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第十三章 ブラッディフェスト 序章
239.二体の龍と
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デンバード山脈、北側。
「キャハハハハ、ホラホラモットガンバリナヨ!」
「くっこいつ! 強い……」
「これが、クオードさんのパーティーをやったやつか」
「火力もそうだがあの巨体でありえないスピードしてやがる……」
北側では龍の姿に変身していたディノールの配下ダリアが、守衛していた冒険者に上空から猛威を振るっていた。
「カクレテナイデハヤクデテキナヨ! ジャナイト、コノモリゼンブモヤシチャウヨ!! アハハハハハ」
「くそ、くそ、くそ」
一人の魔法使いが杖をぎゅっと握る。
それを見た同じパーティーの冒険者が肩を持った。
「おい! 何考えてんだ! あれはだめだ、俺らが勝てる相手じゃない!」
「でも、あいつのせいで、この森が……俺達の故郷が……」
「フーン、デテコナインダネ、ナラショウガナイ。チュウコクドオリ、コノモリイッタイヲヤキツクシチャウヨ!」
ダリアは口から火炎球を数発森の中に放った
その火は木から木へと燃え移り、辺りは一瞬で火の海と化した。
「あぁ……くそっぉぉぉ」
「おい、待て! 出るな!」
「はぁぁぁぁぁぁ!」
<ハイドロブロウ!!!>
魔法使いは身を隠すことを止め正面に立ち、詠唱とともに大量の水流をダリアに放った。
「グッ」
「あ、当たった!!」
彼の放った水流がダリアに直撃するも、何もなかったのようにダリアは命中した箇所を指で掻いた。
「ン? ナニコレ、タダノミズデッポウナノ?」
「なっ、全然効いて……ない」
「くそ、装甲が固すぎる……」
「あいつの水魔法はかなりの威力なんだぞ……それがあの程度なんて」
「ケド、ミツケタ。カクレズニ、ユウキヲダシテコウゲキシテキタコトハホメテアゲル」
「ひっ!」
「イヤ、ムボウトイウベキカナ、マァイイヤ、ソノママシネェ!!」
「おい、あいつやべぇぞ!!」
「早く戻ってこい!!」
「だめだ、あの龍の速さから考えてもう間に合わねぇ!!」
他の冒険者たちが魔法使いを木の陰に戻そうと必死で声を掛けた。
しかし、その魔法使いは恐怖から足がすくみ一歩も動けなくなっていた。
ダリアが攻撃のため突っ込んでいく中、魔法使いは呼びかけていた冒険者の方に顔を向けた。
「……ごめん、僕、死ぬかも……」
泣き顔に震えた声。彼の表情は死を覚悟したものだった。
「シネェェェェェェ!!」
ダリアは口を大きく広げ、そのまま噛み殺そうとしていた。
魔法使いもそれを受け入れようと目を瞑った。
その瞬間だった。
「ナッ……」
ガキンという大きな金属音が森一帯に響き渡った。
「あ、あれ……、僕まだ、生きてる……」
瞑った目をゆっくりと開けると、目の前にいたのはダリアの開いた口を武器で押さえつけていた冒険者の姿だった。
「はぁ、何とか間に合ったぜ」
「ガッ、ガッ! ……オマエハ、アノトキノ」
「あ、あなたは……クオードさん!!」
「よく持ちこたえてくれた、お前ら、こっからは俺に任せろ」
デンバード山脈南側。
「イッピキ」
「ぐああぁぁぁぁぁぁ!」
「ニヒキ」
「がはっ、あ、あぁ……」
「サンビキ」
「きゃぁぁぁぁぁ…あ、あ、う」
南側は同じくディノールの配下、アギルが龍の姿で一帯の冒険者に襲い掛かっていた。
「はぁ、はぁ、はぁ」
「キサマ……マダイキテイタカ」
一人の冒険者がアギルの攻撃で致命傷を受けながらも剣を構えアギルの前に立った。
「トハイエ、ムシノイキ」
「はぁ、はぁ、ここは俺達の故郷だ。お前らには指一本触れさせん……」
「ソンナボロゾウキンノヨウナカラダデ、イッタイナニガデキル」
「お前を、倒す……」
「フ、フフ、フフフハハハハハ。バカカキサマ! ワタシヲタオス? アットウテキナサガアルノニカ?」
「あぁ、そのために俺たちはここで戦っているんだ」
肩で息を吸い、まだ残っている右腕のみで剣を構え、それでも真っ直ぐにアギルを見つめる冒険者に一瞬身を引くアギルだったが。
「ナメルナヨクソニンゲン!! ソウイウトコロガムカツクンダ!!」
その言葉に腹を立てたアギルが口から火炎放射のような火を放った。
「……みんな、すまない、俺はここまでだ」
冒険者が死を覚悟したその瞬間だった。
「え……火が、目の前で……消えた」
「ナッ……」
「おいおい、何やってんだ、お前」
「……はぁ、はぁ、え?」
「ここはお前の墓場じゃない。そうだろ」
冒険者は目の前にいた人間を見て、目を見開いた。
「……あ、あなたは」
「よく頑張った。後は俺に任せろ」
「……ナゼキサマガ」
「なぜ? 野暮なこと聞くなよ。簡単さ」
「テンスシートマハヲタオシタ、サイキョウノアンナイニン」
「お前を倒すために決まってんだろ。ついでにその後ろでふんぞり返っている四聖神官も一緒にな」
「キリュウ、ヴィオネット・グローリア!!」
「お家に帰るなら今だぞ、ドラゴンもどき」
「キャハハハハ、ホラホラモットガンバリナヨ!」
「くっこいつ! 強い……」
「これが、クオードさんのパーティーをやったやつか」
「火力もそうだがあの巨体でありえないスピードしてやがる……」
北側では龍の姿に変身していたディノールの配下ダリアが、守衛していた冒険者に上空から猛威を振るっていた。
「カクレテナイデハヤクデテキナヨ! ジャナイト、コノモリゼンブモヤシチャウヨ!! アハハハハハ」
「くそ、くそ、くそ」
一人の魔法使いが杖をぎゅっと握る。
それを見た同じパーティーの冒険者が肩を持った。
「おい! 何考えてんだ! あれはだめだ、俺らが勝てる相手じゃない!」
「でも、あいつのせいで、この森が……俺達の故郷が……」
「フーン、デテコナインダネ、ナラショウガナイ。チュウコクドオリ、コノモリイッタイヲヤキツクシチャウヨ!」
ダリアは口から火炎球を数発森の中に放った
その火は木から木へと燃え移り、辺りは一瞬で火の海と化した。
「あぁ……くそっぉぉぉ」
「おい、待て! 出るな!」
「はぁぁぁぁぁぁ!」
<ハイドロブロウ!!!>
魔法使いは身を隠すことを止め正面に立ち、詠唱とともに大量の水流をダリアに放った。
「グッ」
「あ、当たった!!」
彼の放った水流がダリアに直撃するも、何もなかったのようにダリアは命中した箇所を指で掻いた。
「ン? ナニコレ、タダノミズデッポウナノ?」
「なっ、全然効いて……ない」
「くそ、装甲が固すぎる……」
「あいつの水魔法はかなりの威力なんだぞ……それがあの程度なんて」
「ケド、ミツケタ。カクレズニ、ユウキヲダシテコウゲキシテキタコトハホメテアゲル」
「ひっ!」
「イヤ、ムボウトイウベキカナ、マァイイヤ、ソノママシネェ!!」
「おい、あいつやべぇぞ!!」
「早く戻ってこい!!」
「だめだ、あの龍の速さから考えてもう間に合わねぇ!!」
他の冒険者たちが魔法使いを木の陰に戻そうと必死で声を掛けた。
しかし、その魔法使いは恐怖から足がすくみ一歩も動けなくなっていた。
ダリアが攻撃のため突っ込んでいく中、魔法使いは呼びかけていた冒険者の方に顔を向けた。
「……ごめん、僕、死ぬかも……」
泣き顔に震えた声。彼の表情は死を覚悟したものだった。
「シネェェェェェェ!!」
ダリアは口を大きく広げ、そのまま噛み殺そうとしていた。
魔法使いもそれを受け入れようと目を瞑った。
その瞬間だった。
「ナッ……」
ガキンという大きな金属音が森一帯に響き渡った。
「あ、あれ……、僕まだ、生きてる……」
瞑った目をゆっくりと開けると、目の前にいたのはダリアの開いた口を武器で押さえつけていた冒険者の姿だった。
「はぁ、何とか間に合ったぜ」
「ガッ、ガッ! ……オマエハ、アノトキノ」
「あ、あなたは……クオードさん!!」
「よく持ちこたえてくれた、お前ら、こっからは俺に任せろ」
デンバード山脈南側。
「イッピキ」
「ぐああぁぁぁぁぁぁ!」
「ニヒキ」
「がはっ、あ、あぁ……」
「サンビキ」
「きゃぁぁぁぁぁ…あ、あ、う」
南側は同じくディノールの配下、アギルが龍の姿で一帯の冒険者に襲い掛かっていた。
「はぁ、はぁ、はぁ」
「キサマ……マダイキテイタカ」
一人の冒険者がアギルの攻撃で致命傷を受けながらも剣を構えアギルの前に立った。
「トハイエ、ムシノイキ」
「はぁ、はぁ、ここは俺達の故郷だ。お前らには指一本触れさせん……」
「ソンナボロゾウキンノヨウナカラダデ、イッタイナニガデキル」
「お前を、倒す……」
「フ、フフ、フフフハハハハハ。バカカキサマ! ワタシヲタオス? アットウテキナサガアルノニカ?」
「あぁ、そのために俺たちはここで戦っているんだ」
肩で息を吸い、まだ残っている右腕のみで剣を構え、それでも真っ直ぐにアギルを見つめる冒険者に一瞬身を引くアギルだったが。
「ナメルナヨクソニンゲン!! ソウイウトコロガムカツクンダ!!」
その言葉に腹を立てたアギルが口から火炎放射のような火を放った。
「……みんな、すまない、俺はここまでだ」
冒険者が死を覚悟したその瞬間だった。
「え……火が、目の前で……消えた」
「ナッ……」
「おいおい、何やってんだ、お前」
「……はぁ、はぁ、え?」
「ここはお前の墓場じゃない。そうだろ」
冒険者は目の前にいた人間を見て、目を見開いた。
「……あ、あなたは」
「よく頑張った。後は俺に任せろ」
「……ナゼキサマガ」
「なぜ? 野暮なこと聞くなよ。簡単さ」
「テンスシートマハヲタオシタ、サイキョウノアンナイニン」
「お前を倒すために決まってんだろ。ついでにその後ろでふんぞり返っている四聖神官も一緒にな」
「キリュウ、ヴィオネット・グローリア!!」
「お家に帰るなら今だぞ、ドラゴンもどき」
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