれませんが、連帯感のない、例えるならダンジョンにいる知能のないモンスターと同じような戦い方をしていました。おそらく彼らも指揮が無くなり困惑していたのかもしれません」
「なるほどな。なら余計に今がチャンスっつーことだな」
「はい。間違いありません。逆に今を逃すと援軍や支援が来たりするかもしれません。多少無茶かもしれませんが。戦線で戦っている冒険者さまらを集めて一気に戦況を傾けましょう」
「……あぁ! お前の指示だ。間違いないだろう!」
「はい、ありがとうございます!!」
このままいってくれればいいけど。
なんだろうこの胸騒ぎ……。
「!?」
「どうした、空なんか見上げて」
「いえ……月が赤いなと……」
「?」
「す、すみません。西門に急いで向かいましょう! あそこが落とされたら終わりです」
その案内人とニシガン平野の冒険者を率いていた団長は馬を走らせ、窮地である西門の戦線にたどり着いた。
「おい、嘘だろ……」
「そんな。手薄になっているとは聞いていましたが……」
全壊……?
「ジェニーの言っていた通り、むき出しになっているこの地形で攻められやすさはあったが、その分他の場所よりも冒険者、そして案内人の質も良く人数も多めに配置していたはずなのに」
「ゴホッゴホッ」
「!? まだ生きている人がいます! 団長、こっちです!」
瓦礫の下から?
それに今の特徴的な咳払い。まさか。
「……え、マスター?」
「ジェニーだったか」
「なぁ、この人は?」
「私の案内所のマスターです。この西側の指揮をしてもらっていたのですが……待ってください。今<ヒール>を」
「いや、もう私の命も長くはない」
「そんな。まだ間に合います!」
「もういい!」
「!?」
「延命の処置はやめてくれ……。もう首から下が動かないんだ。神経系は回復魔法では治せない。お前も知ってるだろ」
「そんな……」
「それよりもここはもう終わりだ。早く別の場所へ逃げるんだ……」
「まだ終わってません。ここ以外は徐々に押し返してます! それに敵の動きも鈍く」
「……それは少し前の話だ」
「え?」
「攻めてきた。サーティーンプリンスターが」
「「な!?」」
「一度途切れた指揮系統が一気に復活したんだ。それもさっきよりも高い精度で」
「精度が……高い?」
「恐らく最初に指揮していた奴が下位の幹部。そしてそいつが途中から代わり、より上位の幹部になったのが妥当な線だ」
「上位の幹部に……」
「あぁ、とにかく気を付けろ。ここはもうだいぶ前に抜かれて他のところも背後から狙われるだろう」
「本当か!? ジェニーすぐに」
「団長、待ってください」
「どうした。急いで向かわなければ」
「……」
どうすれば……。
西側のこのやられ方を見るに、さっきまで指揮していた幹部とは比にならないほど残虐……。というよりも、心がない?
あまりにも破壊することに対して躊躇が無さすぎる。
他のところへ助けに行っても恐らく私たちがやられるだけだ。
おそらくここはもう。
「撤退しましょう」
「は!?」
「団長。撤退しましょう」
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