村人Aは勇者パーティーに入りたい! ~圧倒的モブが史上最高の案内人を目指します~

凛 捺也

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第十三章 ブラッディフェスト 序章

243.クオードと火の精

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「これは……龍の鱗」



 ヴィオネットはアギルの散っていった塵の一つの龍の鱗を手に取った。



「ドラゴン属」

「それに首を切ったときのあいつの顔……」



 取り憑かれていた何かが解放されたような清々しい表情をしていたな。



 もとは獣人族とは言え人間。



 あの年齢で幾つもの障害を受け止めてきたんだろう。



「っと、ここで立ち止まっててもしょうがねぇ。他を加勢してやんねぇとな」 



 手に取った鱗をぎゅっと握りしめた。



 そしてフォースシート、ディノールの側近アギルに完勝したヴィオネットはダリアとクオードが交戦している北側に向かい走り始めた。



「……ちっ。また取れた……」



 走っているヴィオネットの体が揺れるたびに龍の鱗が一枚、また一枚と剥がれていく。



「あいつ相手にあそこまでする必要はなかったのにな。俺としたことが」



 くそ。剥がれ始めの時よりも明らかにペースが上がっている。



 けど剥がれていったこの鱗ももう拾っている余裕はない。



 とにかく今は一分一秒時間が惜しい。



 クオード、頼んだぞ。







 北側。山麓にて。



「オジサン、マモッテルダケジャアタシニハカテナイヨ!」



 赤褐色の龍、ダリアの攻撃がクオードに何度もダメージを与える。



「くっ、あの巨体でやっぱ速いな……」



 ダリアの攻撃に防戦一方のクオード。



「サァ、ドコマデタエラレルカナ!!」



 ダリアの鋭利な爪がクオードの防御の型を崩した。



「なっ!?」



「ウラァァァァ!!」



「がはっ!」



 クオードの檄が吹き飛び、がら空きとなった腹部に龍の尾で一撃を入れた。



「テゴタエナサスギ」



 うーん。あたしが期待しすぎたかな。この前とは違う雰囲気だったから、何か隠し玉でもあるかと思ったんだけど。



 案だけ威勢よく登場しておいて、なーんか拍子抜けだなぁ。



「はぁ、はぁ、はぁ」



「ソンナンデヨク、アタシニサイセンシヨウトオモッタネ」



「るせぇ。こちとら大切な仲間を殺されたんだ。理由なんてそれだけで十分だ。」



「……コノマエハ、ウンヨクイキノコッタミタイダケド。コンカイハカクジツニシトメルネ」



「はぁ、はぁ、はぁ」



 檄を持ち直すも、疲労とダメージが蓄積した体で呼吸を整えるクオード。



「ジャア、イクヨ!」



 ダリアの口内から巨大な火炎球が放たれた。



「これは、この前の……」



「サァ、シネ!!」



「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」



「アハハハハハ、ソノママモエカスニナッチャエ!! …………ン?」



 クオードの苦しむ姿を見て楽しんでいたダリアの目の色が変わった。



「ヒガ、ノコリツヅケテイル?」



 放たれた火炎球はクオードに直撃してからも燃え続けていた。



「ふっ」



「ナニ? ナンナノ?」



「あー熱かったぜ」



「ハッ?」



 クオードに纏わりついていたダリアの炎が徐々にクオードの身体に吸い込まれていく。



「だが、これでようやくいけるな? ウルカヌス」



「俺はいつでも大丈夫だっつーの」



「ナ、ナゼ、アタシノホノオガ!?」



「さぁ聖火を司る火の精よ! 俺に力を貸せ!!」

<ガーティアン・ウルカヌス!!>



 灰色の魔法陣がクオードの手元に出現し、そこから手のひらサイズの妖精が出現した。



「おっしゃぁぁぁぁぁ!!」



「……ナンダソノチッコイノ」



 目を細め気が抜けたような態度で話すダリア。



「あ、なんだてめぇ。今弱そう。とか思ったのか? あぁ!?」



 その妖精は喧嘩腰でダリアを睨みつけた。



「フン、マンヲジシテダシタガーディアンダッタカラ、ドンナモノカトオモエバ」



「何だあいつ、クオード、あいつ体が震えてるぞ。寒いのか?」



「馬鹿!? あの目を見ろ!!」



「テメェラ、センソウヲナメンジャネェ!!」



「き! キレてるぞ! あいつキレてるぞ、クオード!!」

「まぁ、そりゃお前の見た目とタイミング的にはそうなるかな」



 慌てふためくウルカヌスに苦笑いで返すクオード。



「モウイチドフタリマトメテ、アタシノホノオデケシサッテヤル!!」



「ウルカヌス、茶番は終わりだ。もう一発でかいのが来るぞ」

「あぁ、分かってる。こっからはお遊びなしだな」



「!?」



 火炎球を放つ準備をするダリアの目の前にウルカヌスが現れた。



「おいおいドラゴンの嬢ちゃんよぉ。それが炎だと? 笑わせるなよ」



「ナ、ナンダ!?」



「俺は聖火を司る火の精。ウルカヌス。本物の炎っつーのはな」



 ウルカヌスが人差し指をピンと立てその先から炎を放出した。



「こういうことを言うんだぜ?」



「……デ、デカイ!?」



 なんだこの炎。でかすぎる。あたしの身体の何倍もある量を顔色一つ変えず放出してやがる!?



 こんなの当てられたらひとたまりも……。



「おい! ウルカヌス、そういうのはいいからさっさと戻ってこい」



「あー? いいところだったのによ! しょうがねぇな」



「ナニ!?」



 あの炎で攻撃すればよかっただろう。なぜわざわざ呼び戻す必要がある。



「お前を召喚するにはある程度の時間と練り上げ切った相当量の魔力が必要なんだ。そんなことで俺の渡した魔力を無駄にするな」



「わーってるよクオード。ならもうさっさと決めるか」



「最初からそのつもりだ。ということでわりーなダリア」



 クオードとウルカヌスがダリアを一直線に見つめた。



「……!?」



「こっからが俺達の勝負だ」
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