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第十三章 ブラッディフェスト 序章
236.ニシガン防衛戦②
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「撤退しましょう」
「は!? おいジェニー何言ってんだ」
「いや、ジェニーの判断は正しい……」
「死にぞこないのあんたは黙ってろ!」
「団長。ニシガン平野はこの西門が落ちた時点で終わりなんです……他の場所にも撤退の指示を出しましょう」
「だめだ! これじゃここで死んだ奴らが!! それにお前はここを取られてもいいのか!? あ……」
ジェニーの鼻をすする音が生気を感じることのできない無音の西門に響き渡った。
「ジェニー……」
「もうここは、ニシガン平野は終わりです」
「……」
「私たちができることは、今生き残っている案内人と冒険者の命を守ること。亡くなった方々を悔やむ時間はありません」
「お前……」
「それに団長のここの惨状を見た時の瞳。絶望した瞳でした」
「な、なにを……」
「撤退することは負けを認めることではありません。次への布石を打つための時間を作ることです。どうかお気を静めて……」
「……くっ。がぁ!」
団長は歯を食いしばり地面に拳を叩きつけた。
「……分かった」
「団長?」
「各方面に急いで伝令を。少々遠いが王都に向かうぞ」
「…はい!! 団長は先に、私はマスターを」
「分かった。すぐにこい」
「かしこまりました」
ジェニーは膝を着き冷たくなりつつあるマスターの手を取った。
「マスター」
「ジェニー……立派になったな」
「いえ、私はまだマスターの足元にも……」
「いや、謙遜はいい」
「すみません。私がもっと早く来ていれば」
「しょうがない。想定外の出来事だったからな」
「マスター。私マスターがいなかったら……」
「……王都の近くにオリバービレッジという村がある」
「オリバービレッジ……」
「そこにお前と同じくらいの年の公認の上級ガイドがいるらしい」
「……聞いたことはありますが」
「お前はとにかくそこへ向かい、その子に会うんだ。これからは地方ごとで戦う戦争ではない」
「それはどういう……マ、マスター!? マスター!!」
「あぁ、もう……か」
「マスター、まだ、まだいってはいけません!」
「これからはお前たちが、お前たちが世界を……守って……」
マスターは言い切ることなく静かに目を閉じた。
「く……うあぁぁぁぁぁぁぁ!」
ジェニーが上司との別れを惜しんでいる最中。ニシガンの団長は各防衛線に出向き撤退の指示を出していた。
「南門を守る冒険者、案内人に注ぐ。西門が落ちた! 全ての戦闘を取りやめ撤退を!」
「はぁ!? なんでだよ団長!」
「今ちょうど押し返してたのに!」
「私たちはまだ戦えます!」
目の前にいる魔物と戦いながらも団長の放った言葉に野次を飛ばす冒険者たち。
「死にたい奴はここで勝手に死ねぇ!」
「「「!?」」」
「ニシガン平野を守ることは確かに大事だ。我々が生まれ育った場所でもある」
「だが! それよりも苦楽を共にし、切磋琢磨をしあってきた仲間の死を見届けることを俺はしたくない!」
「今は堪えてくれ、俺たちはまだ戦える。戦えるからこそその力を今は温存するべきだ。来たるべき決戦のために今は堪えてくれ……頼む」
「団長が、頭を下げている」
「確かに。このまま戦っていてもじり貧だ」
「押し返したと思ってはいたが。さっきから敵の攻撃の勢いが戻ってきている」
「死んだ仲間のために剣を振るい魔法を使うのは、今じゃない、ここじゃない。命を賭して戦いたいのなら今は黙って俺についてこい。俺たちは負けてないこの撤退は次の勝利への布石にする! それが死んでいった者たちへの弔いだ!」
「……団長の手が」
「血で滲んでる」
「掲げた手も。震えている……」
「それだけの覚悟で……」
「く、不本意だが団長は裏切れねぇ」
「撤退だぁ! 団長について行け!」
「撤退するぞ!」
「前を阻む敵だけを薙ぎ倒していけ!」
「お前ら……」
「団長。他のところにも回るんだろ」
「俺達は大丈夫です!」
「早く北門の方にも」
「殿は我々が」
「あぁ、あぁ!」
南門の冒険者と案内人が近くの馬に乗り一斉に走り出した。
「すまないニシガン平野よ、すまない、死んでいった友よ。この地は必ず。必ずまた取り戻す」
「団長」
「ジェニーか。もう大丈夫か」
「……はい」
「南門はもう撤退の指示が終わった。後は北門だ」
「ありがとうございます」
「それで、俺たちはこれからどこを目指す」
「……マスター。マスターが王都へ行けと」
「王都だと?」
「はい。ここからは地方ごとの戦いではないと」
「……なるほど。そういうことか」
「はい。王都を目指しましょう」
その会話を終えた二人は南門の方に振り返った。
「殿を務めたあいつらはもう……」
「その人たちの死。無駄にはできません」
「あぁ。分かっている。行くぞ」
「はい」
ニシガン平野中央広場。
「MT2245さま」
「……」
「全ての門を占拠し、残っていた冒険者、案内人全て排除いたしました」
「……」
「お次の指示を」
「……引くぞ」
「はっ」
死体の数が明らかに少ない。
逃げられたか。まぁいい。どう転んでもミッションは成功していた。
ん? あれは馬による砂煙の……。
「まぁいい。では退却を」
「待て!! はぁ、はぁ、はぁ」
冒険者が一人残っていたか。
あの攻撃を受けきるとは。
「俺はまだ戦えるぞ!」
愚かだ。
「俺はまだ……っ」
こうやって首を切れば一瞬で命が無くなる。
尊いな、人間というのは。
「ニシガン平野。占拠完了。ミッションコンプリート」
「は!? おいジェニー何言ってんだ」
「いや、ジェニーの判断は正しい……」
「死にぞこないのあんたは黙ってろ!」
「団長。ニシガン平野はこの西門が落ちた時点で終わりなんです……他の場所にも撤退の指示を出しましょう」
「だめだ! これじゃここで死んだ奴らが!! それにお前はここを取られてもいいのか!? あ……」
ジェニーの鼻をすする音が生気を感じることのできない無音の西門に響き渡った。
「ジェニー……」
「もうここは、ニシガン平野は終わりです」
「……」
「私たちができることは、今生き残っている案内人と冒険者の命を守ること。亡くなった方々を悔やむ時間はありません」
「お前……」
「それに団長のここの惨状を見た時の瞳。絶望した瞳でした」
「な、なにを……」
「撤退することは負けを認めることではありません。次への布石を打つための時間を作ることです。どうかお気を静めて……」
「……くっ。がぁ!」
団長は歯を食いしばり地面に拳を叩きつけた。
「……分かった」
「団長?」
「各方面に急いで伝令を。少々遠いが王都に向かうぞ」
「…はい!! 団長は先に、私はマスターを」
「分かった。すぐにこい」
「かしこまりました」
ジェニーは膝を着き冷たくなりつつあるマスターの手を取った。
「マスター」
「ジェニー……立派になったな」
「いえ、私はまだマスターの足元にも……」
「いや、謙遜はいい」
「すみません。私がもっと早く来ていれば」
「しょうがない。想定外の出来事だったからな」
「マスター。私マスターがいなかったら……」
「……王都の近くにオリバービレッジという村がある」
「オリバービレッジ……」
「そこにお前と同じくらいの年の公認の上級ガイドがいるらしい」
「……聞いたことはありますが」
「お前はとにかくそこへ向かい、その子に会うんだ。これからは地方ごとで戦う戦争ではない」
「それはどういう……マ、マスター!? マスター!!」
「あぁ、もう……か」
「マスター、まだ、まだいってはいけません!」
「これからはお前たちが、お前たちが世界を……守って……」
マスターは言い切ることなく静かに目を閉じた。
「く……うあぁぁぁぁぁぁぁ!」
ジェニーが上司との別れを惜しんでいる最中。ニシガンの団長は各防衛線に出向き撤退の指示を出していた。
「南門を守る冒険者、案内人に注ぐ。西門が落ちた! 全ての戦闘を取りやめ撤退を!」
「はぁ!? なんでだよ団長!」
「今ちょうど押し返してたのに!」
「私たちはまだ戦えます!」
目の前にいる魔物と戦いながらも団長の放った言葉に野次を飛ばす冒険者たち。
「死にたい奴はここで勝手に死ねぇ!」
「「「!?」」」
「ニシガン平野を守ることは確かに大事だ。我々が生まれ育った場所でもある」
「だが! それよりも苦楽を共にし、切磋琢磨をしあってきた仲間の死を見届けることを俺はしたくない!」
「今は堪えてくれ、俺たちはまだ戦える。戦えるからこそその力を今は温存するべきだ。来たるべき決戦のために今は堪えてくれ……頼む」
「団長が、頭を下げている」
「確かに。このまま戦っていてもじり貧だ」
「押し返したと思ってはいたが。さっきから敵の攻撃の勢いが戻ってきている」
「死んだ仲間のために剣を振るい魔法を使うのは、今じゃない、ここじゃない。命を賭して戦いたいのなら今は黙って俺についてこい。俺たちは負けてないこの撤退は次の勝利への布石にする! それが死んでいった者たちへの弔いだ!」
「……団長の手が」
「血で滲んでる」
「掲げた手も。震えている……」
「それだけの覚悟で……」
「く、不本意だが団長は裏切れねぇ」
「撤退だぁ! 団長について行け!」
「撤退するぞ!」
「前を阻む敵だけを薙ぎ倒していけ!」
「お前ら……」
「団長。他のところにも回るんだろ」
「俺達は大丈夫です!」
「早く北門の方にも」
「殿は我々が」
「あぁ、あぁ!」
南門の冒険者と案内人が近くの馬に乗り一斉に走り出した。
「すまないニシガン平野よ、すまない、死んでいった友よ。この地は必ず。必ずまた取り戻す」
「団長」
「ジェニーか。もう大丈夫か」
「……はい」
「南門はもう撤退の指示が終わった。後は北門だ」
「ありがとうございます」
「それで、俺たちはこれからどこを目指す」
「……マスター。マスターが王都へ行けと」
「王都だと?」
「はい。ここからは地方ごとの戦いではないと」
「……なるほど。そういうことか」
「はい。王都を目指しましょう」
その会話を終えた二人は南門の方に振り返った。
「殿を務めたあいつらはもう……」
「その人たちの死。無駄にはできません」
「あぁ。分かっている。行くぞ」
「はい」
ニシガン平野中央広場。
「MT2245さま」
「……」
「全ての門を占拠し、残っていた冒険者、案内人全て排除いたしました」
「……」
「お次の指示を」
「……引くぞ」
「はっ」
死体の数が明らかに少ない。
逃げられたか。まぁいい。どう転んでもミッションは成功していた。
ん? あれは馬による砂煙の……。
「まぁいい。では退却を」
「待て!! はぁ、はぁ、はぁ」
冒険者が一人残っていたか。
あの攻撃を受けきるとは。
「俺はまだ戦えるぞ!」
愚かだ。
「俺はまだ……っ」
こうやって首を切れば一瞬で命が無くなる。
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