12 / 328
第一章
第10話 サラの訪問 其の二
しおりを挟む
「ポイズン!」
ルカくんが唱えると同時に毒々しい色の球体が空中に現れた。よく見ると球体の中で液体が流動しているようだ。
おそらくあの液体は毒があるのだろう。制御が少し不安定のようだが、大丈夫だろうか。ルカくんの顔色もだんだん悪くなっているみたいだ。
いや、心配している場合ではない。サラさんが何も言わないということは、体に負荷がかかるのを承知でやったのだろう。じっくり見なければ──中の液体の質感、対流の起き方、それを覆う膜のようなもの──全てをこの目に焼き付けなければ。
間もなくべちゃ、という音を立てて制御を失った毒と思しき液体が地面に落ちる。地面が変色しているが、大丈夫なんだろうか。
「はぁ、はぁ……」
「すまないねぇ、ほら薬だよ」
ルカくんの肩をさすりながら、サラさんが薬を飲ませている。おそらく解毒薬の類だろう。
一般的に魔法は体内の魔力を増幅させてから、変換して体外に放出し発動させる。つまり体から出す前に一瞬だけ、魔力が変換後の状態で体内に存在するタイミングがある。
一般的な魔法ならば、本当にわずかな時間なので特に問題はないのだが、毒系統の魔法は話が別だ。
毒は人体に害があるから毒なのだ。少量でも吸収されてしまうとまずい。弱い毒ならまだいいが、強いものだとごく少量でも死に至ることがある。
この毒系統の魔法は使うたびに解毒が必要となるので、最も扱いが難しい魔法の一つとされている。
「これは剣に纏わせることが出来れば使えるかと思ってねぇ。傷口から毒が入って一筋縄じゃいかない相手にいいんじゃないかい?」
「確かにそうかもしれませんが、もし使えても相討ちになる気はしますけどね」
「そこは……こう上手く使うんさね。使える人は多くないから習得できないかもしれないけど、例え使えなくても何かの参考にはなりそうだと思ってねぇ」
習得できたらいいな……せっかくルカくんも頑張ってくれたことだし。
「じゃあ早速練習するさね。光の魔法は思いきってやるのがコツだよ」
光を集めるようなイメージをしながら、手を掲げて唱える。
「ブライト!」
念のため目を空いている方の手で覆っていたが別に眩しくはない。失敗したか……
「すごいじゃないか、コルネくん! 一発で成功だよ!」
「これは驚いたねぇ……」
手をどけて見上げると弱弱しい光が手の上に漂っている。なるほど出力が弱かったみたいだ。
自分ではかなり思いきってやってみたつもりだったんだけどな……この分だと本当に思いきりやっても、サラさんみたいに目が眩むほどの光は出せそうにないな。
威力の分かりやすい攻撃魔法ではなくても分かってしまうこの圧倒的な差──一人でAランクパーティよりも上の実力を持つSランク冒険者。改めて格の違いというものを見せつけられた。
このサラさんと肩を並べる師匠って相当やばいんだろうな……うん? そういえば師匠の戦っているところ、まだ見たことないな?
ルカくんが唱えると同時に毒々しい色の球体が空中に現れた。よく見ると球体の中で液体が流動しているようだ。
おそらくあの液体は毒があるのだろう。制御が少し不安定のようだが、大丈夫だろうか。ルカくんの顔色もだんだん悪くなっているみたいだ。
いや、心配している場合ではない。サラさんが何も言わないということは、体に負荷がかかるのを承知でやったのだろう。じっくり見なければ──中の液体の質感、対流の起き方、それを覆う膜のようなもの──全てをこの目に焼き付けなければ。
間もなくべちゃ、という音を立てて制御を失った毒と思しき液体が地面に落ちる。地面が変色しているが、大丈夫なんだろうか。
「はぁ、はぁ……」
「すまないねぇ、ほら薬だよ」
ルカくんの肩をさすりながら、サラさんが薬を飲ませている。おそらく解毒薬の類だろう。
一般的に魔法は体内の魔力を増幅させてから、変換して体外に放出し発動させる。つまり体から出す前に一瞬だけ、魔力が変換後の状態で体内に存在するタイミングがある。
一般的な魔法ならば、本当にわずかな時間なので特に問題はないのだが、毒系統の魔法は話が別だ。
毒は人体に害があるから毒なのだ。少量でも吸収されてしまうとまずい。弱い毒ならまだいいが、強いものだとごく少量でも死に至ることがある。
この毒系統の魔法は使うたびに解毒が必要となるので、最も扱いが難しい魔法の一つとされている。
「これは剣に纏わせることが出来れば使えるかと思ってねぇ。傷口から毒が入って一筋縄じゃいかない相手にいいんじゃないかい?」
「確かにそうかもしれませんが、もし使えても相討ちになる気はしますけどね」
「そこは……こう上手く使うんさね。使える人は多くないから習得できないかもしれないけど、例え使えなくても何かの参考にはなりそうだと思ってねぇ」
習得できたらいいな……せっかくルカくんも頑張ってくれたことだし。
「じゃあ早速練習するさね。光の魔法は思いきってやるのがコツだよ」
光を集めるようなイメージをしながら、手を掲げて唱える。
「ブライト!」
念のため目を空いている方の手で覆っていたが別に眩しくはない。失敗したか……
「すごいじゃないか、コルネくん! 一発で成功だよ!」
「これは驚いたねぇ……」
手をどけて見上げると弱弱しい光が手の上に漂っている。なるほど出力が弱かったみたいだ。
自分ではかなり思いきってやってみたつもりだったんだけどな……この分だと本当に思いきりやっても、サラさんみたいに目が眩むほどの光は出せそうにないな。
威力の分かりやすい攻撃魔法ではなくても分かってしまうこの圧倒的な差──一人でAランクパーティよりも上の実力を持つSランク冒険者。改めて格の違いというものを見せつけられた。
このサラさんと肩を並べる師匠って相当やばいんだろうな……うん? そういえば師匠の戦っているところ、まだ見たことないな?
10
あなたにおすすめの小説
俺を凡の生産職だからと追放したS級パーティ、魔王が滅んで需要激減したけど大丈夫そ?〜誰でもダンジョン時代にクラフトスキルがバカ売れしてます~
風見 源一郎
ファンタジー
勇者が魔王を倒したことにより、強力な魔物が消滅。ダンジョン踏破の難易度が下がり、強力な武具さえあれば、誰でも魔石集めをしながら最奥のアイテムを取りに行けるようになった。かつてのS級パーティたちも護衛としての需要はあるもの、単価が高すぎて雇ってもらえず、値下げ合戦をせざるを得ない。そんな中、特殊能力や強い魔力を帯びた武具を作り出せる主人公のクラフトスキルは、誰からも求められるようになった。その後勇者がどうなったのかって? さぁ…
【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎
アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。
この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。
ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。
少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。
更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。
そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。
少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。
どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。
少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。
冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。
すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く…
果たして、その可能性とは⁉
HOTランキングは、最高は2位でした。
皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°.
でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )
独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活
髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。
しかし神は彼を見捨てていなかった。
そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。
これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。
無能扱いされ、パーティーを追放されたおっさん、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。田舎でゆったりスローライフ。
さら
ファンタジー
かつて勇者パーティーに所属していたジル。
だが「無能」と嘲られ、役立たずと追放されてしまう。
行くあてもなく田舎の村へ流れ着いた彼は、鍬を振るい畑を耕し、のんびり暮らすつもりだった。
――だが、誰も知らなかった。
ジルには“世界を覆すほどのチートスキル”が隠されていたのだ。
襲いかかる魔物を一撃で粉砕し、村を脅かす街の圧力をはねのけ、いつしか彼は「英雄」と呼ばれる存在に。
「戻ってきてくれ」と泣きつく元仲間? もう遅い。
俺はこの村で、仲間と共に、気ままにスローライフを楽しむ――そう決めたんだ。
無能扱いされたおっさんが、実は最強チートで世界を揺るがす!?
のんびり田舎暮らし×無双ファンタジー、ここに開幕!
(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います
しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。
S級スキル『剣聖』を授かった俺はスキルを奪われてから人生が一変しました
白崎なまず
ファンタジー
この世界の人間の多くは生まれてきたときにスキルを持っている。スキルの力は強大で、強力なスキルを持つ者が貧弱なスキルしか持たない者を支配する。
そんな世界に生まれた主人公アレスは大昔の英雄が所持していたとされるSランク『剣聖』を持っていたことが明らかになり一気に成り上がっていく。
王族になり、裕福な暮らしをし、将来は王女との結婚も約束され盤石な人生を歩むアレス。
しかし物事がうまくいっている時こそ人生の落とし穴には気付けないものだ。
突如現れた謎の老人に剣聖のスキルを奪われてしまったアレス。
スキルのおかげで手に入れた立場は当然スキルがなければ維持することが出来ない。
王族から下民へと落ちたアレスはこの世に絶望し、生きる気力を失いかけてしまう。
そんなアレスに手を差し伸べたのはとある教会のシスターだった。
Sランクスキルを失い、この世はスキルが全てじゃないと知ったアレス。
スキルがない自分でも前向きに生きていこうと冒険者の道へ進むことになったアレスだったのだが――
なんと、そんなアレスの元に剣聖のスキルが舞い戻ってきたのだ。
スキルを奪われたと王族から追放されたアレスが剣聖のスキルが戻ったことを隠しながら冒険者になるために学園に通う。
スキルの優劣がものを言う世界でのアレスと仲間たちの学園ファンタジー物語。
この作品は小説家になろうに投稿されている作品の重複投稿になります
チートスキル【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得&スローライフ!?
桜井正宗
ファンタジー
「アウルム・キルクルスお前は勇者ではない、追放だ!!」
その後、第二勇者・セクンドスが召喚され、彼が魔王を倒した。俺はその日に聖女フルクと出会い、レベル0ながらも【レベル投げ】を習得した。レベル0だから投げても魔力(MP)が減らないし、無限なのだ。
影響するステータスは『運』。
聖女フルクさえいれば運が向上され、俺は幸運に恵まれ、スキルの威力も倍増した。
第二勇者が魔王を倒すとエンディングと共に『EXダンジョン』が出現する。その隙を狙い、フルクと共にダンジョンの所有権をゲット、独占する。ダンジョンのレアアイテムを入手しまくり売却、やがて莫大な富を手に入れ、最強にもなる。
すると、第二勇者がEXダンジョンを返せとやって来る。しかし、先に侵入した者が所有権を持つため譲渡は不可能。第二勇者を拒絶する。
より強くなった俺は元ギルドメンバーや世界の国中から戻ってこいとせがまれるが、もう遅い!!
真の仲間と共にダンジョン攻略スローライフを送る。
【簡単な流れ】
勇者がボコボコにされます→元勇者として活動→聖女と出会います→レベル投げを習得→EXダンジョンゲット→レア装備ゲットしまくり→元パーティざまぁ
【原題】
『お前は勇者ではないとギルドを追放され、第二勇者が魔王を倒しエンディングの最中レベル0の俺は出現したEXダンジョンを独占~【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得~戻って来いと言われても、もう遅いんだが』
職業・遊び人となったら追放されたけれど、追放先で覚醒し無双しちゃいました!
よっしぃ
ファンタジー
この物語は、通常1つの職業を選定する所を、一つ目で遊び人を選定してしまい何とか別の職業を、と思い3つとも遊び人を選定してしまったデルクが、成長して無双する話。
10歳を過ぎると皆教会へ赴き、自身の職業を選定してもらうが、デルク・コーネインはここでまさかの遊び人になってしまう。最高3つの職業を選べるが、その分成長速度が遅くなるも、2つ目を選定。
ここでも前代未聞の遊び人。止められるも3度目の正直で挑むも結果は遊び人。
同年代の連中は皆良い職業を選定してもらい、どんどん成長していく。
皆に馬鹿にされ、蔑まれ、馬鹿にされ、それでも何とかレベル上げを行うデルク。
こんな中2年ほど経って、12歳になった頃、1歳年下の11歳の1人の少女セシル・ヴァウテルスと出会う。凄い職業を得たが、成長が遅すぎると見捨てられた彼女。そんな2人がダンジョンで出会い、脱出不可能といわれているダンジョン下層からの脱出を、2人で成長していく事で不可能を可能にしていく。
そんな中2人を馬鹿にし、死地に追い込んだ同年代の連中や年上の冒険者は、中層への攻略を急ぐあまり、成長速度の遅い上位職を得たデルクの幼馴染の2人をダンジョンの大穴に突き落とし排除してしまう。
しかし奇跡的にもデルクはこの2人の命を救う事ができ、セシルを含めた4人で辛うじてダンジョンを脱出。
その後自分達をこんな所に追い込んだ連中と対峙する事になるが、ダンジョン下層で成長した4人にかなう冒険者はおらず、自らの愚かな行為に自滅してしまう。
そして、成長した遊び人の職業、実は成長すればどんな職業へもジョブチェンジできる最高の職業でした!
更に未だかつて同じ職業を3つ引いた人物がいなかったために、その結果がどうなるかわかっていなかった事もあり、その結果がとんでもない事になる。
これはのちに伝説となる4人を中心とする成長物語。
ダンジョン脱出までは辛抱の連続ですが、その後はざまぁな展開が待っています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる