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第十三章 ブラッディフェスト 序章
242.半端者
しおりを挟む南側、山麓。
「ハハハ、ワタシノケイカイガイキスギテイタノカシラ!」
「……」
龍の姿へと変身したアギルがヴィオネットに猛攻を仕掛けていた。
「ソノママツブレテシマエェェ!!」
アギルはヴィオネットを踏みつけようと足の裏を叩きつけた。
「アッケナカッタナ……ン?」
「アシガ、トメラレタ?」
「ふーっ龍の姿をしてるからどんだけの力を持ってんのかって攻撃を受けてはいたが……」
「ナ……オ、オシカエサレテル」
アギルが踏み付けた足を覗くとヴィオネットが足を片手で止めている姿が映った。
「まさか、この程度のパワーでドラゴン属を名乗ってるわけじゃねぇだろうな?」
ヴィオネットは鋭い眼光でアギルを睨みつける。
「ウッ、ナゼ、ナゼカタテデ、ワタシノコウゲキヲ……」
「攻撃? もしこれを攻撃と呼ぶのであれば、お前はドラゴン属の本当の力を何も知らないんだな」
「ナ、ナニヲ」
「弱い奴には興味はねぇ。特に同じ種族となれば怒りすら覚える」
「クッ! ウオォォォォォォォ!!」
ヴィオネットの発言と眼光に怯んだアギルはそこから何度もヴィオネットを踏みつける。
「……」
「シネ! シネ! シネ!!」
しかしアギルのその攻撃はヴィオネットの片手に全て受け止められてた。
「後は? ほら来いよ、お前の全力の攻撃を」
「ク……クソォ!! クラエェェェ!!」
ヴィオネットに止められていた足を退け、巨大な火炎球を放つ。
「おう、ようやくまともな攻撃をしてきたな」
「ハハハハハ、ソノママモエツキロ!」
「まぁ、雑魚の中では。の話ではな」
「ナ、ナンダ!?」
ヴィオネットの身体がみるみるうちに巨大化し、黄金の龍の姿へと変貌する。
「デ、デカイ! ソレニ、ナンダコノコウゴウシサハ!?」
変身したヴィオネットが輝きを放つ巨大な翼で火炎球を一蹴する。
「ナ!? ワタシノゼンリョクガ……」
「この龍もどきのガキが」
「!? ガハッ」
ヴィオネットがアギルを一振りの尾で薙ぎ払った。
「ク、クソ」
「いいか、クソガキ。お前はドラゴン属としては不完全すぎる。変身したら言葉も片言、種族特有の力もない。半端もんだ」
「……」
「もうこれ以上お前にできることはない。二度目だ。大人しく家に帰れ」
「……」
「三度目の忠告はねぇぞ」
「……ナニガ」
「あ?」
「キサマニナニガワカル!! グオォォォ!!」
「っち。めんどくせぇな」
お前みたいな完璧なドラゴン属に何がわかる。
私とダリアは出来損ないのドラゴン属、半龍属と罵られていた。ドラゴン属として認められず、かといって人としても認められることはなかった。
第一次の交戦が終わった二年前。
住む家と両親を亡くした私たち。
「アギル」
「なに、ダリア」
「あたし達、どこに行けばいいのかな」
「……分からない。でも、ドラゴン属は他にもいるし、少し歩けば」
そうして路頭に迷いながらも着いたドラゴン属の残党がいるとされた町では。
「何だお前ら!!」
「よく見たら半端もんじゃないか! 魔族かもしれんな」
「合成獣ってのが最近はいるらしいぞ。きっとこれも俺達ドラゴン属のやつとの……」
「ち、違います! 私たちは本当にドラゴン属で」
「うるさい! ここにお前らを住まわせる場所はねぇ! ダンジョンに帰りやがれ!」
そういって奴らは私たちに追い払うように石を何度も何度もぶつけてきた。
「やめて! 痛い、痛い!」
「ダリア! 大丈夫!?」
それはドラゴン属だけではなく、ヒューマンも同じだった。
自分たちと少し違うから、たったそれだけの理由で虐げられた。
何度も口論してきたが、正義のため、皆を守るため、と着飾った言葉を並べるだけ。
人類とは本当に正義なのか。魔族は本当に悪なのか。
そんなことを考え始めたそんな時だった。
「やぁ」
「……あなたは?」
「俺はディノール。ドラゴン属の子らよ。俺の元に来い」
「「……」」
その先は特に聞かなかった。後からディノール様は魔王軍と聞いたけど別にそんなことはどうでもよかった。
半龍属の私たちの居場所がここにはある。それだけで生きていく活力になった。
アギルは回想している間に力が弱まり徐々に人の姿へと戻っていった。
「貴様ら人類が私たちをここまで追い詰めたんだ」
「……」
「お前のような完璧なドラゴン属には私たちの苦しみなんて一ミリもわからないだろ」
「……あぁ、わからんな」
アギルは体を起こし、もう一度龍の姿へなろうと魔力を練り上げる。
「ナラココデ、ワタシタチノクルシミヲ!」
「わりぃな」
「……ヘ?」
アギルが龍の姿に変身を遂げた瞬間、彼女の首が吹き飛んだ。
「そりゃもう言い合いっこなしだぜ」
「戦争っつーもんは悪とか正義とかじゃねぇんだ」
あ、あれ……私の身体が、目の前に……。
そう言えばヴィオネットの尻尾が私を通り過ぎていった気が。
目の前が……暗く。
「だが、一つ決定的なものがあるとすれば。自分の正義を押し通したいのなら、目の前にいる別の正義を振りかざす敵を薙ぎ倒していくことだ」
「それができないのなら。お前の正義はその程度ってことだ。半龍属アギル」
「今この場においての正義は俺みたいだな」
あぁ、ディノール様。
私は……ごめんダリア……。
切断された頭部と体は黒い塵と風に流されていった。
「これは……龍の鱗」
ヴィオネットはアギルの散っていった塵の一つの龍の鱗を手に取った。
「ドラゴン属か……どうしてこうなっちまったのかな」
苦い顔をし舌打ちをしたヴィオネットは別の戦場へと向かっていった。
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