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第十三章 ブラッディフェスト 序章
241.クオードの作戦
しおりを挟むヴィオネットとクオードがディノール配下アギル、ダリアと戦闘を開始した頃、グローリア案内所では。
「ナヴィさん……」
「えぇ、始まったわ」
「北側、南側から共に激しい魔力のぶつかり合いを感じます」
「そうね」
「作戦通りになりましたね」
「えぇ、ここから上手くいけばいいけど……」
遡ること、作戦会議。
「ということでどうだろう」
クオードが各パーティーのリーダーと案内人に作戦を説明した。
「えーっと、つまりクオードさんの作戦は意図的に戦線に強弱を作り、押しきれていないところをカバーしにくるアギルとダリアを先に撃つということですか?」
「そういうことだナヴィちゃん。二体一気に来られてもどこまで対処できるか分かんねぇしな。危険な奴らは分散させて叩いた方がいい」
その話を聞いていたヴィオネットがクオードに話しかける
「ほーん。それで、そこに行くのはお前と誰なんだ?」
「そんなの決まってんだろ。お前だ」
「「「な!」」」
その場にいた二人以外の全員が驚いた。
「え、で、でもクオードさん。ヴィオネさんはここの指揮が」
「いや、ナヴィ。俺は行く」
「姉さま!?」
「そのためにお前らを鍛えてきたんだ。それに、もう俺がこの案内所にいなくてもお前らだけでやっていけるだけの力はあるだろ」
「そ、それは……」
ヴィオネットの言葉にまんざらでもない顔をするレミア。
「まぁそういうことだ。ヴィオネットと俺でこいつら二人を倒せれば流れは一気にこっちのもんになる、だからお前らにはそれまでの戦線のコントロールを頼みたい」
最初は困惑していたリーダーらはお互い顔を見合い、小さく頷いた。
「まぁこの案内所で最強なのは間違いなくお前らだからな」
「テンスシートを倒したのもお前らだし」
「案内人のヴィオネットさんに任せるのは冒険者としては情けないですが……」
「まぁでも二人なら逆に安心ね」
「お前ら……」
冒険者の反応を見たヴィオネットがレミアとナヴィを見つめた。
「そういうことだ、時期が来たら頼んだぞ」
「「……はい!!」」
そこから魔王軍とデンバード山脈の冒険者との戦闘が開始された。
「ヴィオネさん、クオードさん。物見からです。戦線はクオードさんの作戦通りの状況になっています!」
「よし! 流石あいつらだ!」
「誰が案内人してると思ってんだ。こんなところでへましてたら俺が殺す……」
「姉さま、それじゃ逆に冒険者様が委縮しちゃいますよ」
案内所の外で戦況を確認する4人だったが、レミアがある魔力を察知した。
「!? これは……」
「どうしたレミア」
「姉さま、クオードさん。大きな魔力反応が北側、南側に一つづつ発現しました!」
「よし、来たな」
「はぁ、かったりーなー」
「何だよヴィオネット。やる気ねぇなぁ」
「あ? あたりめーだろ……だって」
二人は武装を確認しそれぞれの方向へ歩き始めようとしたとき。
「姉さま、クオード様」
「「ん?」」
「ご健闘お祈りしています」
涙ぐみ、胸の前で手を組んだレミア。
「死なないでくださいね」
それを見たナヴィもレミアの肩を持ちクオードとヴィオネットに言葉を掛けた。
「おう、ありがとな!」
「ちっ、この程度で心配してんじゃねぇよ」
笑顔で手を上げたクオードとは対照的にヴィオネットは振り返ることなく戦線へと向かっていった。
その二人の姿を見送る二人だったが。
……っちゃだめ!!
「え?」
行かせちゃだめ!
「……誰? 頭の中に……」
ナミちゃん。ヴィオネットさんを、ヴィオネットさんを行かせちゃだめ!!
「ナ、ナヴィさん? どうかしましたか……ってナヴィさん!?」
脳から聞こえる謎の声に頭を抱えたナヴィ。
「え?」
「ナヴィさん。泣いて、ます? そんなに二人が行くのが悲しかったんですか?」
ナヴィの頬を伝う一滴の涙がきらりと光った。
「……あれ、ほんとだ。左目から……あたし、そんなに悲しくなったつもりはないんだけど」
たしかこんなこと、前にも……。
それに。なんであたしの名前を……。
「まぁ、あの二人なら心配いりませんよ。なんせクオードさんはこのグローリア案内所のナンバーワン冒険者ですからね」
泣いているナヴィを励ますかのように微笑みかけるレミア。
「……でもこの前はそいつらにやられて帰ってきたのよ? それが少し経ったくらいで力関係が変わるとは」
「まぁ、確かにそうですね。ただ、クオードさんの真価はパーティーではなくソロで戦う場面になってからです」
「あ、たしかそんなこと言っていたわね」
「はい。そしてそれは姉さまも同じです」
「なるほど。確かにあのヴィオネさんの全力をパーティーメンバーで足並み揃えようは無理な話よね」
「あははは、そうですね」
「そういえば、ヴィオネさん。さっき見たことないリングのネックレスを付けてたわ」
「あぁ。あれは……あれ?」
「ん?」
「どこかで見たことあると思ったらあれってまさか」
急に顔から冷や汗が出始めたレミア。
「見覚えがあるの?」
「はい、そして。それを付ける理由があるとすれば……」
「ちょ! 待って待って! 全然話が追いつけてないんだけど! ってレミア!」
「ナヴィさんはそこにいてください!」
レミアは急ぎ足で案内所の中へと戻っていった。
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