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第6話
「ちょっ……待て、蒼! 手を止めろって……んぁっ!?」
社殿の奥、かつて雅として過ごした絹の寝台。そこに押し倒された雅人は、自分の体から漏れた情けない声に絶望した。
今の自分は男だ。鍛えた筋肉もあれば、喉仏だってある。それなのに、蒼の長い指が首筋をなぞるだけで、背筋を電流が走るような熱が駆け抜ける。
「雅人。お前は本当に、私の我慢を試すのが上手い……」
蒼の低い声が、耳元で震える。
見下ろしてくる蒼の瞳は、狂おしいほどの情愛と、それを上回るほどの「飢え」に満ちていた。百年の間、一粒の雨も降らない荒野のように乾ききっていた神の心が、雅人の熱を得て、一気に燃え上がっている。
「……ふざけんな。俺は、静ちゃんを助けに来ただけで……お前に、抱かれに来たわけじゃ……ッ」
「その娘の名を出すな」
蒼の指が、雅人の唇を強引に塞ぐ。
一瞬、蒼の瞳に険しい影が差した。崖の上で白無垢を着ていたあの娘――。雅人が「妹」と呼んで守ったあの存在に、蒼は名状しがたい不快感を覚えていた。
(……あの魂。どこかで見た、悍ましい色をしている)
だが、蒼はその疑念を口には出さなかった。今はただ、目の前で荒い息を吐き、自分を睨みつけるこの愛おしい「魂」を、二度と離さないように繋ぎ止めることだけがすべてだった。
「男の体だろうと、関係ない。お前の魂の形を、私の指が、唇が、すべて覚えている」
「あ……やめ……」
蒼の唇が、雅人の胸元に深く吸い付いた。
男の厚い胸板に、真っ赤な痕が刻まれる。
雅人は必死に蒼の肩を押し返そうとしたが、指先に力が入らない。前世の「雅」としての本能が、蒼の愛撫を「もっと」と求めて疼き出している。
「……っ、この、エロ神……。百年も、こんなことばっか……考えてたのかよ……」
「ああ、そうだ。お前をどう犯し、どう愛でるか。それだけを考えて百年を過ごした。……文句があるなら、逃げずに受けてみろ」
蒼の大きな手が、雅人のズボンのベルトに手をかける。
カチリ、と金属音が静かな社殿に響き、雅人の顔が真っ赤に染まった。
「待て! それは……流石に、構造が違うだろ!?」
「案ずるな。神の愛に、形など関係ないことを……今すぐ、教えてやろう」
「ん、んんん――ッ!!」
雅人の叫びは、蒼の深い接吻に飲み込まれた。
泥だらけの服が剥ぎ取られ、神域の清浄な空気の中に、男二人の熱い体温が混ざり合っていく。
雅人は、薄れゆく意識の中で、崖の上に残してきた静のことを想った。
(静ちゃん……無事でいてくれよ……)
それが、この物語の「終わり」ではなく、「最悪の始まり」であることも知らずに。
社殿の奥、かつて雅として過ごした絹の寝台。そこに押し倒された雅人は、自分の体から漏れた情けない声に絶望した。
今の自分は男だ。鍛えた筋肉もあれば、喉仏だってある。それなのに、蒼の長い指が首筋をなぞるだけで、背筋を電流が走るような熱が駆け抜ける。
「雅人。お前は本当に、私の我慢を試すのが上手い……」
蒼の低い声が、耳元で震える。
見下ろしてくる蒼の瞳は、狂おしいほどの情愛と、それを上回るほどの「飢え」に満ちていた。百年の間、一粒の雨も降らない荒野のように乾ききっていた神の心が、雅人の熱を得て、一気に燃え上がっている。
「……ふざけんな。俺は、静ちゃんを助けに来ただけで……お前に、抱かれに来たわけじゃ……ッ」
「その娘の名を出すな」
蒼の指が、雅人の唇を強引に塞ぐ。
一瞬、蒼の瞳に険しい影が差した。崖の上で白無垢を着ていたあの娘――。雅人が「妹」と呼んで守ったあの存在に、蒼は名状しがたい不快感を覚えていた。
(……あの魂。どこかで見た、悍ましい色をしている)
だが、蒼はその疑念を口には出さなかった。今はただ、目の前で荒い息を吐き、自分を睨みつけるこの愛おしい「魂」を、二度と離さないように繋ぎ止めることだけがすべてだった。
「男の体だろうと、関係ない。お前の魂の形を、私の指が、唇が、すべて覚えている」
「あ……やめ……」
蒼の唇が、雅人の胸元に深く吸い付いた。
男の厚い胸板に、真っ赤な痕が刻まれる。
雅人は必死に蒼の肩を押し返そうとしたが、指先に力が入らない。前世の「雅」としての本能が、蒼の愛撫を「もっと」と求めて疼き出している。
「……っ、この、エロ神……。百年も、こんなことばっか……考えてたのかよ……」
「ああ、そうだ。お前をどう犯し、どう愛でるか。それだけを考えて百年を過ごした。……文句があるなら、逃げずに受けてみろ」
蒼の大きな手が、雅人のズボンのベルトに手をかける。
カチリ、と金属音が静かな社殿に響き、雅人の顔が真っ赤に染まった。
「待て! それは……流石に、構造が違うだろ!?」
「案ずるな。神の愛に、形など関係ないことを……今すぐ、教えてやろう」
「ん、んんん――ッ!!」
雅人の叫びは、蒼の深い接吻に飲み込まれた。
泥だらけの服が剥ぎ取られ、神域の清浄な空気の中に、男二人の熱い体温が混ざり合っていく。
雅人は、薄れゆく意識の中で、崖の上に残してきた静のことを想った。
(静ちゃん……無事でいてくれよ……)
それが、この物語の「終わり」ではなく、「最悪の始まり」であることも知らずに。
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