村人Aは勇者パーティーに入りたい! ~圧倒的モブが史上最高の案内人を目指します~

凛 捺也

文字の大きさ
243 / 262
第十三章 ブラッディフェスト 序章

239.二体の龍と

しおりを挟む
デンバード山脈、北側。



「キャハハハハ、ホラホラモットガンバリナヨ!」



「くっこいつ! 強い……」

「これが、クオードさんのパーティーをやったやつか」

「火力もそうだがあの巨体でありえないスピードしてやがる……」



 北側では龍の姿に変身していたディノールの配下ダリアが、守衛していた冒険者に上空から猛威を振るっていた。



「カクレテナイデハヤクデテキナヨ! ジャナイト、コノモリゼンブモヤシチャウヨ!! アハハハハハ」



「くそ、くそ、くそ」



 一人の魔法使いが杖をぎゅっと握る。



 それを見た同じパーティーの冒険者が肩を持った。



「おい! 何考えてんだ! あれはだめだ、俺らが勝てる相手じゃない!」



「でも、あいつのせいで、この森が……俺達の故郷が……」



「フーン、デテコナインダネ、ナラショウガナイ。チュウコクドオリ、コノモリイッタイヲヤキツクシチャウヨ!」 



 ダリアは口から火炎球を数発森の中に放った



 その火は木から木へと燃え移り、辺りは一瞬で火の海と化した。



「あぁ……くそっぉぉぉ」



「おい、待て! 出るな!」



「はぁぁぁぁぁぁ!」

<ハイドロブロウ!!!>



 魔法使いは身を隠すことを止め正面に立ち、詠唱とともに大量の水流をダリアに放った。



「グッ」



「あ、当たった!!」



 彼の放った水流がダリアに直撃するも、何もなかったのようにダリアは命中した箇所を指で掻いた。



「ン? ナニコレ、タダノミズデッポウナノ?」



「なっ、全然効いて……ない」



「くそ、装甲が固すぎる……」

「あいつの水魔法はかなりの威力なんだぞ……それがあの程度なんて」



「ケド、ミツケタ。カクレズニ、ユウキヲダシテコウゲキシテキタコトハホメテアゲル」



「ひっ!」



「イヤ、ムボウトイウベキカナ、マァイイヤ、ソノママシネェ!!」



「おい、あいつやべぇぞ!!」

「早く戻ってこい!!」

「だめだ、あの龍の速さから考えてもう間に合わねぇ!!」



 他の冒険者たちが魔法使いを木の陰に戻そうと必死で声を掛けた。



 しかし、その魔法使いは恐怖から足がすくみ一歩も動けなくなっていた。



 ダリアが攻撃のため突っ込んでいく中、魔法使いは呼びかけていた冒険者の方に顔を向けた。



「……ごめん、僕、死ぬかも……」



 泣き顔に震えた声。彼の表情は死を覚悟したものだった。



「シネェェェェェェ!!」



 ダリアは口を大きく広げ、そのまま噛み殺そうとしていた。



 魔法使いもそれを受け入れようと目を瞑った。



 その瞬間だった。



「ナッ……」



 ガキンという大きな金属音が森一帯に響き渡った。



「あ、あれ……、僕まだ、生きてる……」



 瞑った目をゆっくりと開けると、目の前にいたのはダリアの開いた口を武器で押さえつけていた冒険者の姿だった。



「はぁ、何とか間に合ったぜ」



「ガッ、ガッ! ……オマエハ、アノトキノ」



「あ、あなたは……クオードさん!!」



「よく持ちこたえてくれた、お前ら、こっからは俺に任せろ」







 デンバード山脈南側。



「イッピキ」



「ぐああぁぁぁぁぁぁ!」



「ニヒキ」



「がはっ、あ、あぁ……」



「サンビキ」



「きゃぁぁぁぁぁ…あ、あ、う」



 南側は同じくディノールの配下、アギルが龍の姿で一帯の冒険者に襲い掛かっていた。



「はぁ、はぁ、はぁ」



「キサマ……マダイキテイタカ」



 一人の冒険者がアギルの攻撃で致命傷を受けながらも剣を構えアギルの前に立った。



「トハイエ、ムシノイキ」



「はぁ、はぁ、ここは俺達の故郷だ。お前らには指一本触れさせん……」



「ソンナボロゾウキンノヨウナカラダデ、イッタイナニガデキル」



「お前を、倒す……」



「フ、フフ、フフフハハハハハ。バカカキサマ! ワタシヲタオス? アットウテキナサガアルノニカ?」



「あぁ、そのために俺たちはここで戦っているんだ」



 肩で息を吸い、まだ残っている右腕のみで剣を構え、それでも真っ直ぐにアギルを見つめる冒険者に一瞬身を引くアギルだったが。



「ナメルナヨクソニンゲン!! ソウイウトコロガムカツクンダ!!」



 その言葉に腹を立てたアギルが口から火炎放射のような火を放った。



「……みんな、すまない、俺はここまでだ」



 冒険者が死を覚悟したその瞬間だった。



「え……火が、目の前で……消えた」



「ナッ……」



「おいおい、何やってんだ、お前」



「……はぁ、はぁ、え?」



「ここはお前の墓場じゃない。そうだろ」



 冒険者は目の前にいた人間を見て、目を見開いた。



「……あ、あなたは」



「よく頑張った。後は俺に任せろ」



「……ナゼキサマガ」



「なぜ? 野暮なこと聞くなよ。簡単さ」



「テンスシートマハヲタオシタ、サイキョウノアンナイニン」



「お前を倒すために決まってんだろ。ついでにその後ろでふんぞり返っている四聖神官も一緒にな」



「キリュウ、ヴィオネット・グローリア!!」



「お家に帰るなら今だぞ、ドラゴンもどき」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

処理中です...