パーティを抜けた魔法剣士は憧れの冒険者に出会い、最強の冒険者へと至る

一ノ瀬一

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第六章 レオンの剣術道場編

第97話 レオンの剣術道場 其の八

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 初日のレオンさんと手合わせを終えて、二日目からは他のお弟子さんに混ざって稽古をする。

 あの手合わせではどのグループに混ざるかを決めるために、実力を見ていたそうだ。

 聞けば、そのグループはレベルとしてはこの道場の中では半分よりは上ということで、単純に嬉しかった。

 純粋な剣術だけの評価で、国内で一番とも言われるこの道場の上位半分に入れたのだ。

 きっととても名誉なことだし、不安だった自身の剣術に対して自信がついた。ただ同時に、もっと強い人がたくさんいるのだと再認識した。

 師匠の下で魔法剣の修行をしていて、入りたての頃に比べれば随分と扱いが上手くなったのは分かる。しかしそれがどの程度か分からず、客観的な評価が欲しかったところだったので、ちょうどよかった。

 そんなこんなで少し浮かれたまま、そのグループがいると伝えられた部屋に向かう。

 部屋の戸を開けて「よろしくお願いします」と挨拶をすると、短い返事は返ってきたのだが、明らかにどこかそっけないというか冷たい気がした。

 よそ者が入ってくるのが嫌なのか、それともライバルが一人増えるのが嫌なのか……原因は分からないまま、稽古が始まる。

 最初は素振りだった。全員が横一列に並んで、それを指導に来た人が見るという形式で、横目で見ると、全員が同じタイミングで同じ動きをしていて、どこか壮観だった。

 これならついていけそうだと途中までは思っていたのだが、だんだん腕が重くなり始めた。それもそのはず、こんな回数の素振りなどやったことがないのだ。

 素振りを始めてから体感ではかなりの時間が経っているはずだ。それなのに俺の左右にいる人たちは平然とした顔で木刀を振っている。多少、息は上がっているようだが、まだ余裕がありそうだ。

 初っ端からこの量の素振り──ここの稽古はかなりハードなのではないか。さすがにそろそろ木刀を上手く振れなくなってきそうだ。

 ちょっとだけ……ちょっとだけ魔力操作を使うか? ここでは封印しようと決めたのだが、ちょっとだけ──ちょっとだけなら。

 そんな気持ちが顔を出すが、そのたびにあともう一回、もう一回と木刀を振る。次振れなかったら使おう、と。

 そうしていると突然に終わりが告げられ、途端に横にいたたくさんの人たちが、一斉に膝から崩れ落ちる。

 隣の二人も疲れ切った様子で、片方は床に手をついて肩を上下させながら、荒く息をしている。もう片方に至っては、仰向けに寝転んでいる。

 素振りの途中は余裕そうな顔をしていたが、どうやらそう見せていただけだったようだ。

「あんた、やるなぁ」

 疲れていたのは俺だけではないことに安堵していると、寝転んでいる隣の人の口が動き、吐息の合間に言葉を発する。

「初日に、あれをやりきったのは、あんただけだよ」
「ありがとう、ございます」

 こちらも、疲れきって言葉の端々が切れた返答をする。

「お前すげぇな」
「本当だよ」
「俺なんか半分でギブだったからな」

 最初にそっけない返事をしていた人たちも、あちこちから声を掛けてくれて、なんだか認めてもらえたような気がして嬉しかった。
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