村人Aは勇者パーティーに入りたい! ~圧倒的モブが史上最高の案内人を目指します~

凛 捺也

文字の大きさ
259 / 262
第十三章 ブラッディフェスト 序章

255.後姿

しおりを挟む

 魔王軍のデンバード山脈への侵攻が激化し、グローリア案内所の冒険者たちは徐々に抑え込まれていった。



「ヴィオネット! カレンデュラ神殿辺りの守備が崩壊してそのまま占拠されちまった!」



「何? まずいぞ。あそこのダンジョンを取られると他の場所では裏を、グローリア案内所までは最短ルートで攻めることができる」



「サーティーンプリンスターってのが直々に攻めてきてるらしい。相当な力の持ち主みたいだ」



 ただでさえあそこ一帯の守備は他の場所よりも用心してうちでも指折りの冒険者を配置したがやられたということだろう。



「こうなったら俺が……」



「いや、ヴィオネット。お前はここで他の冒険者たちへの指示を続けるべきだ」



「だが、それでは」



「俺がカレンデュラ神殿に向かう」



「……は!? お前、そんなことしたら」



「あはは、いや、流石に戦いはしねぇよ。とりあえず現場がどんな感じかを偵察しに行くだけさ」



 こいつまたへらへら笑いやがって。



「本当に任せていいのかディノリア?」



「……あぁ、近くの冒険者には声を掛けてきた。そいつらと一緒に行くから大丈夫だ」



「……でも、万が一のことがあったら」



「俺のこと心配してくれているのか?」



「は!? ち、ちげーよ。ただ、お前だってここにいないと……こまる、人間の、一人……」



 ディノリアは俺のその言葉に口を開け顔を赤らめた。



「ヴィオネットからそんな言葉が聞けるなんて」



「うううう、うるさい。さっさと行け!! 事は急を要するぞ!」



「あぁ、分かった。必ず戻ってくる」



「……必ず、戻って来いよ」



「あぁ」



 あの時のディノリアの清々しいまでの笑顔、あの時のいつもとは違う頼りがいのある大きな後ろ姿。もっとよく観察しておくべきだった。





 そこから一夜が明け。



 グローリア案内所にいたレミアと俺に驚くべき一報が届いた。



「ヴィオネットさん、レミアちゃん!!」



「あなたはカレンデュラ神殿前の守備を任せたパーティーの……」



「何があった?」



 カレンデュラ神殿はここからの距離はそう遠くはない。もしかしたらディノリアたちのことか。



 朗報ならよいのだが……。



「朗報です! 魔王軍が……魔王軍がデンバード山脈から引いていっています」



「え!?」

「何……?」



 どういうことだ……? なぜこのタイミングで。



「何を見た?」



「俺が夜が明けて守備に戻ろうとしたき、カレンデュラ神殿を占拠していた魔物どものが神殿内からぞろぞろと出始めてきました」



「……こちらに攻めてきたと?」



「いえ、それが大量の物資を運びながら山を下っていったんです」



「なんだって……?」



 何があった……いや、確かに朗報だがそれではこの侵攻は何のために。

 ここを攻め落としてデンバード山脈一帯を占拠するのが奴らの目的ではなかったのか?



「……ディノリアは……? おい、ディノリアはどうした!? カレンデュラ神殿に数人の冒険者と共に向かったはずだ!」



 俺は柄にもなく慌てふためき、その冒険者の胸ぐらを両手で強く掴んだ。



「ちょっ、ちょっとく、苦しいです!!」



「姉さま落ち着いて!」



 取り乱した俺の姿を見たレミアは必死に俺を抑えてくれた。



「す、すまん。それでカレンデュラ神殿の中は……?」



「ゲホッゲホッ。それが、ディノリアさんはいなかったんです」



「は?」



「中にいたのは、というよりあったのはズタボロにされたその数人の冒険者の死体。のみだったのです」



「その死体の中にディノリアの死体は……?」



「いえ、発見できませんでした」



「姉さま。もしかしたら危険を察知して先に逃げたのかもしれません」



「えぇ、自分もそれが可能性として一番高いと思います。魔王軍は山を下っているといってもまだ近くを行軍しています。それが退いてからきっと帰ってくるはずです」



「……そうだな。あいつがそんな簡単にやられたりなんかするものか。俺が鍛えたんだぞ」



「姉さま」



 今思うと今すぐにでも探しに行きたいという気持ちが表情に出ていたのだろう。

 レミアは俺の顔を心配そうに眺めていた。



「姉さま。ディノリアさんはきっと帰ってきます。被害報告をまとめましょう」



「……そうだな。あいつのことだ。きっとすぐに戻って……」



 しかし、魔王軍が完全にデンバード山脈から撤退を完了させても、ディノリアは帰ってこなかった。



 いつか帰ってくるだろう。



 最初の数日はそう信じ続けていた。



 次の日も、その次の日も、その先も。



 それでもディノリアが戻ってくる気配は一向にしなかった。



 結局俺が最後に見たのはあいつの気持ち悪いほどの清々しい笑顔と後姿となってしまった。









「はぁ、はぁ、はぁ。お前を最後に見たのはあの時の後姿だったはずだが、どうして感動の再開のはずがこんな形でしかも魔王軍となったお前と対面しているんだろうな」



「さぁな。だが俺は感動しているぞ。今お前とこうして対等に戦えていることを。はぁ!!」



「ぐっ!」



 ディノールの拳がヴィオネットの脇腹をえぐる。



「どけ、ヴィオネット!! うらぁ!!」



 ウルカヌスの炎を纏ったクオードの檄がディノールの腕を切り裂く。



「くっ。クオード」



「忘れてもらっちゃ困るぜ、俺のこともな!」



「ちっ。流石にクオードとヴィオネットの二人を相手にするのは骨が折れる」



「はっ、じゃあどうする。逃げるか!? あぁ!?」



 クオードが檄を振り払い挑発した。



「ふー。さて、どうやったかな。たしかこのような感じか」

<バーサーク!! アナザーフォーム!!>



「「な!!」」



 ディノールの漆黒の龍の鱗が全身を鎧のように包み込んでいった。



「うそ、だろ。それは俺が何年もかけて作り上げた……」



「ヴィオネット。俺はもうお前より強い」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

魔物に嫌われる「レベル0」の魔物使い。命懸けで仔犬を助けたら―実は神域クラスしかテイムできない規格外でした

たつき
ファンタジー
魔物使いでありながらスライム一匹従えられないカイルは、3年間尽くしたギルドを「無能」として追放される。 同世代のエリートたちに「魔物避けの道具」として危険な遺跡に連れ出され、最後は森の主(ヌシ)を前に囮として見捨てられた。 死を覚悟したカイルが崩落した壁の先で見つけたのは、今にも息絶えそうな一匹の白い仔犬。 「自分と同じように、理不尽に見捨てられたこの子だけは助けたい」 自分の命を顧みず、カイルが全魔力を込めて「テイム」を試みた瞬間、眠っていた真の才能が目覚める。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

【完結】うちの孫知りませんか?! 召喚された孫を追いかけ異世界転移。ばぁばとじぃじと探偵さんのスローライフ。

かの
ファンタジー
 孫の雷人(14歳)からテレパシーを受け取った光江(ばぁば64歳)。誘拐されたと思っていた雷人は異世界に召喚されていた。康夫(じぃじ66歳)と柏木(探偵534歳)⁈ をお供に従え、異世界へ転移。料理自慢のばぁばのスキルは胃袋を掴む事だけ。そしてじぃじのスキルは有り余る財力だけ。そんなばぁばとじぃじが、異世界で繰り広げるほのぼのスローライフ。  ばぁばとじぃじは無事異世界で孫の雷人に会えるのか⁈

【運命鑑定】で拾った訳あり美少女たち、SSS級に覚醒させたら俺への好感度がカンスト!? ~追放軍師、最強パーティ(全員嫁候補)と甘々ライフ~

月城 友麻
ファンタジー
『お前みたいな無能、最初から要らなかった』 恋人に裏切られ、仲間に陥れられ、家族に見捨てられた。 戦闘力ゼロの鑑定士レオンは、ある日全てを失った――――。 だが、絶望の底で覚醒したのは――未来が視える神スキル【運命鑑定】 導かれるまま向かった路地裏で出会ったのは、世界に見捨てられた四人の少女たち。 「……あんたも、どうせ私を利用するんでしょ」 「誰も本当の私なんて見てくれない」 「私の力は……人を傷つけるだけ」 「ボクは、誰かの『商品』なんかじゃない」 傷だらけで、誰にも才能を認められず、絶望していた彼女たち。 しかしレオンの【運命鑑定】は見抜いていた。 ――彼女たちの潜在能力は、全員SSS級。 「君たちを、大陸最強にプロデュースする」 「「「「……はぁ!?」」」」 落ちこぼれ軍師と、訳あり美少女たちの逆転劇が始まる。 俺を捨てた奴らが土下座してきても――もう遅い。 ◆爽快ざまぁ×美少女育成×成り上がりファンタジー、ここに開幕!

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

50代無職、エルフに転生で異世界ざわつく

かわさきはっく
ファンタジー
就職氷河期を生き抜き、数々の職を転々とした末に無職となった50代の俺。 ある日、病で倒れ、気づけば異世界のエルフの賢者に転生していた!? 俺が転生したのは、高位エルフの秘術の失敗によって魂が取り込まれた賢者の肉体。 第二の人生をやり直そうと思ったのも束の間、俺の周囲は大騒ぎだ。 「導き手の復活か!?」「賢者を語る偽物か!?」 信仰派と保守派が入り乱れ、エルフの社会はざわつき始める。 賢者の力を示すため、次々と課される困難な試練。 様々な事件に巻き込まれながらも、俺は異世界で無双する! 異世界ざわつき転生譚、ここに開幕! ※話数は多いですが、一話ごとのボリュームは少なめです。 ※「小説家になろう」「カクヨム」「Caita」にも掲載しています。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

処理中です...